五三話
「や、やべえよ……」
「す、凄すぎい……」
「あ、ありえん……」
「な、なんなの……」
ファグたちはみんな魂が抜けたようになってる。
まあしょうがない。商人オルネトが超威力の『エクスプロージョン』を何発もこっちに放ってきて、それだけでも相当に肝を冷やしたはずだからな。
だが、そのたびに俺は『ディスペル』で打ち消してやった。【魔法作成】のレベルも上がってるので1秒ほどで魔法の無効化が発動するんだ。
そのあと、商人の魔法を参考にして作った、威力抑え気味で詠唱時間を短縮した『ニューエクスプロージョン』が炸裂し、オルネトは馬車ごと消滅した。これなら周りに被害も出にくい。
そういう意味じゃ『バニッシュ』でもよかったんだが、苦痛がないんじゃ制裁にはならないしな。
ちなみに、やつの恐怖をより増長させるために『テレパシー』も作って使用したから効果覿面だったはずだ。
やがて周囲が暗くなってきたこともあり、俺たちは茂みの中でテントを張ることになった。
一晩ここで過ごすってことで、俺はオルネトの魔法『バリアー』を参考に、一度限りならダメージを軽減できる『セーフティバリアー』を作った。
よーし、早速これがどれくらいダメージを抑えるのか『アナライズ』で調べてみるか。
そういうわけで、俺はみんなが寝静まったのを見届けたのち、『ワープ』で焦土化した場所へ戻った。
まず、結界を張ってない状態の分身に剣風を当てると20000くらいで、直接斬りつけたら50000ほどのダメージが出た。『ニューエクスプロージョン』に至ってはおよそ15000だ。
『セーフティバリアー』を分身に使ってもう一度試してみたら、剣風が大体2000ダメージってことで十分の一しか出なかった。
焦土化した場所を分析したらデストロイの自爆ダメージは18752だったが、『セーフティバリアー』で十分の一にしたら1831だし、食らったとしてもファグたちでも充分耐えられるだろう。
さて、明日は学校にオークデビルの大群が攻めて来る日だってことで、俺はテントへと舞い戻った。
よしよし、みんな寝てるな。モンスターの討伐が終わったら、いよいよ不良グループの虎野たちの誰かを処刑することになる。
重要なイベントが続くなあ……って、もぞもぞすると思ったら、リズがいつの間にか俺の横で寝ていた。胸元が開いてるし、これはまさか、誘惑してるのか……?
「…………」
なのに手を出さないのは失礼だろうか? そんなことを考えていると、彼女に手を握られてしまった。
「……みんな寝てるから大丈夫よ。ねえユート、あたしのことどう思う……?」
「……え、え、えっと、リズは美人、かな……」
「あら、ありがとう。ふふっ、震えちゃって可愛いわ。ユートって、そんなに強いのにウブなのねえ」
「そ、そりゃ、まだ高校生だし……」
「高校生?」
「あ、えっと、学生ってこと!」
「学生……アカデミーみたいなものかしら。こっちだと王族や貴族、商人の中でも一部のお金持ちくらいしか行けないところよ」
「へえ……」
「さあ、世間話なんていつでもできるんだし、もういいでしょ。焦らさないで頂戴」
「……ごくりっ……」
これは、観念するしかないかな……そう思ったとき、左手を誰かに握られるのがわかった。
「ユート、そんなの相手にしなくていいよ」
「……ミ、ミア……」
「何よ、ミア。あんたお子様のくせにまだ起きてたの?」
「お、お子様……!? 僕、もう子供じゃないもん。リズなんかにユートは渡さないんだから!」
「あら、あたしと喧嘩する気?」
「やってもいいよお!?」
「「このおぉっ……!」」
「ちょっ……」
テント内でリズとミアの喧嘩が勃発してしまった。
「ふわあぁ……なんじゃ。やらんのか。いつおっぱじめるかと密かに期待しとったのに……」
「ふわあ……まったくだぜ……」
「…………」
なんだよ、キーンとファグも起きてたのか……っていうか、そんなの楽しみにするなと突っ込みたいし、一歩間違ってたらとんでもないところを見られてたんだな……。
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