第36話 戦争体育祭
『さぁ始まってまいりました! 天地学園体育祭! 今年はどのチームが優勝を手にするのでしょうか!』
司会らしき生徒がグラウンドのステージに上がり話す。
「随分ハイテンションな司会だな」
「ウチの学園の体育祭は他の学校とは訳が違うからね」
グラウンドに整列した生徒たちは大声で叫びだした。どこのスポ根漫画だ。
『司会はこの私、『詩会(しかい) 遣瑠像(やるぞう)』がお送りいたします!』
「競技は普通にリレーとかか?」
「いや。全く違うよ」
『それでは、体育祭のルールを説明します!』
毎年ルール説明するのか。
『天地学園では、他所の学校のようにマラソンなどの競技は行いません。種目はただ一つ、バトルロワイヤルです!』
「は?」
『生徒の方々には、初期装備としてナイフ一本・ピストル一丁をお渡しします。フィールド内には上級の武器が入っているアタッシュケースがいたるところに置いてありますので探してみよう!』
「野蛮すぎるだろこの競技」
何で学園の体育祭でバトルロワイヤルしなきゃならないんだよ。
『バトルフィールドは学園内の敷地内全てです。相手を見つけ次第どんどん攻撃しよう! 体力が0になったプレイヤーはゲームオーバーだ! 自分の残存体力は支給されたブレスレットから確認できます。残存体力が残り少ないと警告音が鳴ります。一応パンチやキックの攻撃でもダメージは与えられますが、攻撃力はそのプレイヤーの筋力によって変わりますのでご注意ください』
それって相手に気付かれるよな?
『このブレスレットには、残存体力の表示以外にも、残りゲーム時間・相手プレイヤーへのマーカー設置・今の自分の現在地を表示することが出来ます。ちなみに攻撃は当たっても痛くないのでご安心ください』
「ルール分かった?」
「分かったけど、この学園かなり広いから結構な長期戦になるぞ?」
『最後に、自分のチームを作ってください。1チームにつき3~5人までです。ルール説明は以上! 後は自分で戦いながら学んでくれ!』
無茶言うな。
「じゃあチーム組もうか。私と実ちゃんは一緒のチームだよ!」
日菜がいれば勝てるだろう。
「だろうな。後は優香と睡歌、姫子を入れれば大丈夫か」
「そうだね。早速呼びに行こう!」
「よろしくお願いします」
姫子が私に深々と礼をする。
「よし。早速配置に付くか。敷地内ならどこでも良いんだよな?」
「うん。自分たちのスタート地点は自分たちで決めるから。なるべく人が来ないところがお勧めだよ」
日菜が手の関節を鳴らしながら言う。日菜みたいな人がやるとギャップがすごい。
「自分たちの教室ですか。考えましたね」
姫子が話す。
「あまり人が来ないところを選んだ。教室ならあまり来ないと思ってな」
『さぁそろそろゲームスタートです!』
校内放送が流れる。あの大声で叫ばれたもんだからキンキンする。
『ではゲーム・・・・・・スタート!』
その瞬間、一斉に校内で射撃音が響く。
「うるさいな・・・・・・。もう少しおとなしく出来ないのか?」
無駄に玉を使うのはアホのすることだ。
「お前ら、少しここで待ってろ」
「え? どこ行くの?」
「ちょっと静かにさせてくる」
私は教室を出た。
「いたいた」
男子たちがまともに狙いもせずに銃を撃っていた。人数からしてここにいるのは3チームだろう。多少強い武器を獲得したらしいが、使いこなせなければ宝の持ち腐れだ。
「お前たち、どうやら戦い方ってもんを知らないようだな」
少し挑発をかけてみる。
「何だよ! 今戦ってる最中なんだよ!」
男子生徒が銃を発砲してきた。
「甘いね」
私は発射された玉に向かって発砲する。男子生徒が発砲した玉と、私が発砲した玉がぶつかり合い相殺した。
「なっ・・・・・・!」
「来なよ。私が手本を見せてあげる」
私は手で「カモンカモン」と挑発する。挑発に乗った頭の悪い男子生徒はすぐさま銃を発砲してくる。
「だめだめ」
私は発砲された銃弾をナイフで斬る。
「玉を・・・・・・斬った・・・・・・!?」
私に恐怖を感じた男子生徒は後ろに倒れこむ。
「ピストルって言うのはね・・・・・・」
男子生徒の額に銃口を当てる。
「こうやって使うんだよ」
1発、2発、3発。男子生徒に発砲する。あ、血は出てないから安心してね。死にもしないよ。
「おー、ゲージが0だ」
男子生徒に付けられていたブレスレットを確認する。確かに体力ゲージの部分が赤く点滅している。
「貴様ァー!」
男子生徒のチームの生徒、他のチームの生徒が銃を発砲してくる。馬鹿と一緒にいる奴も馬鹿だ。
前から来た3発の銃弾を後方回転で避け、すぐさま目の前に来たナイフで攻撃しようとした男子生徒の額に射撃する。男子生徒は倒れこむ。
「おっ、いい武器持ってんじゃん」
倒した相手の武器は自分のものになる。相手が持っていたのはマシンガンだった。いい武器持ってんだったら使えばよかったのに。
「に、逃げろ! 強すぎる!」
廊下を走って逃げていく男子生徒たち。
「こらこら、勝負ってのは敗者が死ぬまでだよー」
走って逃げる男子生徒たちの背中にマシンガンを連射する。やっぱこの武器強いな。
「とりあえず3チーム撃破か」
全然手ごたえが無いな。もっと強いプレイヤーとかいないのかな?
