第20話 青春・オンステージ
「じゃあ今日から二週間修学旅行となりまーす! たくさん学んでたくさん楽しんできてね!」
唐突だが、私たちは今日から修学旅行である。
私たちの目の前に聳え立つのは、どこかの国の国王でも乗せるのかと思うぐらいのバスだった。
「そもそもどうしてこんな真冬に修学旅行やるんだ? 普通は秋とかにやるもんじゃないのか?」
「ウチの学校は三年間、春夏秋冬毎回修学旅行に行くんだよ。社会勉強のためとしてね」
「それだったら学園内だけで良いんじゃ・・・・・・」
だってウチの学園、ほぼ国家じゃん。
「バスって暇だな・・・・・・」
修学旅行あるある1。バス移動中がとても暇。
うん。ゲームしよう。本来スマホゲームはこういう隙間時間を埋めるために作られたものだからな。使わないでどうする!(実個人の意見です)
そう思い、制服のポケットからスマホを取り出そうとする。
「スマホを取り出して何をするおつもりで?」
紫髪の女子生徒からにらみつけられた。
「え? ふ、風紀委員長!?」
「私もいるよ~♪」
「冥華ちゃん! 何で二人ともここに!?」
冥華がこっちを向きながら手を振っていた。
「今さらですか? 私たちは「教育係」として生徒会代表で付き添いで来ているのです。大体、体育委員長。何故貴方と一緒に・・・・・・。生徒会長様も一体何を考えていらしてるのやら」
「そんなこと言わないでよ~。せっかく一緒にお仕事するんだからもっと楽しもうよ!」
「貴方と一緒に仕事をしていいことなんて一度も無かったのです! 貴方のせいで一体どれだけ風紀を乱されたと思っているのですか!?」
「おーい、二人とも。ここで喧嘩するのやめてくれない?」
バスの中で騒ぐほうが私は問題だと思うのだけどな~・・・・・・
「ていうか何であんたたちなんだ? 警備委員長とか他にもいただろ?」
「警備委員長が学園を離れたら、学園の防衛は裸同然です」
「他の方々はいらっしゃらないのですか?」
「確か、会計・経費委員長はゲームでサボりでしょ~? で、衛生委員長はこれまでの行動から自宅謹慎処分だよ。西行ちゃん直々にね」
「さ、西行ちゃん・・・・・・!? 貴方、親愛なる生徒会長様に対してそのような呼び方を・・・・・・。やはり貴方は虫が好きません。今この場で、風紀委員長として貴方に裁きを下します」
そう言い、風紀委員長は腰につけていた手錠を一つ取り出し冥華にかける。
「おっ? やるか~? 面白そう!」
冥華はその手錠を軽々と引きちぎる。
「委員長同士、手加減は無しですよ」
「はぁ、はぁ・・・・・・」
「何でバスの中で戦いを始めるんだよ・・・・・・」
あの後、日菜と私が必死に二人を押さえつけて喧嘩は収まった。
「この戦いはまた後日と致しましょう」
「そうだね! いつでも待ってるよ!」
と、このように仲良く会話をしているように見える二人。だが彼女たちの心の中では、「絶対に負けない」という意地のマグマが煮えたぎっていたのだ。
「でも着いたよ。やっと少しは休めるね・・・・・・」
「とりあえず降りるか」
「ふぅ、タバコが美味い」
「ちょっと! 貴方何故タバコなんて吸っているのですか!?」
優香はバスを降りるなり、タバコを吸い始めた。
ちなみに優香は私たちと同じ班である。
「ここならいい音楽が作れそうね」
「貴方も何故ヘッドフォンを着けているのですか!?」
「こいつは仕方ないんだよ」
さゆりも同じ班である。
「あれ? 今日は如月先輩一緒じゃないの?」
「あなたたちの先輩じゃないわよ。小町は既にここで待機してるわ。ほら、あそこにいるわよ」
「さゆり~。遅かったから心配したよ?」
「ここからは自由行動です。皆、天地学園の生徒として恥の無い行動をするように」
「「「はーい」」」
先生がそう言うと、皆散り散りになった。
「まずはどこ行く? 皆行きたい所言ってみて?」
「ゲームセンター」
「音楽美術館」
「市役所」
「酒蔵」
「ゴルフ場と、バッティングセンター」
誰がどこに行きたいと思っているか当ててみよう。
「ちょっと待って! これ修学旅行だから!」
ひとまず近くのファストフード店で休憩。
「風紀委員長ともあろうものが・・・・・・、ファストフード店だなんて・・・・・・! 健康に悪いです!」
「お前それ、全国のファストフード店の店員が黙ってないぞ。それにあんためちゃくちゃハンバーガー食べてるじゃん」
既に風紀委員長の前には四つのハンバーガーの包み殻がある。
「こ、これは・・・・・・! たまたまあったから注文したまでです! 決して食べたかったからというわけではございません!」
たまたまで片付く量じゃない。何だよ十二個って。
「それで、結局どこに行くの? 早くしないと自由行動終わっちゃうわよ」
さゆりはスムージーを頼み、私はセットを注文した。
「ちょっとトイレに行ってくる」
そう言って私は席を立つ。
「実ちゃんが行くなら私も!」
「来るな」
「ふぅ。あいつらには困ったもんだよ・・・・・・」
特にあの二人、体育委員長と風紀委員長。犬猿の仲・・・・・・いや、冥華は結構仲良くしたってるしな。過去に何かあったのか?
