五二話
「おーいっ、雑魚ども、あと十秒間だけ猶予をやるが、待てるのはそれだけだからなっ! お前らが降伏以外に何をしようとしたって、一切無駄なことだと思え! ヒャッハー!」
「…………」
あの男、商人なだけあってよく口が回るな。
残り十秒も猶予をくれるなら、それだけあれば充分だ……っと、一応相手のステータスを【慧眼】で見ておくとしよう。
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名前 オルネト
HP 1285/1285
MP 2200/2200
攻撃力 171
防御力 266
命中力 397
魔法力 2200
所持スキル
【高等魔術師】レベル15
所持魔法
『サンダーボルト』『マジックアンプ』『バリアー』『エクスプロージョン』
称号
《F級商人》《強奪魔》《冒険者キラー》
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おいおい、オルネトって……名前もトルネ〇に似てるんだな。S級冒険者のファグたちがF級商人を恐れるって、よく考えると変な話だがこの世界では常識なんだろう。
さて、もう残された時間も少ないし、この際だからやつを懲らしめるための新しい魔法を作ってやるか。
――オルネトの視点
(フウウゥーッ! 冒険者いじめ超楽しいぃーっ! 日頃の鬱憤晴らしには最高だ! しかし、今回のやつら、意外としぶといな。そうだ、ここで私の力を見せつけてやれば、震え上がって馬車を停めるのは間違いない!)
オルネトは凄みのある笑みを浮かべたあと、遠くに見える森をビシッと指差してみせた。
「おいっ、クソ雑魚の冒険者どもっ! 十秒経ったぞ! ここで終わりだと言いたいところだが、私は優しいから、もう一度だけチャンスをやる! いいか、もし言うことを聞かなければ、こうなるぞっ!」
商人の右手が怪しく輝き、人差し指から光球が発射され、遠方にある森に命中した直後だった。
光球が円状に膨らみ、閃光、轟音、衝撃波が立て続けに起こって、森をまたたく間に消し飛ばしたのだ。
「わははっ! どうだ、怖いか!? これが『エクスプロージョン』という、お前ら貧乏人では一生所有できない優秀スキル【高等魔術師】が生み出した魔法だっ! 参ったかっ!?」
高笑いするオルネトだったが、馬車は停車することなく走り続けていたため、見る見る顔を赤らめていく。
「よかろう……お望み通り、全員跡形もなく粉々にして、畜生の餌にしてくれるっ、くたばれえぇぇっ、雑魚の冒険者どもおおおぉぉっ!」
オルネトが前方の馬車に向けて光球を放つ。
「……あ、あれえ……?」
だが、一向に何も起きる気配がなかった。
「ふ、不発したかっ、珍しいこともあるものだ。運がいいようだが、二度目はないぞ、ゴミどもおおぉぉっ!」
もう一つ光球を打ち込むオルネトだったが、馬車は相変わらず走り続けていた。
「な、な、な? どういうことだ、これはっ――」
『――おい、聞こえるか?』
「っ!? な、何者だ、お前はっ……!?」
『前の馬車にいるやつだ。魔法で話しかけてる』
「そ、そうか! 今わかったぞ、私の魔法を消したのはお前だなっ!?」
『その通りだ。わかってるなら、お前がこれからどうなるかも理解できるな?』
「あ、タ、タンマ! お前――い、いや、あなたは、察するに冒険者どもに雇われたお人では?」
『なんでわかったんだ?』
「強すぎるからわかりますって! 私の仲間になってもらえませんかな? そんな雑魚で貧乏人の冒険者どもの味方をするより、私のような財力のある商人を味方にしたほうが――」
『――いや、あんたはうるさいし、俺も冒険者だから断る。新しい魔法の実験台にしてやるから、ありがたく思ってくれ』
「え、え、ちょっ。そんなぁっ……はっ!?」
まもなく、強い光が襲ってきて、商人オルネトは馬車ごと呑み込まれた。
「……な、なんだ、この光はっ!? う、うぐっ……ぐ、ぐあああぁぁぁぁっ!」
光の中でしばらく痛々しい悲鳴が響き渡ったのち、商人を乗せた馬車は跡形もなく消えた。
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