第2話 招待状

「――――はっ!?」


 意識が覚醒し、飛び起きる。

 ものすごい勢いで飛び起きたのでベッドから落ちそうになってしまうけど、すんでのところで踏みとどまる。


「はあ、はあ……あれは……夢?」


 息が荒く、手汗がびっちょりだ。

 原因は間違いなく寝ている時に見たあれのせいだろう。


 本当にあれは実際に見たものなのかな? それともただの夢?


「そうだ、呪いは……」


 服をめくって呪いを見てみる。

 そこにある黒い痣は昨日と変わらない大きさでそこにあった。


 よかった。大きくなっていたらどうしようかと思った。


「あれが現実かは分からないけど、時計塔の地下は探してみた方が良さそうだね」


 魔法使いの中には『予知夢』や『お告げ』を見ることが出来る人もいるらしい。

 魔法が使える僕にその力が宿っても不思議じゃない。


「うーん……でもあれが現実なのか夢なのかなんて証明できないし、考えても仕方ないか」


 そう無理やり納得して立ち上がる。

 そして扉に手をかけたその瞬間、僕はあることに気がついた。


「……っ!?」


 それは右手首にくっきりと残ったあざ

 その場所は……あの謎の存在に握られた場所だった。



◇ ◇ ◇



「ようカルス! 今日も元気……じゃ、なさそうだな……?」

「へ? なにが?」


 ジャックが引き攣った表情で僕を見ている。

 一体どうしたんだろう。


「なにがって、お前顔色悪いぞ? 保健室行った方がいいんじゃないか?」

「ああ、それクリスにも言われたよ。僕は大丈夫、ほらピンピンしてるよ。少し夜ふかしし過ぎただけだから大丈夫」

「そうか? それならいいけど、あんま無茶すんなよ?」


 どうやらそんなに心配させてしまうほど、僕は顔色が悪いらしい。

 原因は確実に夜起きたあの出来事だろう。クリスとジャックには心配かけちゃったね。


「ありがとう。あんまり辛かったら保健室に行くよ」


 そう言いながら机の中に手を入れる。

 そして目当ての教科書を取り出すと……その上に見慣れない便箋が乗っていた。


「ん?」


 縁に金色の装飾が施された、高そうな封筒。

 買った覚えのないそれに僕は首を傾げる。


「お、なんだそれ? もしかして恋文ラブレターってやつか?」

「茶化さないでよジャック。そんなわけないでしょ」


 そんな物貰ったことないし、今後も貰うことはないだろう。

 シリウス兄さんは机が溢れかえるほど貰っていたらしいけど、僕には無縁だ。


「いやいやありえない話じゃないだろ。お前は顔もいいし勉強も出来る。クリスがいなけりゃもっとモテてただろ」

「へ? なんでクリスの名前が出てくるの?」

「なんだ気付いてないのか? クリスはお前に女子が近づくと睨みつけてその子を威嚇してるじゃねえか」

「ははは、何それ。クリスがそんなことするわけないじゃん。面白いこと言うなあ」

「……まあお前がそれでいいならいいや。とにかく中身を見てみようぜ」


 ジャックに促され、僕は封筒を開け、中に入っていた手紙に目を通す。


「ええとなになに……『お茶会の招待状』……?」


 封筒の中に入っていたのは、お茶会の招待状であった。

 なんで僕にそんなものが届いたんだろう? うーん、全く心当たりがない。


「おいカルス、その招待状って誰が出したのかは書いてないのか?」

「招待してくれた人の名前は……あった。『セシリア』さんっていうみたい。クラスは2ーAだって」


 そう言った瞬間、隣にいたジャックがガッシャアン! 音を立ててと盛大にずっこける。

 信じられない、そんな目をしながら口をパクパクさせてる。いったいどうしたんだろう?


「ジャック? どうしたの?」

「お、おおおお前、その名前知らないのかよ!?」


 言われてみれば確かに聞き覚えがあるかもしれない。

 でもどこで見たんだっけ? 思い出せない。


「思い出せないなら言ってやるよ。その手紙をお前に送った『セシリア・ラ・リリーニア』様は隣国『聖王国リリニアーナ』のお姫様にして正統な『聖女』であるお方だ。そして何より……お前と同じ『光魔法』の使い手だ」

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