第85話 属性結社(エレメンツ)
「な、何なに!?爆撃!?」
部屋の隅に避難した
「人美は会長と一緒に下がってて」
「こんな爆破はいつもなの?」
「いいや、こんな派手な攻撃は初めてだ」
得夢は第二の攻撃を警戒して油断なく銃口を煙の奥へ向けながら言う。どうでもいいが、彼は生徒会長以外が相手だと敬語は無いようだ。
「最初は窓の隙間から矢文で脅迫状を送り付けたり、大量の水風船を投げつけられたりとかがほとんどだったな」
「子供のいたずらじゃない……」
「だから俺たちは油断してた。『彼ら』の攻撃は次第に激化していき、今ではこの有様さ。こんな派手な爆破を許すなんて、護衛として不甲斐ない」
悔しそうにそう言いながら、ポケットから取り出したサーマルビジョンを双眼鏡のように覗き込んで煙の向こうを見た。
「誰もいないな……」
「爆破してすぐ逃げたのかしら」
真季那も熱源探知機能と望遠機能を駆使して窓の外を確認するが、犯人と思しき人影は見えない。
「いや、『彼ら』はただ無作為な破壊を好んでいる訳じゃない。抗議デモなんかと一緒で、暴力の裏に『彼ら』なりの主張があるんだ。だからただ爆破して退散するなんてありえないはず……」
「さすが生徒会の一員だ。こちらの意図はとっくに気づいてるようだね」
声が聞こえた。
生徒会室の扉を開けて、一人の男子生徒が堂々と入って来た。
「どうやらお客さんもいるみたいだけど……ただの一般生徒じゃなさそうだ」
エネルギー銃へと変形している真季那の右腕をちらりと見て、その少年は肩をすくめた。
「きみたちがどっち側に付くかにもよるけど、巻き込まれたくなければ離れている事をおすすめするよ?」
「この人は……?」
「3年1組の
真季那の背中に隠れた人美の問いに、苦い顔で答える生徒会長。彼女もまさかいきなりリーダーが来るとは思っていなかったのだろう。
「ご紹介どうも。僕は《
「エレメンツ……光使い……」
光使いの比呂士と名乗った彼の言葉に何か引っかかるのか、眉をひそめる人美。
「どっかで聞いた事あるフレーズなんだよねぇー、何だったかなぁー……」
「あれー、人美ちゃんじゃない!久しぶりだね!」
思考に没頭しそうになっていた人美の意識を引き戻したのは、聞いた事のある新たな声だった。
「やっほー、私の事覚えてる?」
「ん……?あ、ああー!ハナみん先輩!」
生徒会室の扉の前に立っている比呂士の後ろからひょっこり顔を出したのは、春にあった購買新メニュー争奪戦で知り合い、1学期のクラスマッチでは力を貸してくれた、
「思い出したよ!ナントカ使いのナントカってフレーズにエレメンツとかいうよく分かんない単語!ハナみん先輩が言ってたヤツじゃん!」
人美は既視感の正体に気付いて声を上げ、八菜は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「思い出してくれたみたいだね。私が《
「いや、何使いだかは忘れてました」
「そこ重要だよ!クラスマッチのとき電撃飴あげたじゃん!」
「あー、あのハナみん先輩お手製の炭酸飴ですね」
「今はそんな事どっちでもいいでしょう」
もう少しで半年前にもなるクラスマッチの出来事を懐かしむ人美。しかしそんな話をしている状況ではないと、真季那に怒られた。
「それより……何の目的?生徒会室を爆破だなんて、普通じゃないわよ」
もちろん撃つつもりは無いだろうが、それでもエネルギー銃の銃口を向けて、真季那は問う。
「目的ね……生徒会の人達はもう分かってると思うけど、僕たちの目的は文化祭の廃止だ」
「文化祭の廃止!?何でそんな!」
文化祭を望んでいる人美は悲痛の叫びを漏らすが、八菜は申し訳なさそうな笑みを浮かべるだけだった。
「ごめんね、私たちにも譲れない理由があるの」
「だからってこんな……話し合いじゃどうにかならないんですか!?」
「そんな次元はとっくに過ぎてるんだよ」
割り込むように、冷たい声で比呂士は言い放つ。
「事態は取り返しのつかない所まで来てしまったんだ。仲良く交渉なんて選択肢は無い」
一体どこから取り出したのだろうか。その手には缶ジュースより一回り大きな黒い円筒状の何かが握られていた。
「今日こそは、僕たちの力を分からせてやる!!」
「あれは……!!」
比呂士は円筒状の物体の先端についていたピンを外し、それを天井スレスレまで高く投擲した。その正体に気付き、得夢は叫ぶ。
「目を閉じて耳をふさげ!!
得夢が生徒会長を守るように前へ出ながら叫んだ、その直後。
耳をつんざく甲高い音と共に、視界が光で埋め尽くされた。
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