第37話 幹部二人って卑怯ですよね?
前回のあらすじ!
体育祭 (バトルロワイヤル)、実はゲームで鍛えた射撃力と持ち前の運動神経で次々と他のチームを叩きのめしていった。だがその最中、生徒会幹部の冥華と紗枝が勝負を挑んできた。実たちのチームは幹部に勝利することが出来るのか!?
「日菜、お前は冥華を頼む。私は紗枝の相手をする」
冥華の怪力は日菜に匹敵する。私程度では相手にならない。
「優香は姫子と睡歌を守ってくれ」
姫子は戦う技術がないし、睡歌はずっと寝ている。少しは戦ってくれよ。
「先手必勝!」
私は冥華の方に向けていた銃口を紗枝の方へ向け、一発発砲する。
「その程度の玩具であたしに勝てるとでも?」
「なっ・・・・・・!」
紗枝は銃弾を掴み取り、そのまま握りつぶした。やはり警備委員長の名は伊達じゃない。・・・・・・委員長ってこんなに強いの? あ、負けるかも私。
「日菜、頼むぞ」
「分かった!」
日菜は冥華に向かって走り出す。冥華は笑みを浮かべる。
「日菜ちゃん! 友達同士だけど、今日はお互い手加減は無しだよ!」
冥華が拳を振りかざし、日菜に当てようとする。見切った日菜は上へ飛び上がり、冥華の外した拳は廊下の床を砕いた。
「うわ・・・・・・。えげつない・・・・・・」
こんなのまともに喰らったら無事じゃすまないでしょ。いや、当たったら絶対死ぬなこれ。冥華を日菜に任せて正解だったわ。
「どこを見ている」
「おっと」
よそ見していた私に紗枝が蹴りを入れる。とっさにナイフで衝撃を殺すが、ナイフに僅かなひびが入った。
「いい判断だ。では先にあちらの者を潰すとするか」
「まずい! 優香来るぞ!」
「うおっ!」
紗枝の蹴りで優香は、廊下の突き当たりまで飛ばされてしまった。衝突した壁は砕け、優香は瓦礫に埋もれる。
「強いな・・・・・・」
すぐさまブレスレットで優香の残存体力を確認する。優香の残存ゲージは赤く点滅しかなり危険な状態だ。
(チームのリーダーは、自身のブレスレットで同じチームのメンバーの残存体力を確認できる)
「優香!」
「ちょっとちょっと~」
冥華から後ろの髪を引っ張られ、腹を殴られる。
「ガッ・・・・・・!」
「二人まとめて相手してあげるよ!」
すぐさま銃を取り出すが、私が発砲するより速く冥華の蹴りで銃を破壊された。
「よいしょ!」
冥華の二回目の蹴りが迫る。
「実ちゃん!」
日菜は冥華の腹にパンチを入れ、その衝撃で蹴りの体勢が崩れる。
「助かったぞ。日菜」
「気をつけて、冥華ちゃんのパンチが一回でも当たったら命はないよ!」
「それ怖すぎだろ」
さらっと怖いこと言うなよ。何、一発でもヒットしたら負けって。縛りプレイか?
「まずは優香を助けないとな。日菜、一人でいけるか」
「大丈夫! 実ちゃんも頑張ってね!」
「了解」
私はマシンガンを構える。
「だから~、二人の相手は私――」
「うるさい」
日菜が冥華の顔を掴み上へ持ち上げた。・・・・・・え? 日菜さん?
「私は今本気で腹が立ってるんだけど」
「ひ、日菜さん?」
え? どうした? 急に声低くなったよ? いつもの日菜じゃないぞ?
「私、他人同士の殴り合いはどうでもいいの。でもね、実ちゃんに暴力を振るう屑はね・・・・・・」
日菜は掴んだ冥華の頭を地面へと叩きつけた。再び廊下の床が砕ける。
「うぁっ・・・・・!」
「・・・・・・私は死ねばいいと思ってるよ」
「・・・・・・怖いぞ」
日菜のまた変わった一面が見えちゃったよ。とりあえず『影日菜』とでも名づけておくか。
「・・・・・・実ちゃん!」
「は、はい!」
またいつもの元気でニコニコしている日菜に戻った・・・・・・・が、さっきの見せられた後にこんなの見せられたら怖すぎるんだが。お前多重人格だったのか?
