第110話 全ては白く正すために

 クリスマスが終わり、数日経ったある日の朝。寝起きの目をこすりながら、呼詠こよみ人美ひとみは二階の自室の窓から白く染まった街並みを見下ろしていた。


「うわー、結構積もってるねぇ」


 大晦日も近づいて来たこの頃。ホワイトクリスマスとなった25日から、未だに雪が降り続けていた。通行に困るほど積もってはいないのだが、それでもこの付近で数日間雪が降り続けるのは異常気象と呼べるものだった。


「最初のうちはテンション上がったけど……今はもう寒いだけだよ」


 人美はカーテンを閉めて暖房の温度をいじり、再びベッドに寝転がった。今日は何故だか、病み上がりの時のように体が重い。そして胸の辺りが痛かった。魚の骨がのどに刺さった時のような鋭い痛み。これも寒さのせいなのだろうか。


「もうちょっと、ねる……」


 寝たいだけ寝る事が出来るのだから冬休み中の学生は無敵である。人美は布団を頭からかぶり、意識をまどろみの中へと手放した。





     *     *     *





 大抵の場合、不具合というのは二つのパターンがある。

 たった一つの大きな原因が不具合を引き起こすか、小さな原因がいくつも重なり合って不具合となるか。


 そしては後者だった。数多の異常が一か所に集まる事で、多大なる負荷を与えてしまった。今や修正の難しい所まで来てしまった、世界規模の不具合。


「これもきっと、そういうお話だったのでしょう」


 何もない、他には誰もいない空間で、一つの存在はそうつぶやいた。

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