第18話 少年の決意

 僕の体に蠢いていた呪いが鎮まったことは、すぐに家族に伝えた。

 もちろんまだ完全に消え去ったわけじゃないことも伝えてはあるけど、それでも家族のみんなは泣いて喜んでくれた。


 みんな時間を作ってくれて屋敷に集まり、快復祝いパーティーも開かれてしまった。

 凄く恥ずかしくて、そして凄く嬉しい時間だった。父上と兄上たちは倒れるまでお酒を飲んで、母上も珍しく何杯も飲んで顔を赤く染めていた。


 長く続いたパーティーが終わってみんなが部屋に戻った後に、僕は父上の部屋を一人で訪れ、魔法学園に行きたいことを伝えた。

 もちろんエミリアという人が来たことも一緒に伝えた。


「ふむ、魔法学園……か。確かにカルスは魔法の才があるようだし悪くないのかもしないな」


 そう言った父上は僕のことをまっすぐに見る。


「……分かった。いいだろう。確かに外のことを知るいい機会だ。王都の中なら他の場所より安全だし力にもなれる」

「本当ですか! ありがとうございます父上!」

「なに、これくらい父として当然のことだ。お前には構ってやれず寂しい思いをさせた。多少の我儘くらい可愛いものだ」


 そう言って父上は僕の頭を優しくなでる。


「見ぬうちに大きくなったな。お前を独り立ちさせるのは不安だが……呪いにも負けなかったお前だ、きっと大丈夫だろう。好きなように生きなさい」

「はい……頑張ります」


 世間から隠されて、屋敷に押し込められて暮らしていたと他の人が聞けば僕のことを憐れむだろう。

 でも僕は確かに愛されていた。それだけは誰にも否定させない。



◇ ◇ ◇



「……ってことで、まだ先だけど僕はこの屋敷から出ていくことになると思う」


 自室に戻った僕は、メイドのシズクを呼び出して父上に話したことを伝えた。

 魔法学園のある王都は屋敷から遠い、なので僕は王都に移り住むことになる。確か学生寮があったはずだからそこに住むことになると思う。


 だからシズクとはお別れになる。

 彼女は僕が五歳の頃からずっと一緒に暮らしてきた家族のような存在だ。別れるのは寂しいけど、長い休みには屋敷に帰ってくることは出来るはずだ。


「そういうわけだから、僕がいなくなってもこの屋敷をよろしくね」

「……なるほど、おっしゃっていることは分かりました。しかし、それは謹んでお断りさせて頂きます」

「うんうん、ごめんね……って、え?」


 今なんか断られなかった?

 聞き間違い……だよね?


「シズク? 屋敷をお願い出来るんだよね?」

「いえ、出来ません」


 また断られた。

 うそ……シズクが僕のお願いを断るなんて初めてじゃない?


「えっと……なんで断るの? もしかしてメイドを辞めたいとか?」

「いえ、そうではありません」


 そう前置いたシズクは、僕が予想してなかったことを言い放つ。


「別れるのは嫌なので私も王都に行きます、これだけは譲れません……!」

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