「どうしたの? そんなに怯えて。何か怖いものでも見た?」
「イエッ! 何も!」
自分で気付いてないのか、さっきの行動。
「冥華ちゃんの相手は私一人で頑張るから、実ちゃんは優香ちゃんを助けてあげて!」
「は、はい」
私が優香の方へ向かおうとすると、冥華が再び立ち上がった。
「あぁぁぁぁぁ!」
「冥華まで狂ったぞ・・・・・・!」
冥華は血走った目で日菜に襲い掛かるが、先ほどの影日菜が再降臨した。
「騒ぐな」
「へぶっ!」
日菜は冥華の顔を殴り、衝撃で冥華は宙に浮かぶ。
「無駄無駄無駄無駄×10!」
(長いので端折ります)
「そのセリフどっかで聞いたことある」
日菜の顔なんか濃くなってるし。というより厳つい顔になってる。
「無駄ァー!」
日菜の最後のアッパーを喰らった冥華は床に叩きつけられる。
「ううぅ・・・・・・」
冥華は力を振り絞り、立ち上がろうとする。
「冥華。貴様の敗北だ」
日菜が冥華の背中を踏みつける。冥華の体力ゲージは0になり、赤く点滅している。
「さて! 実ちゃんは早く優香ちゃんを!」
再び陽日菜に戻った。『陽日菜』とはいつもの元気な日菜のことだぞ。
「日菜は?」
「私はもう無理だよ・・・・・・」
日菜の残存体力を確認する。体力ゲージの部分が赤色に光っている。
「お前・・・・・・」
「まだギリギリゲームオーバーじゃないけど、この状態で戦ったらすぐに負けちゃうよ」
日菜は廊下の壁にもたれかかる。
「・・・・・・分かった。ゆっくり休め」
「うん。頑張ってね」
「分かってるよ!」
私は即座に紗枝にマシンガンを連射する。
「よし、当たってる」
だが、少しも怯むことなく淡々と優香の元へ歩んでいく。
「やっぱり直接攻撃か」
紗枝の元へ走って向かう。その間もマシンガンを連射し続けるが、一向に怯む様子がない。
・・・・・・あれ? よく考えたら私、走りながらマシンガン連射ってすごくない? 私天才かも。
「一人で何をぶつぶつ言っている」
「あ、口に出ちゃってた? スマンスマン」
恥ずかしいなぁ・・・・・・。自分で天才って言うの人に聞かれるのは恥ずかしすぎる!
「ってそんなこと言ってる場合じゃないな」
再び走り出し、マシンガンを連射する。
そして廊下が長すぎる! 一体何分走ればいいんだよ!
その直後、マシンガンの連射が止まる。
「・・・・・・玉切れか」
ベルトにセットされてある換えの玉をセットし、再び連射する。
「・・・・・・いい加減その攻撃はうんざりだ」
紗枝は私の元へ向かってきた。先に私を排除するつもりなのだろう。私の残存体力は半分を切っているため、今攻撃が当たれば確実にゲームオーバーだ。
私は必死にマシンガンを連射するが、紗枝の走りは止まらない。
「グッ・・・・・・」
紗枝に首を掴まれた私は床に叩きつけられた。ブレスレットからは警告音が鳴る。
「勝負あったな」
紗枝が拳を振りかざす。
「・・・・・・うるさいな・・・・・・」
「誰だ――」
紗枝が後ろを振り返った瞬間、紗枝が廊下の端まで吹き飛ばされた。
「え!?」
流石に急すぎて私の頭の理解が追いつかない。
すると、目の前にエメラルドグリーンの髪色をしたウルフヘアーの少女が立った。
「・・・・・・よく踏ん張ったね。後は任せて」
「睡歌!?」
今まで寝ていた睡歌が目を覚ました。多分これまでの戦いの音で目覚めたのだろう。
「私の睡眠を邪魔した罪は重いよ?」
睡歌はゆっくりと紗枝の元へ歩み寄る。ちなみに目を覚ました睡歌は無敵です。
「ハッ!」
紗枝の拳を軽々と受け止め、腹・胸・頬を次々を殴り続ける。
「・・・・・・本来銃撃戦じゃなかったっけ?」
あくまでパンチやキックは最終手段だったよな? 何でこの人たちはずっと武器使わずに拳と蹴りで戦ってるの?
「まだ倒れないかぁ」
睡歌は床に落ちていたピストルを拾い射撃する。 (※あくまで演出です。流血もしません)
「やっと倒れた」
紗枝は地面に倒れこむ。
「それじゃおやすみ~」
「あ、寝た」
いつも通り睡歌は眠りにつく。寝るスピードの○太君かよ。
「おのれ・・・・・・」
「え?」
紗枝が再び立ち上がる。紗枝の体力ゲージをよく見ると、ほんの僅かに体力が残っていた。
「仕留めきれなかったか・・・・・・」
私は銃を拾い上げ射撃しようとする。
次の瞬間。
「うっ!」
再び窓ガラスが砕け散り、弾丸が紗枝の頭に当たる。
「紗枝!」
私は急いで紗枝の元へ駆け寄る。紗枝の体力ゲージは0になっている。
「そういえば日菜は・・・・・・。日菜!」
日菜も射撃されたらしく、地面に倒れこんでいた。
「おい、大丈夫か!」
「ごめん・・・・・・。私の出番はここまでだね。後は任せたよ・・・・・・」
「日菜!」
日菜は最後の言葉を言い残し、一言も発さなくなってしまった。
(ゾンビ行為 (サバゲーなどでやられても戦いを続ける行為)防止のため、体力ゲージが0になりゲームオーバーになると、自動的にブレスレットから睡眠薬が注入される)
「よし、行くぞ」
私は日菜を床に寝かせ、その場を後にした。
屋上
「紗枝さん、日菜さんを狙撃。両者ゲームオーバーです」
水星が次の弾丸を装填しながら話す。
「・・・・・・何故紗枝を狙撃した」
「これ以上戦っても勝ち目がないからです。ならばさっさとゲームオーバーにしてしまったほうが早いと」
水星は冷ややかな目で話し続ける。
屋上のドアが開き、生徒会役員が入ってくる。
「報告です。冥華様、紗枝様が戦線離脱です」
「ご苦労」
生徒会長は生徒会役員から報告書を受け取る。
「・・・・・・咲。お前の出番だ」
「は、はい!」
咲はゲーム画面から目を離し立ち上がった。
「咲の援護は水星、頼むぞ」
「了解です」
水星は再び射撃を開始した。
私の悠々自適な引きこもり生活は、可愛い女の子によって終わりを迎えてしまいました。 神楽咲久來 @HINASUN
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