五一話


「「「「ユートッ……!?」」」」


「あ……」


 俺が『ワープ』で『アバター』のいる地点に戻った瞬間、血相を変えたファグたちの面々が見えた。どうやらずっと呼びかけていたらしい。


「よ、よかった。ユートが目覚めた。どうなることかと思ったぜ……」


「ホント、よかったぁ。ユートの肩を揺さぶっても全然起きないんだもん……」


「ユ、ユートよ、わしが耳元で叫んでも反応がないから、てっきり死んじまったのかと思ったぞい!」


「ユート、生きてたのね。死んだように眠ってたから、心臓に悪いわ……」


「ど、どうしたんだ、みんな? そんなに慌てて……」


「それが、慌てるのも当然なくらい、後ろからが来てやがるんだ!」


「とんもでないやつ……?」


 また恐ろしいモンスターでも現れたのかと思って、俺は急いで後方を確認したわけだが、そこには追いかけてくるもう一台の馬車があった。


 なんだありゃ、盗賊かなんかか……?


 ただ、それにしてはやたらと装飾が豊かだし、自分たちの馬車と比べると一回りもサイズが大きい。


「ヒャッハー!」


「「「「「っ!?」」」」」


 威勢のいい声が聞こえてきたと思ったら、後ろの馬車の窓から髭面の男が身を乗り出してきた。やたらと恰幅のいいやつで、トルネ〇みたいな感じだ。


「おい、冒険者ギルドの雑魚ども、耳の穴かっぽじってよく聞けっ! その馬車もろとも私に木っ端微塵にされたくなければ、さっさと馬車を停めて女と持ち物を全部置いていけっ!」


「…………」


 こいつ、見た目の割りにとんでもないことを要求するもんだな。


 それにしても、冒険者ギルドの雑魚だって? 俺たちは一応S級冒険者なんだけどな……。


「あ、あいつは、商人ギルドのやつだ。ユート、気をつけろ……」


「商人ギルド? ファグ、それって冒険者ギルドより強いのか?」


「もちろんだ。ユートはこの世界の人間じゃないしわからねえと思うが、商人ギルドの連中は冒険者ギルドよりも遥かにつええやつが多い」


「うん。ユート、リーダーの言う通りだよ。商人ギルドって、ほとんど石板持ちらしいしね」


「なるほど……」


 ミアの説明もあって、なんとなく事情が読めてきた感じだ。


 石板持ちってことは、異次元通販で良い物を購入できるだけの財力があるわけで、金で強いスキルを買ったやつがそれだけ多いってことか。異世界の沙汰も金次第なんだな。


「うむ。ユートよ、この世で強いのは、モンスター、人外種族、王族、貴族、商人、冒険者、一般人の順番だといわれておるのじゃよ」


「へえ……」


 そういや、キーンの言葉で思い出した。確かに王族のプリンと貴族のホルンのステータスは滅法強そうだったしなあ。


「結局あたしたちなんて、下から数えたほうが早いくらいなのよね。だからこそ、違う世界から来たユートが希望の星なの……」


「そ、そっか……」


 リズが俺のすぐ近くに立って胸を当ててくるんだが、これってわざとなのか、それともただの偶然なのか……。


「あー、リズったら、抜け駆けする気!?」


「ん、ミア、なんのことかしら?」


「しらばくれちゃって! こうなったら僕もっ……!」


「…………」


 おいおい、今度はミアが俺に胸を押し当ててきた。リズに比べると小振りだが……って、俺は何言ってるんだか。


「じゃあ、わしもっ!」


「ちょっ……!」


 キーンに抱き付かれてしまった。これじゃ身動きが取れないんだが。


「おーい、俺のユートに手出すなよ!」


「…………」


 ファグまで……。


「おいこらっ! 雑魚ども、聞いてるのか!? これ以上私の言うことを無視するなら、本気で潰すぞ! いいのか!?」


「「「「「……」」」」」


 っと、そういや騒がしい先客がいたな。とっとと片付けてやるか。

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