第四章 神様①

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如此言す間に、天児屋命、布刀玉命、其の鏡を指し出して、天照大御神に示せ奉る時、天照大御神、逾奇しと思ほして、稍戸より出でて臨み坐す時に、其の隠り立てりし天手力雄神、其の御手を取りて引き出しまつりき。即ち布刀玉命、尻久米縄を其の御後方に控き度して白言しけらく、「此れより内にな還り入りそ。」とまをしき。故、天照大御神出で坐しし時、高天の原も葦原中国も自ら照り明りき。


日本書紀 第七段本文


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岡山。

夏、病院の待合室。

テレビからオリンピックの映像が流れている。

ボクシングミドル級の金メダリストが決まる試合を男は真剣にみつめていた。

そこでおもむろに看護師が現れる。

「牛尾さん、先生がお呼びです。診察室にお入りください。」


牛尾と呼ばれた初老の男が病室に入ると神経質そうな顔をした四十代後半の医師が厳しい口調で言った。

「賛成できません。あなたは理想的な年齢よりも10歳近く歳をとっている。」

細面の男が眼鏡を直しながら言った。

「先生さっき私の肺は二十歳くらいの機能だと言ったでしょ。」

初老の男が答える。

「そ、それは、、、しかしありえない数値の肺機能だ。信じられない。」

どもる白衣の男をよそに初老の男は真っ直ぐ前を見て言った。その声は蚊の鳴くように小さな声だったが、静寂な周りの空気すべてを震わすような凛とした響きをもっていた。

「先生、ご存知ですが?長野は男性の寿命が全国で最も長寿なんです。その意味では私は日本の平均男性よりも若いと言えるかもしれない。それに私はタバコは一本もやったことはない。ずっと登山もしていました。綺麗な山の空気を沢山吸っています。ずっとこの日が来るのを待っていたんです。不肖ながらこの牛尾善光、精一杯やります。どんな結果になっても先生を恨みません。どうか私を天手力雄神にして下さい。」

そう言って男は頭を下げた。

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