??章 ****駅_最後の終着駅

2_23(レコード:23審議と転生)

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 数分前...代行人は直ぐにフジニアの後を追おうとしたが管理人ともう一人の代行人に引き留められた。


 「何してるんだ!あいつが!」

 「少し冷静になれ馬鹿!」

 「これが落ち着いてられるか!なぜ引き留めた。あいつは処罰の対象だぞ!管理人もなぜおれの言うことを聞かない!お前は!」

 「お前が取り乱してどうする!少しは部下の話しを聞け!お前が何故悪魔と人間を恨むのかその理由は痛いほど分かる。ただ...あの悪魔と人間は違う。それだけは忘れるな...お前が我を忘れたら元も子もないだろ。あの時と同じように大切な部下をまた失いたいのか!」

 「......」

 「...代行人。あの..その...」

 「部下じゃない...元部下だ」

 「ハイハイ。大切なのは否定しないんだな」

 「...」


代行人は下を向いてため息をついた後管理人に寄り掛かった。


 「えっと...代行人?」


突然のことに焦った管理人は代行人を受け止めた。代行人は何も言わず管理人を抱きしめた後小さな声で言った。


 「悪魔の処罰について言えよ...」

 「...代行人!分かりました。話します...」


と管理人は言うと代行人は静かに話しを聞いた。


 「フジニアを..彼を死罪に処し殺すことは簡単です。ですが、死罪ではなく別の方法で処罰することも出来るはずです」

 「ほう...別の方法とは何だ?行ってみろ管理人。この状況で俺とお前にくっついているそのぽんこつを納得することが出来たら考えてやる」

 「誰がぽんこつだ!」

 「お前だ馬鹿やろう」

 「酷い言い方だな。俺のどこがぽんこつだ」

 「今がそうだろう。だいたいお前は異形で最強な癖して部下に抱き着いているからだ」

 「侵害...元部下だ。それに元部下だけじゃないし...」

 「はいはい!管理人はお前の大切な息子だもんな」

 「分かればいい」

 「いらっ!おい、管理人!こいつこの場で殺していいか?」

 「何言ってるんだ?お前は俺より弱い癖に」

 「いらっ!そうかよ...なら今この場でくびり殺してやる」

 「おおー怖い怖い!助けて管理人ーこいつに殺されるー」

 「棒読みするな!」

 「きゃあー」

 「おい!」

 「あの...話を...」


 管理人は代行人の二人に話をしようとしたがこの二人は犬猿の仲なのだ。顔を合わせれば喧嘩する。元師匠の代行人は管理人の肩に手を置きそれを見る代行人にドヤ顔を披露した。ドヤ顔を見せられた代行人はイラつき殴ろうとして管理人は止めるのが大変だった。何とか止めた後二人に先ほどの話しを始めた。


 「えっと...話してもいいですか?」

 「構わない話せ」

 「でも...代行人が」

 「こいつのことは気にするな」

 「いや...でも...」

 「か..管理人助けて...苦し...」

 「てめえは一章そうしてろ」

 「あ、あははは...」

 「管理人、苦笑いしてないで助けてー」

 「いいから続けろ」

 「え...はい...」


元師匠の代行人の首を肘で絞める代行人に管理人は苦笑いをするしかなかった。締めている代行人はイラついているが絞められている代行人は案外平気そうだった。きっとわざとだろう。代行人が本気を出せばすぐに抜け出せることを知っているのでそのことに関しては心配はいらないのだ。管理人はそのまま二人に話し続けた。


