第22話 宇宙一の大将軍

いろいろあった修学旅行も終わり、また新しい一週間が始まった。

私が教室でスマホゲームをしていると、いつもどおり先生が入ってきた。

「はい。今日は転校生を紹介します」

クラス内がざわつき始める。

「お、転校生か。高校生で転校生なんて珍しいな」

「ほんとだね。その上、この学園だなんて・・・・・・」

私一応、その編入試験首席合格なんだけど。

「じゃあ入ってきて」

先生が廊下に向かって声をかける。

「・・・・・・え?」

入ってきたのは、まさかの馬だった。

・・・・・・いや、厳密に言うと、馬に乗って戦国時代の鎧を着けた女子生徒が入ってきた。

「じ、じゃあ自己紹介を・・・・・・」

そりゃ先生も戸惑うわな。まず教室に馬で入室するのをやめろ。

いや、それ以前にどうやって馬で校内に入れたんだ? 月仕事しろよ。

「イエス! ワタシの名前はエヴァ・シャーロット=ソフィアⅦ世よ! カッコいいショウグンなるために日本に来たわ。よろしくね!」

よろしくできねぇよ。鎧を脱げ。

「そう・・・・・・。じゃあ席は一番後ろで・・・・・・」

「センキュー! 行くわよ戦国丸!」

馬の名前のセンス・・・・・・。絶妙にダサい。

「それじゃあ・・・・・・授業を始めましょうか・・・・・・」


「あ、そういえばエヴァちゃんにはタブレット渡して無かったわね。はい」

先生がエヴァにタブレットを渡す。(天地学園では授業の課題や宿題の提出はタブレットを使って行われる。)

「ノーセンキュー! 私はショウグンになるのよ! タブレットなんてそんなもの使えるわけ無いでしょ!」

エヴァはそっぽを向き、タブレットを拒否した。

「えぇ・・・・・・。でも、これを使ってもらわないと、授業が出来ないから・・・・・・、ね?」

「いやよ!」

「はぁ・・・・・・、じゃあ今度エヴァちゃんのタブレットだけ和風にしてあげるから。お願い!」

「そういうことならいいわよ」

めんどくさい女だな・・・・・・。物事にこだわりすぎるっていうのも問題だ。


休み時間

「さてと。スマホゲームするかな」

休み時間にすることといえばやっぱりゲームしかないよな。だって友達いないもん。

今日のために200万円課金したんだぞ? 推しアニメとのコラボガチャのためにな!(廃人の行動)

「エ~ヴァちゃ~ん!」

うん、やると思った。こいつ絶対転校生が来たら真っ先に絡んでいくタイプだからな。

「何かしら? ワタシはこれから素振りにいくのよ。邪魔しないでくれるかしら?」

「面白そうだね。私もやる! ついでに実ちゃんも!」

「はぁ!? 何で!?」

「実ちゃんの運動不足解消のためだよ!」

「失礼な・・・・・・」

私だって(ゲームで)将棋棋士並みに頭使ってるんだぞ? そしてカロリー消費してるんだぞ?

「実ちゃんがいくら食事をしても太らないのはそういうことだったんだね・・・・・・」

「まぁ体質のせいでもあるけどな」

「女子の敵だ~!」

「あの~・・・・・・、ワタシはもういいかしら・・・・・・?」

「あ、忘れてた。私も練習する!」

結局やるのかい。

「もういいわよ。でも竹刀とか木刀とか持ってないでしょ?」

「あ、そうだったな。どうしようか・・・・・・」

「それなら持ってるよ。この前の修学旅行で買ってきたんだ」

「いつの間に買ってたのかよ・・・・・・。お前は男子中学生か」

「持ってるのならいいわ。早速稽古を始めましょう」


学園内の道場に来た。

「まずは素振り千本よ。貴方はこなせるかしら?」

「余裕だよ!」

横に二人並んで木刀を構える。なかなか凛々しいな・・・・・・。これがいつもの日常生活でもやってくれればいいんだけどな。

「じゃあ実ちゃん、合図お願いね」

「私がやるのかよ。・・・・・・じゃあ、素振り千本始め!」

私が掛け声を出した瞬間、ありえない速さで素振りを始めた。あ、ちなみにこれ「早素振り」というやつです。詳しくはネットで調べてみてね。

「貴方・・・・・・なかなかやるわね・・・・・・」

「エヴァちゃんこそ!」

・・・・・・なんだろう。二人とも同じ速度でやっている(様に見える)のに日菜だけ余裕のスマイルだな・・・・・・。体力無限なのか?


