四九話
「「「「「――ッ!?」」」」」
俺が仮面をつけて玄関へと乗り出したところ、全員の注目が自分に集まってくるのがわかった。それまでとは違い、畏怖の眼差しをひしひしと感じる。
ただ仮面をつけただけでこの対照的すぎる反応……称号の効果もあるんだろうが、本当に英雄にでもなったかのような気分だ。悪くない。
「…………」
英雄が普通にトコトコ歩くのもどうかと思い、俺は勿体ぶってゆっくり歩くことに。
「かっ、仮面の英雄が来たーっ!」
「これで勝つる!」
「俺たちのヒーロー!」
「どっちが勝つか賭けようぜ!」
「そんなの、仮面の英雄さまに決まってるでしょ!」
「「「「「ワーッ!」」」」」
「……うっ……?」
歓声の向こう側から、俺は噎せ返るような強烈な殺気を感じた。このまま玄関まで行けば、例の通り魔は間違いなく俺を攻撃してくるだろう。
ちなみに、【慧眼】でも相手の姿を捉えることはできなかった。俺の【隠蔽】や園田の【幻覚】みたいな、相当に強力な隠蔽能力があるってことだ。
ただ、やつが何か技のようなものを使うときは姿を現していて、スキルの付加効果なのか影で姿を隠してると思うので、その際はステータスを覗けるはず。
もちろん、その際に大ダメージを食らうだろうが、あらかじめ対策は打ってあるから問題ない。
さあ、いよいよ戦闘開始だってことで、俺はモーゼの如く生徒の集団を切り分けながら進んでいく。
「――――ッ……!」
三人組の死体の前まで行くと、あの不気味な影と光の粒が出現した。今だ。
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名前 黒崎 宗一郎
HP 538/538
MP 0/454
攻撃力 582
防御力 131
命中力 420
魔法力 454
所持スキル
【拳聖】レベル15
所持テクニック
『ハードパンチャー』『オーラコレクト』『明鏡止水』『絶命拳』
所持装備
メタルフィスト
仙人の衣
称号
《通り魔》
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「…………」
おいおい、学校内にいるのにレベル15って……。どんだけ殺してきたんだよ。通り魔と呼ばれてるだけあって、最初は無差別に殺していたが物足りなくなり、こうして強そうなやつ限定で殺すようになったのかもしれない。
所持装備の仙人の衣っていうのは、一定時間姿を隠せる効果があるらしい。何か強いアクションを起こすと元に戻る上、しばらくは姿を隠せなくなるってことで、【隠蔽】の弱体化バージョンだな。あと、《通り魔》っていう称号は攻撃力が上がるだけでなく、先制攻撃ができるようになるんだとか。
「ぐふっ……」
俺が胸を押さえながら片膝をつくと、周囲から悲鳴が聞こえてきた。
助かるのはわかっていたとはいえ、ちょっと危なかったな……。実を言うと、自分のHPはもうほとんど残ってなかったんだ。
『エリクシルヒール』で全快しつつ、生徒たちの塊に向かって歩き出したところ、みんなびっくりした様子で避ける中で一人だけ微動だにしない人物がいた。
当然だ。俺が攻撃を受けたあと、通り魔が生徒たちの中に紛れ込んだのを見て、そこに『ストップ』の魔法をかけたんだから。
おそらく、やつはいつもここで通り魔をしたあと、影で周囲が一瞬見えなくなることをいいことに野次馬に成りすましていたんだろう。
「な、なんで、俺の『絶命拳』を食らったのに助かってるんだよ。こんなの、絶対おかしいだろ……」
通り魔の黒崎が、呆然自失といった様子で俺を見ていた。いや、絶対おかしいとか通り魔にだけは言われたくないって。
「お前がやった攻撃については、どれくらいダメージが出るか事前に分析済みだからな」
「は、はあ……?」
『アナライズ』という魔法を作り、こいつの『絶命拳』について調べておいたんだ。その結果、防御無視効果で最大19987のダメージが出るとわかったので、HPが2万以上ある俺は普通に耐えられたってわけだ。
「まあ、そういうことだ。通り魔ってことで苦しめて殺してやろうかと思ったが、弱いやつを狙わないことだけは評価し、楽に殺してやる。今度はお前が俺の攻撃を耐えてみろ」
「ぐはっ……!?」
俺の絶影剣による剣風を食らわせてやると、やつは不良三人組の死体とともにバラバラになりながら吹き飛ばされ、谷底へ落ちていった。
ちなみに、『アナライズ』で今の攻撃について調べてみると、22984というトンデモな数字が表示された。剣風でこれか。こんなの耐えられるわけがないな……。
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