十四話
「ヒヒッ、そろそろ返してやりますよ、如月っ」
「……なっ、何も残ってない……」
ほどなくして永川にスマホを返してもらったが、武器や防具は全部獲得されており、バツ印しか見当たらなかった……っと、いけない。
今日はどんな良いものを拾えるんだろうと、俺は思わず笑顔になってしまっていたので、急いで目元に手を当てて泣き真似をしてみせる。すると、安心したのか虎野たちから笑い声が上がった。
それ以外の連中は、獲得した武器や防具を自慢し合っている様子で、当然ながら服装もいつもの制服から急激に変わっていたので、この異世界により一層馴染んでる感じがした。
ちなみに不良グループはどんなものを取ったのか【慧眼】で確認したところ、虎野はソーンナックルとレザーベスト、ナンバー2の近藤はブーメランナイフとレザージャケット、浅井はクリスタルロッドとセイントローブ、永川はスカルロッドとウィザードマント、影山はデッドリーダガーとチェインメイルだった。
特に影山のデッドリーダガーは強力で、命中時に猛毒が発生するため少しでも掠ると死ぬようだが、俺にはどうせ当たらないし関係ない。
『皆さま、良い武器や防具は得られたでしょうか? タダでの配布は今回が最後になりますが、モンスターの襲来や食料の補充など、何か用件があったら連絡をしますので、引き続き耳を傾けてくださると嬉しいです』
「…………」
つまり、これからは自分の力でなんとかしてくださいねってことだな。さて、いつもの場所に帰還するか。そういうわけで俺はトイレへと向かう。
「――ただいま」
「あ、おかえりなさい、ユートさまっ。箱が届きましたよ!」
【ダストボックス】に入ると、ラビがウキウキで駆け寄ってくるなり、三つある箱のほうを指差してみせた。
「あれは一体何が入っているのでしょう? 開けたくても開けられなかったです……」
えっ? そうなのか。おそらく、【ダストボックス】スキルの持ち主でなければここには勝手に入れないし、箱も開けられないってことなんだろう。
俺はまず、一つ目の箱から黒塗りの短剣を取り出して【慧眼】を使ってみる。
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名称 絶影剣
効果 攻撃力+50
絶対に壊れない
???
???
???
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なんだこれ。名前はえらく強そうなのに普通の短剣にしか見えない上、効果も攻撃力が少々上がり、絶対に壊れないというのと???マークが三つあるのみ。よくわからないが、一応持っておくとしよう。
残りの二つの箱は何が……って、あれ? 何も見えないので入ってないと思って手を入れたら、何かに当たった感覚がした。透明な装備品が入ってるみたいだ。
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名称 インヴィジブルジャケット
効果 防御力+200
装備しても姿が変わらない
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おお、こりゃいいな。みんなが異世界に染まっていく中、制服姿なのは逆に個性になる。それに、黒塗りの短剣も服の色と同化してて目立たないので、虎野たちから睨まれなくて済む。
もう一個の箱には赤い水着みたいなのが入っていた。な、なんじゃこりゃ。
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名称 ビキニアーマー
効果 防御力+500
女性専用
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へえ、なるほど、名前を見て納得した。どう見ても防御力なんてなさそうなのにやたらと高いし、ラビにぴったりだなと思ったら、案の定俺の後ろで目を光らせていた。
「これを着ます。ユートさま、着替えさせなさいっ」
「は、ははあ」
そういうわけで、俺は薄目でラビの服を脱がしてビキニアーマーを着せることに。
「ひゃん。くすぐったいですよぉっ」
「も、もうすぐ終わる……」
「はぁい」
ふう。ようやく終わったが、大事なところがちょっと見えてしまって焦った。後ろ姿とか見るとお尻丸出しみたいで鼻血が出そうだ。見た目は際どいけど防御力がかなりあるし、お出かけ用として使えるかもなあ。
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