第17話 遺跡
発明の教室から出た僕とサリアさんは、時計塔へと戻った。
するとサリアさんの体からボフン! と煙が出て、幼女の体に戻る。
どうやら今は小さな体が通常状態で、薬を飲んでから一定時間だけ元の体に戻れるみたいだ。
「サリアさん、ありがとうございます。まさかあそこまでしてもらえるなんて……」
あの教室に行くだけで、サリアさんにはかなり負担がかかったと思う。
それなのにあそこまでやってくれるなんて。見ていて僕は胸が熱くなってしまった。
「……礼を言いたいのは私の方だよ後輩くん」
「へ?」
「君が居なければ、私は向かい合うことが出来ないままだった。目をそらし、蓋をして、心の奥底にそれを押し込めたまま生きていただろう。今日ずっと思っていたことを全部ぶちまけたことで心のモヤは晴れた。今は清々しい気分だよ」
そう言って笑うサリアさんは、本当にすっきりした顔をしていた。
「だからありがとう。君のおかげで私は救われた」
「いや、そんな……」
まさか自分がお礼を言われるとは思ってなかった。
恥ずかしくなって頭をポリポリとかいてしまう。
「サリアさん。あの教室は変わるでしょうか?」
「さあ、どうだろうね。変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。人の心の変化に公式は存在しない、どうなるかは私にも想像つかない」
サリアさんそう言う。
だけどサリアさんの話を聞いて何かを感じていそうな生徒は何人もいた。ゴードンさんもその一人だ。
「きっと変わりますよ。僕にだって響いたんですから、あそこに居た人たちの心に届かないはずがありません」
「ふふ、そうなってくれると嬉しいんだけどねえ」
◇ ◇ ◇
発明の教室での一件から一週間後。
僕はいつもと変わらない日々を過ごしていた。
休み時間に入って、いつも通りみんなと外でお弁当を食べようとしていると、担任の先生であるマクベルさんに声をかけられる。
「カルス。今少しいいか?」
「あ、はい。なんでしょうか」
休み時間に声をかけられるのは珍しい。
僕はなんだろうと不思議に思う。
「学園に空いた大穴があるだろ? 実は最近調査が終わって、安全が確認されたんだ」
「そうだったんですね。中はどうなっていたんですか?」
突然学園に空いた大きな横穴。
最初はひっきりなしに人が出入りしていたけど、最近はそれも少なくなってきたなとは思っていた。中の確認が終わっていたからだったんだ。
「中にはかなり昔に立てられた建築物、遺跡が残っていた。これを見るのはいい勉強の機会になるということで、一部の生徒に見学の許可が出たんだ」
「へえ、それは面白そうですね」
「お前なら食いつくと思った。どうだ、明後日の枠が空いてるんだが見学してみないか?」
「い、いいんですか!? ぜひ見学したいです!!」
「わかったわかった! 圧が凄い!」
あの穴のことはずっと気になっていた。
遺跡にも興味があるし、この話は願ってもないチャンスだ。
「カルスの他に後四人まで連れていける。明日の朝までにメンバーを決めて伝えてくれ」
「分かりました! 楽しみにしてます!」
誘うとしたらクリス、ジャック、ヴォルガ、それにサリアさんとセシリアさんかな。あ、ゴードンさんも興味あるかもしれない。
今から見学するのが楽しみだ。
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