第五章 太陽④

「おじいちゃんの気持ちが私はどうしても知りたかった。私の体も主治医の先生からもいつまで元気かわからないって言われたし、いつかなんて待てなかった。雄、、、山、、、そのキーワードから雄と山に登る、集団登山しかないと思ったの。だから、本当に申し訳なかったんだけどおじいちゃんのことを理由に雄が燕岳に登らないって言ったから、頭に血が上って、、、あの時は本当にごめんなさい。」

照子は頭を下げる。

「何度謝るんだよ。」

僕は苦笑いする。

「そっかぁ、あのタイミングで「雄」、「山」だもんな。燕のことだと思うよなぁ普通。」

照子は目をまるくして飛び上がった。

「違うの!?」

僕はいい気になってにやにやした。

「僕の名前ってさ。爺ちゃんがつけたんだ。」

僕は照子の言葉をさえぎって続ける。

「私は、お母さんの照美から一字らったみたい。」

僕はうなずく。

「まあ。俺も大部分、翔馬に手伝ってもらったんだけど。爺ちゃん亡くなる直前に<天手力雄神になれ>って俺に言ったんだ。調べても全然わからなかったんだけど。翔馬がさ<それって日本書紀に出てくる神様だと思う。>って」

僕は頭をかく。自分で気づければ最高にかっこよかったんだが。

「天照大御神(アマテラスオオミカミ)が、スサノオのいたずらに嫌気がさして、天岩戸(アマノイワト)に隠れたって神話知ってる?」

照子はうなずいた。

「天照大御神は太陽神だから、岩戸に隠れたら世界が真っ暗になってしまった。いろんな手をつくすんだけど、天照大御神は外に出てこない。でも最後に重い岩戸を開けて天照大御神をもとの世界に戻し、世界に太陽を復活させた神様がいるんだ。」

照子は真剣な目で僕をみている。

「それが怪力の神様、天手力雄神(たぢからおのみこと)だ。俺の名前の由来だな。」

照子は心の底から驚いた顔をみせた。

「つまり、爺ちゃんは死の間際に、照子を助けて、太陽の光でいっぱいの世界のしてやってくれって僕に言ったんだと思う。照子の照は照美さんの照。照美さんの照は天照大御神からとったんだって、ばあちゃんがじいちゃんから教えてもらったって言ってた。爺ちゃんは死の間際までお前のことを心配してたんだよ。大切な孫のお前を。」

僕は続ける。

「じいちゃんは、雄、、、山、、、って言ったんだよな?それは「雄“と”山に登って」じゃなくて、「雄“の”山に登って」って言いたかったんだよ。」

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