二三話


 あれから軽く夕食を取ったあと、ラビがビキニアーマーを着せなさいと言うので着替えさせたわけだが、俺は正直不安だった。


 こんな破廉恥な格好だと、俺が隠れずに側にいても変態が近寄ってきそうだからな。男の性欲を舐めちゃいけない……って、そんなことを考えてる場合じゃなかった。


 もうとっくに日も暮れて、飛行モンスターの群れが迫ってくる頃だ。


 ってなわけで俺たちは【ダストボックス】から出ることに。


「「「「「――ッ!?」」」」」


 するとやはりラビが男子生徒たちから注目されたものの、すぐに視線が剥がれるのがわかった。


 なんだ、さすがに心配しすぎたか。なんせ前と違って俺が見える形で側についてるし、状況的に今はそれどころじゃないからな。


『せっ、生徒の皆さまっ、もうすぐモンスターがやってきますので、戦闘準備をっ――いててっ……!』


「…………」


 天の声でいよいよそのときが近いとわかったが、どこかに頭でもぶつけたのか痛がっていた。前から薄々感じてたが、おっちょこちょいな人なのかもな。


「「「「「来たっ!」」」」」


 お、暗い空の果てに、真っ赤な集団が見え始める。早速【慧眼】で確認してみよう。

__________________________


 名前 レッドドラゴン

 種族 ドラゴン族


 HP 10000/10000

 MP  2200/2200


 攻撃力 1120

 防御力  950

 命中力  937

 魔法力 2200


 所持能力

『ファイヤーブレス』


 ランク 虐殺級

__________________________


 おおっ、自分みたいな高いステータスだ。HPとMP、それと魔法力じゃ俺が大幅に勝ってるけど。


 ランクは虐殺級か。ホルンの説明でわかったが五段階目の強さで、人間が勝てる相手じゃないってことだ。


 それがざっと見ただけでも100匹以上いるとか……本来なら絶望的すぎる状況だ。


「あ、あれってドラゴンじゃね!?」


「ひええっ! マジだあー!」


「すげー強そう……」


「おい、このままじゃ食われちまうぞ!」


「「「「「に……逃げろおおおぉっ!」」」」」


「ちょっ……」


 あれよあれよという間に、恐怖が伝染したのかほとんどの連中が逃げ出してしまった。


 おいおい……折角、スキルだけでなく仲間や武器をタダで貰ったっていうのに、強そうなモンスターが現れたらこんなもんなのか。


 なるほど、救世主を探すのに学校ごと召喚したのもうなずける。


 さて、他人は他人、俺は俺。気にせずにモンスターと戦うことに集中しよう。


「ユートしゃまっ、わたひのために頑張りなしゃいっ!」


「ははあ」


「はうう」


 ラビのエッチな服装を見て少し気が散ったがこれは仕方ない。


 レッドドラゴンには火属性の『ヘルファイヤ』は効かないかもしれないってことで、まずは『エターナルスノーデス』で凍らせてやる。


「「「「「ギギャアアァッ!?」」」」」


 20匹ほどのドラゴンを氷漬けにすると、『ディバインサンダー』で追撃してやった。いいぞ、気持ちいいくらいにどんどん落ちてる。


 死んだドラゴンを囮にするかのように、やつらは立て続けにやってきたが、俺が次に唱えた『アースデーモン』の餌食になるだけだった。


 よーし、いい感じだ。数はいるがアビスドラゴンよりは全然弱いし、今のところ問題なく対応できてる。


 レッドドラゴンというよりこれじゃただの焼き鳥だ――


「――ボキュだけのうしゃぎしゃああああああんっ!」


「「っ!?」」


 かなり近くから耳障りな奇声がした直後、200キロ以上はあろう巨体の男子生徒がラビのすぐ目の前まで迫っていた。


 おいおい、おいおい……!


「ラビ、逃げろ――」


「――うさあああああっ!」


「ぐへえぇぇっ!?」


「えっ……?」


 俺は目を疑った。目を真っ赤にしたラビが両手を出したかと思うと、巨漢が軽々と吹っ飛んでいったからだ。


 あ、あれか、ラビにそんな力があるわけないし、火事場のバカ力ってやつか……?


「コオオオオォッ……」


「あ……」


 しまった、ラビのほうに気を取られていた隙に、レッドドラゴンが旧校舎のほうに大口を開いていた。『ファイヤーブレス』を使う気だ。


「こいつっ!」


「ギギャアアアッ!」


 咄嗟に放った『ヘルファイヤ』がレッドドラゴンの口内に命中したわけだが、それが効果覿面だったらしく谷底へ落ちていった。なんだ、炎も普通に効くのか……。

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