 「このままいえば彼は死罪です。ですがそれでは意味がないんです」


と管理人が言うと二人は顔を上げて管理人を見た。管理人もその視線に気づいていたが気にせず続けた。


 「彼は他の異形と違い”あること”が出来るんです」

 「お前の言う”あること”とはなんだ?」

 「彼は異形や人の魂に干渉することが出来ます」

 「魂の干渉だと?」

 「はい。その上で提案があります。彼を死罪ではなく死神にして魂を導かせるのはどうでしょうか?」


と管理人はだめともで言う。案の定代行人はそれを否定した。


 「はあ!あいつを、あの悪魔を死神に転生させて魂を導くだと!」

 「ダメですか?」

 「当たり前だ!そんなこと認めらえるか!」

 「ですか、彼はもともと悪魔で魂についても詳しいです。現に人間である彼女の魂にも触れています」

 「だが...前例がない。悪魔を死罪に処さないわけには...」


 「その点に関しては私も考えがあります。私も同じく罪を償う身です。彼を死神に転生する際、私も同様に彼のサポート及び監視役として地獄の門番に転生するつもりです」

 「何?地獄の門番だと?」

 「はい!どちらも人手不足ですしそちらに転生すれば良いかと」

 「ダメだ!」

 「お願いします!役に立たなければその場で殺されても構いません!」

 「だが!」


管理人と代行人の口論が続く中今まで話を静かに聞いていた元師匠の代行人は口を開いた。


 「管理人...少しいいか?」

 「代行人?はい、何ですか?認めてくれるんですか?」

 「そうだ!お前からもなんか言ってくれ!そんなこと認められないって!」

 「お願いです!私の話を聞いてください!代行人」

 「はあ...二人とも黙れ」

 「「!!」」


元師匠の代行人の発した言葉と圧に二人は当てられた。無言で二人を睨みつける元師匠の代行人に冷汗が止まらない。しばらく沈黙が続き時が止まったように管理人は感じた。下を向き何かを考えている元師匠の代行人。やはり無理な提案かと管理人は半ば諦めていた。しかし、口が開いた元師匠の代行人の一言に気が抜けた。


 「いいだろう管理人」

 「へ?」

 「なんだよ。その気のない返事は?」

 「いや...認めてもらえると思わなくて...」

 「まあ、普通はそうだな」

 「おい!代行人、お前今自分が何を許可したのか分かってるのか?悪魔を死罪じゃなくて死神に転生させることがどういうことか分かってるのか?」

 「分かってるよ?そんなこと俺が分からずに判断していると思ったか?」

 「そうじゃない!ただこれは!」

 「普通は認められないだろうな」

 「じゃあ何故!」

 「こんなことを認めたのかってことが言いたいんだろ?いくら可愛い元部下のお願いでも認められないことがある。今までのように代行人として異形や人間を処罰する場合はな」

 「今まではってことは今回は別なのか?」

 「そう。今回は今までの前例がないんだ。正直俺も悪魔と人間の処罰には困った。だって悪さをしようと企んだり利用しようとしたり取引や契約をしていないなんて正直驚いた。そして互いに強い思いから引き起こしてしまった悲劇であることを知った。人間と悪魔は生きる時間も寿命も違う。そのせいか知らぬ間に傷つき歪な形となってしまったのが悪魔・フジニアと人間のきさらぎだ。この二人を死罪にするには少し酷な気もした。他に処罰する手立てはないのかと考えていたんだ。そんな中、管理人の提案で処罰の案が決まった」

 「それじゃあ...いいんですか、代行人」

 「ああ...悪魔・フジニアを死神に転生し管理人を地獄の門番に転生させることを認める」


と元師匠の代行人が言う。代行人は話を聞き深いため息をしたあと両手を上げて言った。


 「はあ...分かった。降参だ!代行人が言うように俺もその処罰を認める」

 「本当ですか!ありがとうございます!」


と管理人は言うと深々と頭を下げた。頭を下げて礼をいう管理人の頭を二人は優しく撫でた。


 「さて、次の問題はどうやって魂を導かせるかだな」


と代行人が腕を組むと管理人は懐からある本を取り出した。その本は以前フジニアが利籐に貰った白紙の本だった。本来なら何も文字は刻まれていないはずだが本にはタイトルと文字が刻まれていた。


