第21話 友のために
「とは言っても、どうやって助けに行くんだ? 流石に高校生とはいえ子供なんだし、あまり無茶なことは出来ないぞ?」
コーラを飲みながら話す優香。
「じゃあどしどし意見を出してもらおうと思います! 第一回、「実ちゃん救出会議」!」
第一回ってことは続きがあるのか?
・・・・・・あ、ども。今回は実がいないので私、「八重桜 優香」がナレーターを勤めさせていただくんでよろしく。
まぁ、一応実と喋り方似てるし・・・・・・な?
「はい!」
おっ、早速手が挙がったな。積極的でよろしい。
「よし! では冥華ちゃん!」
「とりあえず力ずくで倒すまでだよ!」
やめろ。お前は本気で殺しかねない。
「候補の一つに入れましょう!」
「やめとけやめとけ」
必死で止める私を無視し、どこからか持ってきたホワイトボードに書き込む。あぁ・・・・・・、今日は死人が出るな。お線香買って行ってやろ。
「スッ・・・・・・」
「はい! さゆりちゃん!」
自分で「スッ・・・・・・」って言うな。それと黙って手を上げるな。声出せ。
「私の最高の音楽で、あの人たちを魅了させましょう! そしてすかさず実を助けるのです!」
「こう・・・・・・」
「却下」
流石にお前らふざけてるだろ。
そう思い、私は日菜の頭にチョップを喰らわせる。
「何で!? ものすごくいいじゃん! さゆりちゃんの作曲能力を侮っちゃだめだよ!」
「音楽流している時点で刺されるか、射殺されるかのどちらかでゲームオーバーだ」
「大丈夫! 私はライフが100あるから!」
日菜は空中を指差す。何が見えているんだ?
「貴方達・・・・・・!」
「あ・・・・・・」
風紀委員長の方を向くと、背後に謎の炎が映し出されていた。怒りを表しているのだろうか?
「何で私まで殴られるんだよ・・・・・・。悪いのはこいつらだろうが!」
結局、私たちは風紀委員長の鉄拳制裁を喰らった。地味に痛かったよ。華奢な見た目の癖に。
「もう生徒会長様にお願いするしかありませんよ。生徒会長様なら何か言い案を出してくださるでしょうし」
「いやいや、誰にも言うなって言ってたのに、何で言うんだよ。その時点で実のライフは消えるぞ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
誰一人言葉を発さなくなってしまった。
「あぁ・・・・・・、すまない。何でもかんでも否定して。やっぱりこういうのって意見をしっかり聞くのが・・・・・・」
「よし! 気分転換しよう!」
割り込むな。
「おい日菜。お前今の状況分かってるのか?」
「うん! でも、実ちゃんならきっと「いい案が出てこなくなったら、リフレッシュしろ」って言うからね!」
「それもそうね。行き詰ったときに作曲してもいい音楽は出来ないわ」
「それじゃあ遊びに行こう! とりあえずバッティングセンター行こう!」
冥華の掛け声で馬鹿三人(日菜・冥華・さゆり)は店内を出て行ってしまった。
「今なら実の気持ちが分かる気がするぞ・・・・・・。今度実に何か手土産でも持っていってやるか・・・・・・」
いつもこんなに大変な思いしてたんだな。主人公って大変だな。(個人の感想です)
そう思い、私は椅子にもたれかかり背中を伸ばす。
「お疲れ様です」
風紀委員長は私にコーヒーを差し出した。いつ買ってきたんだ?
