第6話 教室
「それにしても驚いたねえ。まさか君以外に精霊を見た者がいるとは」
実験をした日の夕方。
時計塔に残った僕が片付けをしていると、急にそうサリアさんが話しかけてくる。
ちなみに他のみんなはもう寮に帰っている。
「ジャックとの話、聞いてたんですか?」
「他の人より耳が良くてね。彼には黙っててくれると嬉しい」
「……分かりました」
聞こえてしまったのなら仕方がない。
サリアさんなら誰かに言いふらしたりするようなことはないだろうしね。
「全ての生き物には『魂』があると言われている。精霊とは魂が変質したもの……だと私は思っている。ゆえに死に瀕した時、魂が体から分離するその時に限り人間は精霊に近しい存在になる。そうなれば精霊と意思疎通出来てもおかしくはない」
「なるほど。ありえそうな話ですね」
やっぱりこの人はすこぶる頭がいい。断片的な情報でここまでの精度の仮説を立ててしまうなんて。
「ちなみにセレナはなにか知ってる?」
「うーん、私も知らないわ。初めて話した人間がキミだし」
「そっか。そうだよね」
セレナはあまりそこら辺の事情に詳しくない。
まあ僕たち人間だって人間のことを詳しく知っているかというとそうじゃないから、無理ない話ではあるんだけど。
他の精霊人なら何か詳しく知っているのかな?
「ちなみにセレナは他の精霊人ってどれくらい会ったことがあるの?」
「へ? 一回もないけど?」
僕は思わずずっこける。
う、うそ?
「生まれたばかりの私に色々教えてくれたのは普通の精霊だったわ。その人なら色々知っていたかもしれないけど、もうその人は『星の胎座』に還ってしまった。私も一人で同族を探しはしたけど、結局一回も出会えはしなかったの」
「そう、なんだ……」
セレナもセレナで大変な人(?)生を歩んでいるみたいだ。
まだまだ分からないことばかりだけど、焦る必要はない。僕には頼もしい仲間たちがいるんだから――――。
◇ ◇ ◇
ある朝の
いつも通り担任であり兄弟子であるマクベルさんが連絡事項を伝えてくる。
「えー、お前たちも今日で入学して一月半が経つ。そろそろ定期審査のことを真剣に考え始める頃だろう」
Aクラスの生徒は一年に三回行われる『定期審査』で結果を出さないと、次の学期からBクラスに降下されてしまう。
僕もそろそろ何を研究しようか真面目に考えないとなあと思っていたところだ。みんなも同じだと思う。
「やっべえ……」
ジャックはつぶやきながら滝のような汗を流している。
もしかして忘れてたの……?
「しかし何も提出する『成果』は個人でなければいけないわけじゃない。むしろ成果は連名で発表される方が多いくらいだ。同じ物に関心を持つものと一緒に出しても一向に構わない。しかし人数ばかり多くて成果がたいしたことない場合は、全員不合格になるがな」
連名。そんな制度があったんだ。
人が多くなればいいアイディアが浮かぶ確率も上がる。僕も誰か誘おうかな。
「それともう一つ、この学園には制度がある。その名も『教室制度』。Bクラス以上の生徒は自分の選んだ『教室』に所属し、そこで専門的なことを学びながら、同じ教室の生徒と助け合うことが出来る」
マクベルさんはそう前置くと、教室に文字を書いていく。
「『教室』に所属するかは自由だ。しかし得るものは大きいし、先輩の話も聞ける。私は所属するのをおすすめするぞ」
言いながらマクベルさんは六つの教室名を黒板に書き記す。
○錬金の教室『
○薬学の教室『
○魔導の教室『
○戦士の教室『
○発明の教室『
○自由の教室『
おお、どれも気になるものばかりだ。
どの教室に行ってみようかな……!
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