第27話 知らない空
最初に感じたのは、強い喉の乾きだった。
いや乾きというより、痛みと言ったほうが正しいだろうか。
少しでも喉を潤そうと口を開けて呼吸するけど、乾いた空気と砂が入ってきて余計に喉が乾き痛みは強くなる。
「はあ、はあ……」
その次に感じたのは物凄い暑さだ。
今すぐに服を脱いで裸にでもなりたい気分だ。でも体がダルくてそんな元気すらない。内蔵が体の中で回転しているような気持ち悪さだ。
頭もぐわんぐわんと揺れていて思考がまとまらない。一体僕は何をしていたんだっけ。
「こ、ここは……」
壁に手を付きながら、ゆっくりと起き上がる。
目をゆっくりと開けると、そこは狭い通路のような場所だった。いや、通路というより路地裏かな? 視線の先には大通りのような場所があって、そこに人が何人も歩いている。
それにしても……暑い。外にいてこんなに暑く感じるのは初めてだ。喉が渇いて仕方ないのも頷ける。
もう一つ気になるのは、今触っている壁がやけにざらざらとしていることだ。
この感触は石でも木でもない。この表面が崩れている感じは……砂? 砂を固めて作った建物なんて本でしか見たことがない。
「いったい……どうなっているんだ……?」
ゆっくりと歩いて大通りへと出る。
人がいるなら助けを求める事が出来る。僕は壁にもたれかかりながらなんとか大通りに出る。
そこで目にしたのは……見たことのない、砂漠の町だった。
乾いた砂が舞っていて、歩いている人たちは布で顔を覆っている。頭上からは強い日光が刺していて、肌をじりじりと焼く。
見るからに王都とは違う街並みに頭が混乱する。いや王都じゃないどころか、レディヴィア王国内でもなさそうだ。王国にはこんな砂漠地帯はない。
ここがどこかは気になるけど、今はひとまず水を飲むのが先決だ。日を浴びているだけで体力がどんどん減っていっているのを感じる。
このままじゃ数分で僕は倒れるだろう。早く助けを求めなきゃ。
僕は近くに通りがかった人に話しかける。
「あ、あの。水を……」
僕が話しかけた人は、僕をちらと見たかと思うと、すぐに視線を前に戻し通り過ぎてしまう。
「え……?」
なんと完全に無視されてしまった。
僕は諦めずに別の人に話しかけるけど、再び無視されてしまう。三度ほど無視された所で、僕はあることに気がつく。
この町は……余裕がない。
道の端に倒れている人がいても誰も気に留めないし、みな死んだような目で歩いている。王都に住んでいる人はまだ余裕があるけど、ここにいる人は他人を助けるような余裕のある人がいないんだ。
僕が来ている服が明らかにここに住んでいる人のものじゃないのも警戒されているんだろう。
気づけば少し離れた所で僕のことをにやにやと笑いながら見ている人もいる。あの目は僕を見て楽しんでいるというより、獲物を見つけたような目に見える。
僕が倒れたら身ぐるみを剥ごうとしているんだろうか。もしここで倒れたら助けてもらえるどころか全てを失ってしまいそうだ。
「まずい、まずいぞ……」
だんだん足に力が入らなくなってきた。
汗も出なくなり、気が遠くなってきた。これは体の水分が枯渇しているサインだ。残された時間は後わずかだろう。
「はあ、はあ……」
倒れそうになる体に鞭を打ち、歩く。
あてはない。だけどあのまま立っていても倒れるのを待つだけだ。
町行く人たちは僕のことを奇異の目で見つめる。変な格好をした子どもが歩いているなあと思っているんだろう。哀れむような目で見てくる人もいるけど、助けてくれる人は一人もいなかった。
誰かに助けを求めても駄目だろう。だったら助けてくれそうな
僕はぼやける視界の中、辺りを見渡す。
建物には看板がかかっているものも多い。宿屋だったり、武器屋だったり。どこに入れば一番助けてもらえる可能性が高いだろうか。
「あ、ああ……」
足が石のように重くなり、呼吸するのすら大変に感じる。
諦めちゃ駄目だ、最後の最後まで命を手放さず足掻くんだ。白く弾け始める視界の中、僕はある店を見つける。ここなら……もしかしたら。
「が、ああぅt!」
その店の前まで行った僕は、扉に手をかけ……倒れ込む。
扉は開き、僕は建物の中にうつ伏せになる。
「なんだいったい!?」
声が聞こえる。
きっとこの店の人が気づいたんだ。
「おいおい、勘弁してくれよ!」
困っている。当然だ。
このままじゃ僕は追い出されるかもしれない。そうなったらもう助かる見込みはないだろう。
僕は必死に体をよじり、
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