第4話 交差する世界
「この
「分かりました。善処します」
怪しげな魔道具に手を置きながら、僕は答える。
当のサリアさんは楽しそうにメモに色々書きなぐっている。部屋の中の魔力濃度とかを細かく記録しているみたいだ。
僕とクリス、そしてジャックとヴォルガも手を置いたのを確認させたサリアさんは、魔道具に近づき大きな声で号令をかける。
「それでは頼むよ後輩くんたち!
サリアさんがボタンをポチッと押すと、魔道具が光だし魔力が急速に吸われ始める。
「これは……なかなか……!」
まるで上位魔法を使った時みたいだ。
手から魔力をぐんぐん吸われる。
みんなつらいみたいで顔をしかめてる。
「ぐぐ……くそっ! もう駄目だ!」
最初にジャックが脱落した。
背中から地面に倒れて悔しがっている。
ジャックは三体の精霊が憑いている珍しい魔法使いだけど、その魔力量は平均より少し上くらい。かなり保ってくれた方だ。
「まだまだ、やれるわよ……!」
「ああ、カルスにばかりいい顔はさせないぜ」
クリスとヴォルガもかなり頑張ってくれたけど、やはり途中で脱落しその場に座り込んでしまう。それほどまでにこの魔道具が消費する魔力量は多いんだ。
正直僕もかなりきつくなってきている。
でもこの実験はどうしても成功させたい。
精霊をみんなが見ることが出来るようになれば、きっと人と精霊は友だちになれる。その世界はきっと素晴らしいはずだ。
だから……全力でやってやる。
「はああああぁっ!」
体の奥底にある魔力を絞り出し、魔道具に全て注ぎ込む。
すると魔道具は一際光を強く放ち、不思議な波動を部屋の中に放った。
「……!?」
ぐにょん、と体が強く揺れる。
すると次の瞬間、まるで体が水に包まれているような感覚を覚える。
成功……したのかな?
サリアさんの方を見てみると、彼女は親指を立てて笑みを浮かべる。
「よくやった後輩くん。今日は歴史が動いた日だ」
急いであたりを見渡すと、なんとそこには精霊たちの姿があった。
クリスには大きな火のトカゲ、
「これが私の精霊……?」
クリスは恐る恐るサラマンダーに手を伸ばす。
しかしその手は精霊を触れることは出来ず、すり抜けてしまう。
なでられることを期待してたのかサラマンダーは少し悲しそうな顔をしている。
「申し訳ないね。
「……私はこうして姿を見れただけでも嬉しいです。ありがとうございます」
クリスはサリアさんにそう言うと、優しい目をしながらサラマンダーの頭部をなでるように手を動かす。その手は触れてないけど、サラマンダーは嬉しそうに尻尾を振っている。
クリスもヴォルガもジャックも。初めて会ったとは思えないくらい自分の
「――――サリアさん」
凛とした声が部屋に響く。
見ればセレナが真剣な表情でサリアさんに話しかけていた。もちろんセレナの姿も見えるようになっているので、サリアさんはセレナと目を合わせている。
「貴女が精霊の姫君ですね? お会いできて光栄です」
そう言ってサリアさんは恭しく一礼する。
……失礼だけどこんな風に敬意を払うことも出来るんだと驚いてしまった。
「サリアさん、貴女の作ったこの魔道具は素晴らしい物です。きっとこの発明は精霊と人を繋ぐ架け橋になってくれるでしょう。全ての精霊を代表してお礼を申し上げます」
今度はセレナが頭を下げた。
普段はわがままな態度を取ることも多いセレナだけど、なんか今のセレナはちゃんと「お姫様」って感じだ。意外な一面を見れた。
「礼にはお呼びませんよ。精霊と人の交流は私の悲願なのですから」
「……ありがとうございます。貴女のような人がいるのでしたら、我々の溝が埋まる日が来るのもそう遠くないのかもしれませんね」
セレナとサリアさんはお互いに頷き合う。歳も生まれた場所も種族も違う二人だけど、目指すものは同じなんだ。
本当に精霊と人が仲良くなる日は近そうだね。とそんなことを考えていると突然僕を呼ぶ声が部屋に響いた。
「カルス、ちょっと来てくれ!」
僕を呼んだのはジャックだった。
どうしたんだろう。僕は小走りで近づく。
「どうしたのジャック?」
「なんか
見ればジャックの精霊たちがジャックに何か喋っている。
だけど精霊の姫以外の一般的な精霊は、人間の言葉を喋ることは出来ない。人間の言葉をある程度理解は出来るみたいだけどね。
そして人間は精霊の言葉を理解出来ないという『決まり』がある……らしい。だから精霊の言葉を勉強しても聞き取ることは出来ないんだ。
なので僕はセレナに頼み込むことにする。
「セレナ、お願いできる?」
「ええ。任せなさい」
頼りになる相棒の力を借りて、僕はジャックの精霊たちの話を聞く。
一体どんな話なんだろうとその話を聞いた僕は……予想だにしてなかった内容に驚愕した。
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