第11話 街にとけこむ光
放課後。
僕は家に帰りながら、お店の看板を見て回っていた。
王都には武器屋や防具屋、道具屋に宿屋など色々なお店が並んでいる。
それぞれのお店には、そのお店がどんな物を提供しているのかを表す看板が置いてある。
武器屋だったら剣、宿屋だったらベッドの絵がそれだ。
僕はそれらを注意深く見て、そしてお目当てのそれを遂に見つけた。
「あった……」
見つけたのは一軒の武器屋。
外観も、窓から見える中の品揃えも普通の、ごくありふれた一般的な武器屋だ。
だけど看板に描かれている剣のイラスト、その柄の部分に小さくだけど月のエンブレムが描かれていた。
星見の教室の室長、イルさんの話だと、このマークがある建物の主人は『青光教』の人らしい。その人に自分も青光教だと証明すれば仲間と認めてもらえるみたいだ。
僕はその店の扉を開けようと手を伸ばし……止める。
「どうしたの? 入らないの?」
不思議そうにセレナが尋ねてくる。
僕は手を下ろして、踵を返しながら返事をする。
「うん。今日は確認できたからもういいかな。青光教と関わるのはリスクとリターンが見合わないと思うんだ」
青光教は隠された宗教ではなく、一般にも知られた平凡な宗教だ。魔法学園の入学式の時も勧誘を受けた覚えがあるくらいには。
だから一般的な信徒の人と仲良くなっても、それほど凄い話は聞けないと思う。僕が知りたいような話を聞くにはもっと上の立場の人と話さないといけないけど、そこまで深く関わるのは危ないと思う。
「まあそうね。この宗教が出来た理由がまっとうなものだったとしても、今所属している人間がまともであるとは限らない」
「うん。好奇心は竜をも殺す……危ない橋は渡らない方がいいと思う」
こうして僕は深く青光教と関わることなく帰路についたのだった。
◇ ◇ ◇
翌日。
僕はクリスたちに『
すると予想していなかった返事が返ってくる。
「そ。じゃあ私もそこに入るわ」
「……へ?」
「何よその反応。意外だった?」
「えっと……うん。正直そう言われるとは思わなかった」
「カルスも意外と鈍いわね。私だけじゃなくてそっちの二人も同じ考えみたいよ?」
見ればジャックとヴォルガも頷いてくれている。二人とも入ってくれるみたいだ。
僕は本当に友達に恵まれているね。
「でもジャックは『薬草の教室』に入るんじゃないの?」
「教室のかけ持ちは禁止されてないからそうするつもりだ。ま、基本は薬草の方にいるだろうが、何かやるなら呼んでくれよ。俺に出来ることだったら何でも手伝うぜ。それくらいなら薬草の人も許してくれんだろ」
ジャックの言う通り教室のかけ持ちは禁止されていない。
でも基本的に生徒は一つの教室しか選ばない。複数選ぶと片方が疎かになり、そっちの教室の人間関係も悪化する可能性が高いかららしい。
教室制度は互助会としての側面が強い。人間関係が悪化してしまったら利用するメリットがかなり薄くなってしまう。
「無理に手伝わなくてもいいからね。みんながちゃんと審査を突破出来ることが一番大事なんだから」
「おいおい。お前もちゃんと突破してくれよ? 何を題材にしようとしているかは知らないけど」
「うーん。僕も悩んでるんだよね」
呪いのことは個人的に調べることであって、審査に提出するつもりはない。
結局僕は定期審査に関しては何一つ進展していないのだ。
どうしよう。そう悩んでいるとヴォルガが尋ねてくる。
「気になる
「あと行ってないのは『発明の教室』くらいかな。行くか悩んでたけど行ってみようかな……」
正直魔道具のことなら時計塔の引きこもりことサリアさんに聞くのが早いんじゃないかと思ってしまう。あの人は魔法学園きっての天才、教室の誰よりも優秀なはずだ。
だけど見学にも行かずやめてしまうのはもったいないか。
よし、次は『発明の教室』に行ってみよう。素敵な出会いがあるといいな。
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