七十話
「おい、さっさと下のほうに逃げるぞ!」
「け、けどよ、下の階って避難してるやつ多すぎじゃね!?」
「バカか、黙ってやられるよりはマシだろ!」
「…………」
俺は夕ご飯を食べたあと、学校の様子を探るべく【隠蔽】状態で夕陽の射す廊下を歩き始めたわけだが、いよいよ見えない敵が迫ってきているせいか、学校内はいつも以上に混沌としていた。
相手が目に見えるのとそうでないっていうのは、当然だが脅威の度合いが全然違うからだろう。
見えない敵が襲ってくるとしたら、当然だが上の階層のほうってことで、生徒たちの数は見る見る減っていくのがわかった。一応、2年1組の教室を覗いてみたら誰もいなかったので、虎野たちもおそらく下の階へと逃げ込んだに違いない。
でも、これだけ生徒の姿がないっていうのは逆に都合がいい。もしまだまだいるようだったら、『テラー』+『ラージスモール』で、恐怖心を煽って強制的にでも避難させようと思ってただけに、その手間が省けた格好だからだ。
というわけで、俺は一応周りに人がいないことを確認したのち、例の仮面をつけてラビを呼ぶことに。
いちいち【ダストボックス】に入るのも面倒なんで、『サモン』っていう魔法を作って召喚してやった。
「はううっ、やっとユートさまとお散歩できましゅうぅっ」
まもなく、ビキニ姿な上に蕩けた表情のラビが出現したが、お散歩って……。まあキャロット族のラビは異世界じゃ恐れられてる種族みたいだし、戦闘も散歩みたいなもんか。
「もきゅうぅっ」
あっ……モコの声がすると思ったら、ラビの髪の中に隠れていた。もう今日は所持能力の『限界突破』を使えないので呼ぶつもりはなかったが、彼女と一緒なら大丈夫か。
「それにしても、だーれもいなんですねえ……」
「もひゅね……」
ラビとモコが不思議そうに周囲を見渡してる。ちょっと物足りなさそうなのは、《童貞殺し》の称号があるからだろうか。これは童貞を悩殺する能力だが、見られていると感じることで本人もやる気がアップするらしいし。
そういうことで、俺は『ハルシネーション』を使い、幻覚ではあるが観客を沢山用意してやった。男だけだと俺が嫌なので女も平等に。
「はうー、なんだかやる気がいっぱい出てきましたぁっ」
「もきゃーっ!」
「…………」
モコまで意欲が向上している様子……ん、毛を逆立てて窓の外を見やっている。まさか、もう敵が来たっていうのか……?
姿が見えない相手ということもあって目視できないが、俺には【慧眼】があるのでそれを使ってチェックすることに。
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名前 インヴィジブルデビル
種族 悪魔族
HP 86000/86000
MP 4200/4200
攻撃力 1560
防御力 3791
命中力 5280
魔法力 4200
所持能力
『透明化』
『復活』
『瞬間移動』
ランク 災害級
__________________________
「…………」
なんてこった。災害級かよ。【慧眼】をもってしてもシルエットくらいしか確認できないが、やつらの姿が幾つも確認できたし、未曽有の危機に立たされたのは間違いない。
『復活』というのがまた厄介な能力で、一日一回限り、HPは残り少ない状態になるが死んでもすぐにその場で復活できるんだそうだ。
「ラビ、今回は刺激的なお散歩になりそうだ」
「え、えぇっ!? う、嬉しいですぅ……」
ラビも頬を紅潮させて興奮している様子。戦闘民族としての血が騒いでるんだろう。よーし、彼女にニンジンを二本分与えてみるか。暴走したとしても俺は耐えられると思うし、ほかに生徒がいないし大丈夫だろう。多分……。
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