「早く戻るか」
手を洗い、トイレのドアに手をかけた。次の瞬間。
「動くな」
「!」
背中に硬いものを押し付けられた。形状からしてこれは・・・・・・
銃だ。
「安心しろ。何もしなければ、こちらも危害を加えない。ただし、抵抗したら・・・・・・」
複数の大人の男が私を取り囲む。成人男性二~三人だったら余裕で相手できるが、さすがに大人数に勝てるほど私は強くない。日菜とか体育委員長なら余裕だろうが。
ここはおとなしく身を引いたほうが得策だろう。
「・・・・・・分かった」
「いい子だ。じゃあこっちに来い」
・・・・・・一つ言わせてもらうけど、ここ女子トイレだからな?
「実ちゃん遅いね~」
「何やってるんだ? あいつトイレで寝てるのか?」
「私、見てきますね」
不安になったのか、風紀委員長は席を立ちトイレへと向かう。
「委員長行ってらっしゃ~い」
「・・・・・・ハンバーガーの追加注文よろしくお願いします」
「りょうかーい」
冥華は風紀委員長に手を振りながらポテトを食べ続ける。
「実さんがいません・・・・・・」
「え!? どこに行っちゃったんだろう?」
プルルルルル
「電話だ。あれ? 知らない番号からだよ?」
冥華のスマホから着信音が鳴る。
「はい、もしもし」
『お前らがこの女の仲間か』
「? そうだけど。君たちは?」
『秋雨実だったか? この女は誘拐した』
「「「「「え!?」」」」」
全員が大声を上げる。その大声に、周りの客も一斉にこちらを振り向く。
「ど、どういうこと!?」
『俺たちが諸君に要求することは三つ。一つ目は、金だ。二つ目は、諸君の乗ってきたバスを我々の物にする。そして三つ目は・・・・・・』
「何?」
五人の周りの空気が重くなる。
『天地学園を我々の支配下に置くことを要求する』
「!?」
「チッ! おい代われ! テメェどういうつもりだ! 何故それを知っているんだ!」
「この女の生徒手帳を少々拝借した。諸君、君たちはなかなかいい場所に通っているようだな。以上、この三つを要求する。この三つが我々のものになるのならば、この女は無事に帰すことを諸君に誓う。そして、警察には通報するな。もちろん諸君の先生方にもだ。通報した瞬間、この女を道連れで我々は死ぬ。ではさらばだ」
通話が切れる。
「クソッ!」
優香は思い切りスマホを振り上げる。
「優香ちゃん落ち着いて! それ私のスマホだから!」
「どうする?」
「どうするもクソもあるか! 実を助けに行くぞ!」
「落ち着きなさい。ここは先生たちに報告したほうがいいかと」
風紀委員長がもっともな意見を言う。
「お前さっきの話聞いてなかったのかよ! 通報したら殺すって言っただろ!」
優香は怒りに任せて机を殴りつけた。
「しかし・・・・・・、我々子供だけでは・・・・・・」
「・・・・・・行こう。助けに」
「日菜さん? 貴方正気なのですか?」
「下手したら殺されるわよ?」
「それでも、私は実ちゃんを助ける。君たちだってそうでしょ? ここにいる私たち、皆、実ちゃんに助けられてきたじゃん! ずっと助けられっぱなしで、何も実ちゃんに恩返しできて無いじゃん! 今度は、私たちが実ちゃんを助ける番だよ!」
「・・・・・・へっ!」
優香は日菜の頭を拳で殴りつける。
「痛い!」
「・・・・・・日菜の癖に、生意気なこと言うじゃねぇか」
「体育委員長、一時休戦です。今は共に生徒を助けましょう」
「・・・・・・いいよ! じゃあ今は友達だね! よろしく、水星ちゃん!」
冥華は微笑みながら風紀委員長に手を差し出す。
「・・・・・・よ、よろしくおねがいします」
水星は、赤面しながら冥華と握手を交わした。
「じゃあ、行くよ!」
続く・・・・・・
DETAFILE
如月小町
年齢 19歳 身長 173cm 体重 49kg
血液型 A型 誕生日 1月29日
好きなもの 牛丼・キムチ・野球
嫌いなもの 冬・魚全般
天地学園大学部1年生
医学部所属。
さゆりとは幼馴染の仲で、家は隣同士。小さい頃はよくさゆりの面倒を見ていた。
現在も常にさゆりの付き添いとして一緒に行動している。
そのせいか、さゆりに対しては幼馴染以上の感情を抱いている。
常に白衣を羽織っている。
趣味は野球観戦。
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