「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・。貴方すごいわね・・・・・・。私の練習についてこれるなんて・・・・・・」

「エヴァちゃんもお疲れ様!」

「二人ともお疲れさん。ほれ、アク○リアス」

「センキュー、実」

エヴァは美味しそうに飲み始める。スポーツドリンクって運動した後に飲むと美味いらしいな・・・・・・。私は一切運動しないからその味が分からないけどな。

「さて。もう一セットやるわよ」

「オッケー! 頑張るぞ!」

と、日菜が木刀の柄(持ち手の部分)を掴んだ瞬間、木刀から鈍い音がした。

「え?」

木刀が粉々に砕け散った。そして落ちた木刀の部分は、灰のようになってしまった。

「えーっと・・・・・・、これは一体?」

説明しよう!

日菜が木刀の素振りをしているときの木刀にかかっていた空気抵抗の重さはなんと9000N!(100N=大体10kg)

さらに日菜が木刀を握っていたときの握力は800kg!

その結果、木刀が耐え切れなくなり粉々に砕け散ったのだ!

「いや刀振って砕け散るとか、RPGとかによくある伝説の剣かよ!?」

「私は、世界を救わない」

「そうだな! お前がやったのは純粋な破壊行為だよ!」

「貴方・・・・・・、半端無いわね・・・・・・。もはや恐ろしいわ・・・・・・」

「うん。それが正常な精神状態だぞ。私たちは慣れすぎてもう驚かないからな。(でもツッコミは入れる)」

とりあえずこの木刀(だった物)の処理するか・・・・・・。何か煙出してるし。灰になったのか・・・・・・

「火事にならないように処理してね」

「じゃあお前やれ」


30分後

「いや~、いい汗かいた!」

「・・・・・・」

「おーい、エヴァー、死ぬなよ」

エヴァは体力を使い果たしたのか、その場に倒れこんでしまった。というかいつもこんな練習をこなしているのかよ・・・・・・。ここまで来ると過労死を懸念するレベルだぞ。

「大丈夫・・・・・・よ・・・・・・。ワタシはショウグンになるのだから・・・・・・!」

「将軍になる前に死んでしまうぞ」

ひとまず私はエヴァの額に水でぬらしたタオルを乗せた。

「・・・・・・センキュー」

「将軍になるとか言っといて、言語は時々外国語なんだな・・・・・・」

「失礼ね。これでも「日本語能力試験N1」よ」

「じゃあ何で時々英語が出るんだよ。別に悪いことじゃないけど」

「癖じゃないかしらね」

そういうものなのかね。癖って言うのは直すのが難しいからね。私で言うと・・・・・・「毎日三食インスタント食品を食べるのをやめる」みたいなものか?

「それはもはや病気の域ね」

「勝手に人の心を読むな」

「実ちゃん、最近はちゃんと自炊してるからね。お野菜もお肉もちゃんと食べてるから健康だもん。少し前までは本当に三食インスタント麺だったもんね」

人の私生活をべらべら話すな!

あと最近ちゃんと自炊するようになったのは、野菜食わないと日菜に関節技かけられるから仕方なくやってるだけだ。

「エヴァちゃんはどうしてそんなに将軍が好きなの?」

「唐突だなオイ」

「好きになった理由? それはね、とある日本の本を読んでからだったわね」

海外にも日本の将軍とかの本があるのか・・・・・・

「彼らの名は「イエヤス」・「ノブナガ」・「ヒデヨシ」という名前だった気がするわね。彼らはすごい人物なのよ! ちゃんと自分の意思を持って、民のために頑張った人たちなのよ!(個人の感想)」

「そうなのか・・・・・・。私はそう思わないがな」

「何か言ったかしら?」

「おぉ、悪い悪い。謝るから刀を抜くな」

「・・・・・・ワタシはいつも他人に流されて生きてきたわ。ワタシのファミリーはお金持ちだから、あまり自由に行動できないし。何をするにも、どこに行くにも必ず誰かが付いてくるし」

「え・・・・・・? それってストーカーじゃ・・・・・・」

「多分それはSPだ」

「彼らのことを知って、ワタシは決めたわ。自分の事は自分で決める。自分の意思をしっかりと持つってね」

「・・・・・・それと将軍になるのと何の関係が・・・・・・」

「え? だってショウグンカッコいいじゃない。それに、ショウグンが国の政治を行っているのでしょう?」

「は?」

・・・・・・何か勘違いしてないかこの女。

「ワタシがショウグンになった暁には、老若男女全員が苦しみの無い生活を送れるようにするわ!」

「・・・・・・エヴァ。今の日本は総理大臣って言う人がな・・・・・・」

「エヴァちゃんすごいね! 私も応援するよ!」

「おい日菜。こいつが本気で勘違いするから・・・・・・」

「よーし! 立派なショウグンになって国をよりよくするために、素振り6000本追加よ!」

「よしきた!」

エヴァがそう言うと、二人でまた素振りを始めた。

「この日本の将来はどうなるのやら・・・・・・」

あとでエヴァに教えておくか・・・・・・。

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