七一話


「もぐもぐ……ごっくん……お、美味しいでしゅう。ほっぺたがおちまひゅうぅ……」


 ラビがニンジンを二本分、あっという間に食べ終わったわけだが、彼女の瞳から光が消えるのも一瞬だった。


 ん、早速暴走するかと思いきや、兎耳は垂れ下がったままだし大人しいままだ。妙だな……。これが嵐の前の静けさってやつか? とりあえず今のうちにステータスを確認しておくか。

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 名前 ラビ

 年齢 15

 性別 女

 種族 キャロット族


 HP 19800/19800

 MP  1800/1800


 攻撃力 2310

 防御力 1760

 命中力 1740

 魔法力 1800


 所持装備

 ビキニアーマー


 所持能力

『バウンドレーザー』


 称号

《童貞殺し》《オークスレイヤー》


 ランク 大災害級


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「…………」


 俺はその凄まじさを前にして、ひたすら呆然とするしかなかった。


 これって、本当に俺がよく知ってるラビのステータスなのか? この調子で三本、四本とニンジンを食べさせていったら一体どうなるんだろう。


「ふうぅ……力が漲ってきたぜ……」


「っ!?」


 ラビが兎耳を逆立てたので、いよいよ暴走を開始するのかと思いきや、腕組みをしながらニヤリと悪そうな笑みを浮かべるだけだった。


 あくまでも伝聞とはいえ、これが暴走……? 想像とは全然違ってるな。


「ラ、ラビ、俺たちのことがわかるか?」


「も、もきゅ……?」


 恐る恐る反応を窺ってみると、ラビは額に青筋を浮かべつつ顔をしかめてみせた。


「あぁ? わかるに決まってんだろうが。ユートに、モコだっつーの」


「「……」」


 なんだ、ちゃんとわかるのか。俺とモコがホッとした顔を見合わせると、ラビが俺に何かくれといわんばかりに手のひらを差し出してきた。


「ど、どうしたんだい、ラビ? ニンジン欲しいのかな?」


「はあ? ちげーよ。まあくれるっていうなら貰うけどよ、これからモンスターと殺し合いをやろうってんだろ。なら武器くらいくれよ」


「あ、ああ、そういうことね」


 そういうわけで、俺は永川から没収しておいたスカルロッドを『クリエイト』で槍に変化させてみた。その名もボーンスピアー。巨大な骨が変形してできたかのような、ちょっとグロテスクな見た目の武器だが、今の勇敢なラビにはぴったりだ。


「お、格好いいじゃねえか。ユート、お前のセンスは中々だな。でもなんかちまちましてんなあ、これ。もっと長くできね?」


「よーし……それなら、これはどうだ?」


 俺は『ラージスモール』でボーンスピアーを大きくしてやる。5メートルはあるが、果たして持てるかな?


「いいねえ、これ。しっくりくるじゃん」


「えっ……」


 ラビが片手で軽々と槍を持ち上げてみせた。普通なら重くて潰されるレベルだろうに、さすが大災害級なだけある……っと、彼女を褒め称えてる場合じゃなかった。見えない敵がすぐ近くまで迫ってきてるっていうのに。


「よーし、やるぞ、ラビ、モコ!」


「おう、いっちょ屠るぜええええええぇぇっ!」


「もきゃあああっ!」


 俺は『フライ』を使い、窓の外へ勢いよく飛び出した。今回は見えない敵が相手ってことでちゃんと事前に対策は打ってあるし、もし討ち漏らしたとしてもこっちには超強化バージョンのラビがいるので大丈夫なはずだ……。

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