五四話
「「「「ぐがー……」」」」
「…………」
翌朝、テント内はファグたちのいびきで満たされていた。
あれから、みんな夜遅くまでワーワー騒いでたからなあ。中々寝そうにないので全員に『スリープ』をかけたんだ。
『セーフティバリアー』については、まだ残っていたものの薄らいでいたので張り直し、『アバター』を作って寝かせると俺自身は【ダストボックス】へ入ることにした。
ラビがそろそろ起きる頃だし、分身が反応しないとまた病んでしまうからな。
「――ん……ユートしゃまぁ……」
「うあ……」
俺は思わず声を出してしまった。とても幸せそうな顔のラビに抱き付かれた分身が複雑骨折していたからだ。自分のステータスなら耐えられるとは思うが、それでも筋肉痛になりそうだな……って、そうだ。
オークデビルが大量に来るってことは、俺一人じゃ対応できない可能性もあるし、不良グループの誰かが死亡するリスクがある。
そこで、都を一つ滅ぼせる力があるっていうラビの力を借りるのはどうだろう?
必要なニンジンは『ラージスモール』で巨大化させた上で、小分けして凍らせてるから問題ない。
もちろん、二本分食べさせると危険なので、一本だけ与えてステータスを確認するつもりだ。
「あ、ユートしゃま、おはようでしゅぅ……」
まもなく、ラビが目を擦りながら起床し、当たり前のように抱き付いてきた。
「着替えさせなさいっ」
「ははあ」
「はうー」
パジャマ姿からメイド服に着替えさせると、ラビが嬉しそうに兎耳をヒクヒクさせた。こうして見るとただの亜人だが、果たして……。
「それでは、今から朝ごはん作りますねえ」
「あぁ、頼むよ。あと、これを混ぜてほしいんだが」
「はぁい!」
『ディスペル』で解凍したニンジンを渡すと、ラビの目が一層輝いた気がした。さて、どうなることやら……。
「「――いただきまーす」」
ラビと一緒に朝食を取る。いつもの朝に見えるが、今日は自分の中じゃ緊張感があった。
「ごちそうさまぁ……ひっく……」
食べ終わって、早くもラビの目が据わってるのがわかる。よーし、早速ステータスをチェックだ。
__________________________
名前 ラビ
年齢 15
性別 女
種族 キャロット族
HP 6600/6600
MP 600/600
攻撃力 770
防御力 420
命中力 580
魔法力 600
称号
《童貞殺し》
ランク 超高級
__________________________
「…………」
おいおい、なんだよこのステータスの異常な跳ね上がり方は。ニンジン一本分食べただけでこうなるなら、二本食べたらどうなるんだと。末恐ろしいな。災害級の片鱗を垣間見たような気分だ……。
「ユートしゃま、どうひましたあ? ひっく……」
「あ、ラビ、久々に俺と一緒にお散歩するか?」
「え……いいのでひゅか!?」
「あぁ。今日は敵も攻めてくるし、いい運動になる。もうちょっと経ったら呼ぶから」
「ひゃーい。ユートしゃま。着替えましゅねっ……」
お、ラビが自発的に例のアーマーを装着したわけだが、酔ってるせいか色々とズレてしまって、とんでもない格好になっていた。このままじゃ《痴女》という称号を獲得するのは間違いないので急いで修正する。
「うふふっ。わたひ、やりまひゅよおぉ……」
「……ごくりっ……」
瞳から光が消えて、ゾクッとするような暗い笑みを浮かべてみせるラビ。こりゃ本当にやってくれそうだ……。
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