 「それに関しても問題はないです。これを見てください!これは人間のきさらぎが書いた小説です」

 「これはなんだ?白紙はずなのに文字が刻まれている」

 「そうなんです。この本は悪魔・フジニアが以前人間・利籐に出会い貰った本らしくこの本は必要な時に文字が刻まれる仕組みとなっています」

 「それが今か...これは小説家?」

 「はい。人間の彼女は小説を書く才に恵まれていました。少し読んでみてください」


と管理人は言うと代行人に小説を渡した。二人はそれを受け取ると読み出した。二人が読み終えたことを確認した管理人は再び話し出した。


 「この小説のように生死の狭間の世界で前世の行いから魂を導くのはどうでしょうか?」

 「なるほどな。列車で死者の魂を乗せて導く...いいだろう。その小説の通りにしてやる」

 「管理人、その小説の名は何というんだ?」


と元師匠の代行人が言うと管理人は嬉しそうに答えた。


 「幽霊列車~前世の旅です」

 「幽霊列車~前世の旅か...面白そうな名前だな。なら列車の名前はそのようにしよう」

 「それでその小説に登場人物を元に車掌はあの悪魔として...管理人は...」


二人の代行人が登場人物を見ながら考えていた。管理人は自分がどの登場人物になるのかはもう決めていた。かつてフジニアに言われたあの言葉...


 (「そうだ!お前マジシャンになれよー。そうすればこんな顔もこうやって口元が緩んで笑うぞー」)


その言葉を思い出した管理人は照れくさそうに笑うと二人に言った。


 「私はマジシャンになります!」

 「「!!」」


と自信満々に言うと二人の代行人は固まりお互いの顔を見合わせる。管理人は二人の反応が分からず二人を見ると元師匠の代行人が管理人に近づいた。元師匠の代行人の代行人は管理人の頬に手を当てた。


 「え?あの...代行人?どうしたんですか?」

 「熱は内容で安心した」

 「え?」

 「今マジシャンになるって言ったか?」

 「はい」

 「正気か?それは本気マジか?」

 「ええ、本気です!それに私を変えてくれたのは彼ですから...」

 「...そうか。妬けるな」


と元師匠の代行人が言うと下を向いた。管理人は下を向いた元師匠の代行人を見た。元師匠の代行人は一息吸うと顔を上げた。


 「よし、ならそのように手配しよう。後の乗組員は好きにしていい」

 「代行人ありがとうございます!何から何まですみません」

 「いや、いいんだ。元部下の最後の頼みだからな」


と言うと元師匠の代行人は管理人の頭を優しく撫でると傍にいた代行人は深いため息をついた。


 「そこーいちゃつくな。まったく...死神を死罪じゃなく死神に転生させるとか地獄の門番になって支えるとか考えることが滅茶苦茶なんだよ。ったくどいつもこいつも...」


と顔の手で隠した代行人に管理人は謝った。


 「すみません、代行人。裁かれる身なのに偉そうなことを言って」

 「別にいい。お前が謝ることじゃないだろ?それに...俺も今回の悪魔と人間の処罰については疑問があったからな」


と言った代行人を元師匠の代行人が茶化す。


 「っとか言って一番あの悪魔と人間の処罰に反対してたくせにー」

 「おい!余計なこと言うな!」

 「そうなんですか?」

 「うん」

 「おい!」


元師匠の代行人の言葉に代行人はツッコミを入れる。管理人は代行人がフジニアたちの処罰に反対していたと思わず代行人を見た。知られなくなかったカミングアウトを知られた代行人は怒り、その反応を見た元師匠の代行人はいじる様に管理人に教えた。


 「そうなんだ。もともと悪魔と人間のことは気にかけていたみたいなんだ。悪魔と人間の処罰に一番反対して”俺が二人を審議の間に連れていくからお前ら手を出すな”って言ってたんだ。意外と優しいよな」

