四八話
2年1組の教室を出た俺は、早速『ガイド』の魔法を使って矢印を辿り、通り魔の現在地まで向かうことに。
通り魔に強いショックを与えるためにも、襲われたところを返り討ちにしてやる。
「「「「「……」」」」」
そんなわけで【隠蔽】を解除しつつ廊下を歩いてると、通りすぎる生徒たちの表情がいずれも緊迫感で満ち溢れてるのがわかる。
まあ明日いよいよオークデビルの群れが襲来するわけで、そこに通り魔事件が重なったわけだしな。改めて、こういう混沌とした状況で通り魔なんてやるのがいかに蛮行か思い知らされる。
「…………」
ん、今視線を感じて振り返ったものの、誰もいなかった。気のせいだろうか?
まさか、第二の通り魔? 真似をするやつも出てくるかもしれないし、充分にありうる。
俺はいじめられっ子の如月優斗として有名だから、襲撃に失敗しても反撃される恐れがないと考えたのかもな。
ただ、今の俺なら誰かに狙われても怖くないし、襲いたければ襲えばいい。それこそ、デストロイみたいなのに比べたら可愛いもんだ。
――ん? 矢印の方向へとどんどん進んでいくと、そこは新校舎一階の玄関付近で、人だかりができていた。なんだ?
っていうか、矢印が玄関方向を指していて、その向こうは谷底なわけで、ここからすぐ先に通り魔がいることは確かなんだ。
なのにこの騒動ってことは……もしかして、通り魔は犯行する場所を固定してるっていうのか? それも、こんなわかりやすい場所で……。
まさかと思って人だかりに入って様子を見ると、いかにも気が弱そうな生徒が先頭にいて、不良っぽい三人組に押し出されているところだった。
「おい、卓也。お前、とっとと行けよ!」
「い、嫌だよ、僕、まだ死にたくないよ……!」
「いいから行けってんだよ!」
「オラァッ!」
「うっ!?」
なるほど、いじめの延長ってやつで、卓也とかいういじめられっ子が通り魔に差し出された格好らしい。おいおい、神様の生贄かなんかかよ。なんとも胸糞悪い話だ。
あれ? 卓也がうずくまって震えながら頭を抱えてるが、何か起きるような気配は一向にない。どういうことだ……?
「なんだよ。通り魔ちゃん、いねーの? 隠れた状態でこの辺にいるって聞いてたけどな」
「今は休憩とかで留守なんじゃねえ?」
「あーあ。折角、卓也の粉砕ショー見られるって期待してたってのによ」
「「「おい、卓也、帰るぞ!」」」
「うう……」
卓也がいじめっ子たちに腕を取られて立ち上がり、まさに捕まった宇宙人状態になった瞬間だった。
「「「かはっ……!?」」」
光の粒を添えた影のようなものが三人組を包み込んだかと思うと、やつらは白目を剥いて一斉に倒れ、ピクリとも動かなくなった。
なるほど……通り魔は普段隠れているが、おそらく攻撃する瞬間に姿を見せていて、それをスキルによって発生する影で隠しているんだ。
「「「「「ワーッ!」」」」」
期待していた
「…………」
それにしても、複数の獲物を一撃で始末する通り魔の強さに俺は驚くとともに、それまで自分の持っていたイメージとは大分かけ離れていると感じた。いじめられっ子の卓也のような、見るからに弱いやつは狙わないらしい。
試しに自分の『アバター』を使ってしばらく現場をウロウロさせてみても、やはりまったく反応がなかった。
周りからは、『いじめられっ子の如月だ』とか、『虎野たちの命令じゃね?』とかそういうヒソヒソとした声が上がっている。
よーし、それなら例の仮面をつけてから登場してみることにするか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます