第21話 対峙
「ふう、着いた……!」
エミリアさんに魔の者を任せた僕は校舎まで来ていた。
この上に魔の者の親玉がいるんだ。
「確かに嫌な魔力を上から感じる。他の魔の者とは大違いだ」
闇の魔力に当てられてか、僕の左胸がじくじくと痛む。
早くなんとかしないと大変なことになりそうだ。僕は校舎の中に入ろうとするが、それをライザクスさんが止める。
『待て。中から上がっていたら遅くなる』
「え、でも他にどうすればいいんですか?」
『くく。お主には我がついているではないか』
ライザクスさんがそう言って笑うと、突然彼の体が光り始める。
そして次の瞬間、なんと今まで半透明だったライザクスさんの体がまるで実体を持ったように透けなくなった。
どうなっているんだろうと思って手を伸ばすと、なんと僕の手はライザクスさんに触れることができた。精霊は触れないはずなのに……なんで!?
『高位の精霊は一時的にその姿を実体化させることができる。もちろん長時間はできないがな』
「す、すごい。そんなことができるんだ」
驚きながらライザクスさんの鱗を触っていると、セレナも驚いたように声を発する。
「ちょっと! そんなことが出来るなんて私知らないんだけど!?」
『案ずるな光の姫よ。コツさえ掴めばお主にもこれくらいは出来る。この戦いが終わったらいくらでも教えてやろう』
「本当に!? 約束だからね!」
セレナは嬉しそうに言う。
ライザクスさんは高位の精霊ができることを色々知っている。今まで自分以外の高位の精霊に会ったことがないセレナにはいい刺激になるだろうね。
『カルスよ。我が背に乗るといい。かつての我が友と同じように、空を駆け、奴らを滅してやろうではないか』
「はい! よろしくお願いします!」
体を低くし、乗りやすくしてくれるライザクスさん。
僕はその肩に足をかけ、背中に乗る。その体はほんのりと温かい、本当に生きているみたいだ。
『それではゆくぞ。しっかりと掴まっておれ』
「はい!」
ライザクスさんは大きな翼をはためかせ、宙に浮く。
そして大きく翼を動かすと一瞬にして上昇し、校舎の屋上までたどり着いてしまう。
こんな大きな体なのにその動きは軽やかだ。まるで重力から解き放たれているみたいだ。
この飛行能力に強力な
「えっと……いた!」
屋上の更に上空、そこに魔の者の親玉はいた。
その姿はまるで漆黒の竜。大きな翼をはためかせてそれを飛んでいた。
それを見たライザクスさんは「ちっ」と不機嫌そうに舌打ちをする。
『奴め。生意気にも我の姿を真似おったな。竜の姿を
静かに怒りを燃やすライザクスさん。
竜の
「ライザクスさん。あれは何をしようとしているか分かる?」
『口元に大きな魔力を感じる。どうやら
「なんてことを……急いで止めよう!」
『承知した!』
ライザクスさんは翼を勢いよく動かし、急加速する。
すると一瞬で竜の形をした魔の者に接近してしまう。こちらに気がついた相手は、ライザクスさんを見て驚いたような顔をする。
それも無理ない。五百年前に自分たちを倒した白竜が再び姿を見せたんだから。
『な……っ!?』
『竜を騙る愚物よ。再び我が光で滅してくれよう』
ライザクスさんは口に光を溜め、放つ。
超高密度に圧縮された光の奔流は、黒竜の体に命中し、その偽物の鱗を焼き払うのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《新作告知》
新作「ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう」を投稿しました!
https://kakuyomu.jp/works/16817330657186803576
今流行っている現代ダンジョン配信ものです!
こちらも読んでいただけると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます