二四話
「ふう……」
誘導攻撃もできる『ヘルファイヤ』が効くってことで、俺はレッドドラゴンの群れを全て撃沈させたわけだが、そのせいで旧校舎が一部燃えたので『レイン』+『ラージスモール』で強めの雨を降らせて消火しているところだった。
中には水系のスキルを持ってる生徒も何人かいて、消火作業を手伝ってくれた。いいやつも少しはいるもんだなあ。
一時はどうなるかと思ったが、新校舎のほうでは窓ガラスが割れて怪我人が何人か出たくらいで済んだのでよかった。
ただ、俺が戦ったのはあくまでも学校を守るためじゃなく、いずれこの手で始末したいってことで不良グループを死なせないためなんだ。あいつら、自分たちこそ英雄になるとか息巻いてたくせに、誰一人最後まで姿を見せなかったな。
浅井は【回復師】のスキルと『ヒール』があるし、永川も【魔術師】スキル持ちで『ウォーターフォール』っていう魔法があるんだから、こういうときにこそ出て来るべきだろうに。まあ改心しちゃったら手を出し辛くなるし、それはそれでいいんだが……。
連中の代わりのように、俺は一人だけ目立ちまくっていたせいか《ドラゴンスレイヤー》っていうドラゴン族に強くなる効果の称号とともに、《仮面の英雄》とかいう奇妙な称号も得てしまった。
なんでも、仮面をつけている間は正義感の強い人間から支持されやすくなるらしい。よくわからないが、これさえあれば人々を魅了しやすくなるってわけだ。
とりあえず、俺は疲れたので『エリクシルヒール』で全快すると、仮面を外してラビとともに【ダストボックス】へ戻ることに。なんだかんだ、ここが一番落ち着けるからな。
「ユートさまっ、私、怖かったですよ?」
「あぁ、あんな巨漢がすぐ側まで迫ってたからな、俺もちょっとヒヤッとしたよ」
「ちょっとですかあ?」
「いや、かなり……というか凄く」
「あうう。嬉しいですう」
「…………」
ラビのやつ、もう切り替えたのか片耳をピクピクさせてやたらと嬉しそうだ。
それにしても、何事もなくて本当によかった。あの巨体に押しつぶされていたら無傷じゃ済まなかったはず。ラビの思わぬ力に助けられた格好だ。やはりそこは兎の亜人なだけあって、人間とは底力が違うんだろう。
「ふわあ……なんだか急に眠くなってきましたぁ……ひっく……」
あれ、『キュアー』を使ったのに、ラビはまだ酔いが醒めないのか。目も真っ赤なままだ。ってことは、酔いが再発した? アルコールは魔法でも簡単には抜けないのか。
「ラビ、今日はもう休もうか?」
「はぁい。ユートさま、私と一緒に寝なさいっ」
「い、いや、そのままの格好じゃなく、着替えてから!」
「えー」
ビキニアーマーの格好で抱きしめられたもんだから、さすがに刺激が強すぎるってことで、俺は急いで兎模様のパジャマに着替えさせることにした。これも旧校舎にあったボロボロのカーテンを材料にして『クリエイト』の魔法で作ったんだ。
それにしても、やたらと抱きしめる力が強いような……まあいいや、気のせいだと思うし、今日はもう『スリープ』を使ってゆっくり休むとしよう。
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