「バカめ!」
後ろから射撃音が聞こえる。すぐさま地面に倒れこみ回避する。
「・・・・・・まだいたの?」
私は相手プレイヤーに銃を構える。その瞬間、何かいやな予感がした。
「・・・・・・! 伏せろ!」
私は地面に伏せる。
「何言ってんだ・・・・・・。ギャァ!」
窓ガラスが砕け散り、何発もの銃弾が襲ってきた。忠告を聞かなかった男子生徒たちは全滅した。
「誰だ・・・・・・?」
屋上
「1チーム壊滅。ターゲットの実さんは無傷でした。申し訳ございません」
風紀委員長がスコープから目を離し、スナイパーライフルをタオルで拭く。
「ご苦労だった。流石生徒会随一のスナイパーだ」
生徒会長が風紀委員長の頭をなでる。
「ありがとうございます」
「ねぇ、次私行きたい!」
冥華が手の関節を鳴らす。
「いや、ここはあたしに行かせてくださいよ!」
紗枝が長ランを風になびかせながら生徒会長に話す。
「いいかお前たち。我々生徒会は全生徒たちの頂点に立たなくてはならない。生徒会に敗北は許されない」
生徒会長が腕を組み話す。
「了解です」
風紀委員長が再び射撃を開始する。窓からは次々と倒れていく生徒たちの姿が見える。
「冥華、紗枝。次はお前たちの出番だ」
「ありがとうございます」
「よーっし! ひと暴れしてこよっと!」
冥華は屋上から飛び降りた。
「あの馬鹿者・・・・・・」
紗枝はあきれたような表情を浮かべていた。
紗枝さんはちゃんと階段を使って下まで行きました。
「どうだった?」
日菜が私に不安そうな顔をして聞いてくる。
「どうって言われても、皆弱すぎて面白く無かったよ。3チーム壊滅させてきた」
「3チーム!?」
姫子が驚愕した顔をする。
「1チームで1チームを倒すのも大変なのに、3チーム壊滅・・・・・・。それもたった一人で・・・・・・」
「実ちゃんは運動神経抜群だし、現役廃人ゲーマーだからね!」
日菜が笑顔で話す。自分でも分かってるけど日菜に廃人ゲーマーって言われると悲しいな・・・・・・。
「実、そろそろここを出ないか? あまり長時間同じ場所にいるのは良くない」
優香が立ち上がる。
「そうだな。そろそろ場所を変えるか」
「何だよこれ・・・・・・」
優香が死体でも見たような表情をする。実際死体には変わりないけどさ。いや、死んでないか。
「さっきのスナイパーか」
その証拠に周囲には窓ガラスが飛散している。
「・・・・・・多分水星様だな」
優香が顎に手をそえて離す。
「知ってるのか?」
「あぁ。水星様は風紀委員長であり、天地学園最強のスナイパーだからな。あの人に射抜けないものはない」
「私さっきかわしたんだけど」
「体力ゲージ見てみろ」
「・・・・・・減ってる・・・・・・!」
ほんの僅かではあるものの、体力ゲージが減っていた。
「水星様に狙われたら最期。絶対に生きて帰ることは出来ない。しかも水星様の精密射撃は常人の域を超えたどころか、化け物の域を超えている」
「そんなにすごいのか?」
「銃弾一発通る穴や隙間があれば、そこから攻撃することも出来る。相手の所持している銃の銃口に銃弾を打ち込み、使用不能にすることも出来る」
「うわ~・・・・・・」
もはや引くよ。あの人前世殺し屋だったの?
「生徒会は生徒会として一つのチームを組んでいるからな。並の生徒ではまともに戦うことすら出来ない」
「あ! 見つけた!」
聞き覚えのある声が耳に届き、後ろを振り返る。
「冥華・・・・・・」
銀髪のポニーテールを上下させ、右手で男子生徒の頭を掴み引きずり、左手で女子生徒の頭を掴み引きずっている。
「冥華ちゃん駄目だよ! そんなことしちゃ!」
「悪いけど、今日の私は一味違うよ~?」
冥華は両手に持っていた生徒を投げ捨てる。
「・・・・・・今日は本気ってことか」
「特別ゲストもいるよ!」
長ランをなびかせ、女子生徒がやってくる。
「久しぶりだな、実」
「あれ? 最近自分の出番がなくて毎晩夜鳴きしていた警備委員長こと紗枝じゃん」
「そうそう、最近出番がなくて、あたしの出番が来ますようにって毎日神社におまいりに・・・・・・ってうるさいわ!」
ノリノリだな。
「久々の登場だからな。少し準備運動するか」
紗枝は私たちを指差した。
「ひっ・・・・・・」
「違う、指差してるのは私たちじゃない! お前たち逃げろ!」
後ろにいた女子生徒と男子生徒に逃げるよう指示する。
だが、瞬く間に二人は、紗枝の蹴り一撃によって一気に体力ゲージを0にされてしまった。
「これで6チーム殲滅かな? やっぱり紗枝ちゃんはすごいね!」
冥華が紗枝の頭をなでようとする。身長が届かないので紗枝がかがんであげた。
「お前も7チーム殲滅したんだろ? あたしなんかまだまだだ」
「たった二人で13チームを・・・・・・!?」
姫子の顔が真っ青になる。
「さて、実ちゃん。前から一度本気で戦ってみたいと思ってたんだ! よろしくね!」
ちゃんと礼儀を忘れないあたりは尊敬する。
「・・・・・・始めるか」
私は冥華に向けて銃を構えた。
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