第9話 精霊は魔力を食レポする
「君の前に出てきたのはそろそろ私のことが見えるようになったと思ったから。魔法を覚えたての不安定な頃じゃ、今みたいに私をしっかりと見ることが出来なかったの。だから安定してきた今、満を持して出てきたってわけ」
「なるほど、確かにボヤけて見えたら怖くて逃げちゃってたかもね」
「そういうこと。ちなみに今のカルスが見ることが出来るのは憑いている私だけだから。もっと成長すれば他の精霊も見ることが出来るようになるかもしれないけど……それは浮気になるから出来なくてもいいよね?」
「え。あ、はい」
正直他の精霊も見てみたいけど、セレナが怖いので口をつぐむ。
魔法の勉強の中で師匠が「光の精霊は束縛が強いと言われておる」って言ってたけど、あれは本当だったんだね……。
「二つ目の理由はお礼を言いたかったからよ。いつも濃くて美味しい魔力をありがとうってね」
「魔力に味とかあるんだ。量が多いのは知ってるけど、『質』もあるんだ」
「当然よ、ただ多いだけじゃ低位の精霊しか寄り付かないわ。でも君のは別、精霊で君の魔力を欲しがらない者はいないわ。濃厚で芳醇かつ口当たりは滑らか……これを食べたら他の魔力は考えられないわね」
セレナはうっとりした顔で僕の魔力を食レポする。
どうやら僕の魔力はそれほどまでに美味しいらしい。あまりピンとは来ないけど、多分いいことなんだとは思う。
「あの、こんなこと聞くのは失礼なのかもしれないけど、セレナって凄い精霊なの? さっき低位の精霊がなんとか言ってたけど」
「私が特別か、ですって? ふふ、そんなの特別に決まってるじゃない! いい? 光の精霊はそれだけで他の精霊より特別なの。私は更にその中でも特別、なんたって光の精霊の姫なんだからね。だから他の精霊を蹴散らして君に憑くことが出来たのよ!」
ドヤ顔のセレナは得意げに胸を張る。
精霊のお姫様っていうのはよく分からないけど、多分凄い存在なんだろう。それが魔法に影響あるのかは分からないけど。
「でも精霊って本当にいたんだね。セレナのことって他の人に喋って大丈夫なの?」
「んー、私は別に構わないけど、あまり話さない方がいいと思う。精霊と話せる人なんてほとんどいないから、変なことに巻き込まれちゃうかも」
「それもそっか。師匠に話すくらいにしといた方が良さそうだね」
「師匠ってあの白髪のお爺さんのこと? まああの人ならいいんじゃない、光の魔法使いだし」
当然のことながらセレナは師匠のことも知っていた。精霊がついてるのは心強いけど、ずっと見られてると思うと緊張するなあ。動物みたいな見た目ならともかく、セレナは綺麗な女の子だし。
「ね、ね。それより話を聞かせてよ。他にはどんな精霊がいるの? 僕の所にはどうやって来たの?」
食い気味そう尋ねると、セレナは嬉しそうに「ふふん」と笑う。
「精霊に興味を持つとはいい心掛けね。しょーがないから特別に教えたげる」
「やった!」
疲れているのでこの日は早くに寝るはずだったけど、思わぬ出会いによって僕はセレンと夜通し話してしまった。
僕がその過ちに気づいたのは外が明るくなってきたことに気づいてからだった。
「やば! 寝ないと!」
「そういえば人間は睡眠が必要で大変ね。それじゃあお休みなさい、カルス。これからもよろしくね」
「うん、よろしくねセレナ」
僕たちはお互いに触れることは出来ない。
でも交わした握手には確かにぬくもりを感じたのだった。
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【SSR】
光の姫君 セレナ[精霊人]
滅多にいない人型の精霊。その中でも最上位である王血の主であり、彼女に見初められたカルスは超絶運がいい。
容姿は端麗だが性格は気まぐれでわがまま。実は意外と尽くすタイプ。
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