「あ、ども」
風紀委員長は私の隣に座り、コーヒーを口に含む。何か辛そうな顔してるけどそこは見逃してやるか。
「ふぅ・・・・・・。あの人たちにも困ったものですね。本当に私たちと同じ学園の生徒なんでしょうか?」
「そんなこと私に聞かれても・・・・・・」
風紀委員長もお疲れなんだろうな。
「でも、さゆりもだいぶ成長したと思いますよ?」
「おぉ・・・・・・。えっと、・・・・・・どなたでしたっけ?」
「『如月小町』。そうか、君には言ってなかったね。覚えておいてね」
「はい。よろしく」
初対面なので、一応一礼する。・・・・・・にしても、この人絶対高等部の生徒じゃないだろ。何で一緒に来てるんだよ。
「さて、『保護者会議』を始めましょうか」
「そうですね」
「は?」
私を除いた二人は、どこかのロボットアニメの司令官みたいなポーズをとる。
「えっと・・・・・・、これは一体・・・・・・?」
「ではまず、小町さんからどうぞ」
「はい。最近のさゆりについて報告させていただきます」
無視かよ。
「いつも変わらず、さゆりは可愛いです。あんなに幼い子供のような見た目をしているのに、背伸びしようと頑張って女性口調で喋っているのも実に可愛らしい。そして何よりも頑張り屋のところもすばらしい。まだ高校生なのに、作曲家をやっているというのは他には無いスペックなのではないでしょうか?」
「なるほど。すばらしいご意見をありがとうございます」
「こちらこそ。では次は風紀委員長」
「はい」
あんたも喋るんかい。
「冥華は・・・・・・、特に無いですね。強いて言うなら、いつもうるさいことぐらいでしょうか? それと最近私によく懐くようになりました。その程度ですかね」
「・・・・・・え? もう終わり?」
「はい。これ以上話すことはありません」
ふーん・・・・・・。何か面白そうだな。ちょっかいかけてみるか。
「風紀委員長は、体育委員長のことどう思ってるんだ?」
「どうって・・・・・・。ただの仕事仲間ですよ」
「本当に? 本当は好きなんじゃないのか~?」
「好きではありません!」
お。顔が赤くなったな。
「好きではないですが・・・・・・。何でしょう、妹みたいな感じではありますね。行動といい、性格といい、体格といい。守ってあげたくなるような感じにはなります。実際は守る必要なんて一切ないんですけどね。たまにあの子のことを考えたりすることはありますけど。でも好きなわけではないんですよ?」
「あぁ・・・・・・(察し)」
「風紀委員長、それ・・・・・・」
いや、ここは言わないほうが面白いのでは? その気持ちが濃いと分かっていない状況でこの先関わっていくとどうなるのか面白そうだな。
「じゃあ最後は優香ちゃん!」
「貴方も何か言い話しないですか?」
「私!?」
二人に見つめられながら、だんだんと小さくなっていく私。いや、圧すごいな?
「私は特にそういう人はいないぞ。それこそ、日菜とかに聞けばいいんじゃないのか?」
「いえ、日菜さんはもう分かっているので。分かっていることを聞いても面白みが無いんですよ」
「へ、へぇ・・・・・・そうなんですか・・・・・・」
風紀委員長の新たな一面が見えたな・・・・・・
「で、話をどうぞ?」
「早く話して、楽になんな?」
え? 私取り調べ受けてるの?
「・・・・・・実に対しては、カッコいいなというイメージはありますね」
「なるほど。実さんですか」
「あいつは怖そうに見えます。ていうか本当に怖いです。初対面の人にいきなり喧嘩吹っかけるし、私の顔面を殴りつけたし」
「そういうこともありましたね・・・・・・」
なお、この意味が知りたい方は、優香の顔面を殴りつけた話は第十八話を。いきなり喧嘩を吹っかけた話は第十九話をご覧ください。
「あいつ、顔はアイドル並みに美人なのに、目のクマは酷いし、ものすごい偏食家だし。あとゲーム廃人だし」
「そうだったんですね・・・・・・。風紀委員長として見逃せませんね」
「・・・・・・でも、本当はみんなの事をよく見ていたり、面倒見がよかったり、誰よりもやさしくて。みんなの道しるべになっている感じがします。私もあいつに救われました」
「・・・・・・殴られたのに?」
それを言うのは反則でしょうが。
「あいつは、将来いい母親になりますよ」
「・・・・・・日菜と結婚してですか?」
「なんでやねん」
しまった・・・・・・。うっかり地元の訛りが出てしまった・・・・・・(和歌山出身)
「ふーん・・・・・・、なかなかいいこと言うじゃねえか」
「え?」
聞き覚えのある声に、大体察しながらも驚きながら振り返る。そこには、いるはずの無い人物が立っていた。
「え!? 実さん!? 何でここに!?」
そこにはなぜか実が立っていた。
「は!? お前なんでここにいるんだよ! 誘拐されたんじゃなかったのか!?」
「実はな・・・・・・」
実話そうとした瞬間、また電話が鳴った。
「もしもし」
『諸君。さっきはすまなかった。どうやら我々の勘違いだったようだ』
「は?」
『我々は「天場学園」の目的だったのだが、部下が漢字を見間違えたらしい。そのせいでこの子をさらってしまった。すまない』
「はい・・・・・・」
『この子は無事に送り返した。どこも怪我していないはずだ。ではさらばだ』
そう言い残し、通話が切れた。
「何だったんだ・・・・・・? あいつら・・・・・・」
「まぁいいじゃねぇか。それより何だって~?『誰よりもやさしい』だって? 嬉しいなぁ~!」
実が私の頬をつついてくる。
「~~! うるせぇ! お前は誰よりも意地悪だよ!」
「何だとコラ!」
その後、私たち四人は仲良くコーヒーを飲み、ゆっくりと雑談したのだった。
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