 「っち!黙れ」

 「舌打ちは良くない。まあ、俺も管理人のこともあったし悪魔と人間の処罰は死罪で良い派だったから少し揉めた」


とさらっと言われた管理人は青ざめた。


 「それって大丈夫だったんですか?」

 「まあな。一度殺し合ったけど私情ははさまず代行人の立場から処すことで落ち着いた」

 「そうですか...それは良かったです」

 「その割にはあの悪魔のことを殺そうとしていた癖に」

 「そうか?その割にはあの悪魔に態度悪かったよな?」

 「そんなことは無い。おれはもともと口が悪いんだよ!だいたいあの悪魔の傍にいたのはお前からあの悪魔を守るためだ。でなければお前...あの悪魔をくびり殺すだろ?」

 「よく分かったな。流石ー」

 「その態度が本当にイラつくな!それはおいといて...管理人、本当にいいんだな。俺たちはお前の提案をのむ。お前の言うように悪魔を死罪ではなく死神に。お前を管理人から地獄の門番に転生させる。それでいいか?」


と代行人に問われた管理人は真剣に答えた。


 「はい!」


管理人の返事を聞いた代行人たちは頷いた。


**


 「...と言うわけなんです。お互いに助け合って頑張りましょう。フジニア!」

 「.え..ええっと..でも...俺は...」

 フジニアは管理人の話すことが信じられず怯えるように管理人を見た。

 「まあ、いきなりこんなことを言われたら混乱しますよね。勝手なことをしてごめんなさい。あなたを救うにはこうするしか方法が浮かびませんでした。あなた達を救うどころか救えず、きさらぎさんが死んでしまった。全ては私の責任です。こうなる事態を防げなかった」


と頭を下げて謝る管理人をフジニアを焦りながら頭をあげさせた。


 「何やってるんだよ管理人!顔を上げてくれ!」

 「嫌です。これはけじめです」

 「いいから!頼む!管理人!なあ、なあって...」


フジニアはもう限界だった。代行人に明かされた自身の罪。悪魔は不幸の象徴とされる理由を理解したフジニアはどん底に突き落とされた。それに続ききさらぎの死。目の前で死んだきさらぎを救えず己の無力さを痛感した。目の前で死ぬのを見るのは三回目だった。一回目は小悪魔たちを、二回目は聖なる泉を、三回目はきさらぎだった。命を失う悲しみを知っているフジニアはもう二度と目の前で誰かを死なせないと誓ったのに話すことが出来なかった。管理人はフジニアを二度も助けてくれた。森に逃がす時と今だ。管理人はフジニアたちを逃がすため罪人となった。フジニアはそのことを礼を同時に謝罪したかった。


 (頭を下げなきゃいけないのは俺の方なのにどうして管理人が謝るんだよ...謝らなきゃ...謝らなきゃいけないのに涙が止まらない。体の震えが止まらない)


フジニアは涙が溢れ震えが止まらない体を抑えようとしたが止められず焦り呼吸が浅くなる。過呼吸になったフジニアは立てなくなりその場に崩れ落ちた。上手く呼吸が出来なくなったフジニアは両手を強く握りしめた。


 「かはっ...つっ..」

 「フジニア!」


過呼吸になったフジニアに気づいた管理人より先に代行人がフジニアに近づいた。代行人はフジニアの傍にしゃがみ込むとフジニアの背中を摩った。


 「落ち着け...あく、フジニアと言ったか?もう大丈夫だ。俺の後に続いてゆっくり自分のペースでいいから呼吸しろ。いいか?」

 「は...い...」


と代行人が言うと聞こえたのかフジニアはゆっくり頷いた。フジニアの反応を確認した代行人は落ち着かせるように言いながら背中を摩った。フジニアの呼吸は次第に落ち着き過呼吸も収まった。


 「よし、これで呼吸も安定したな」

 「ありがとう...ございます...その...」

 「かしこまらなくていいぞ。ほら見してみろ」


と代行人は言うと片手をフジニアに差し出した。フジニアはゆっくり左手を出すとその手を掴み治療し包帯を巻いた。


 「これでよしっと...何ぼーとしてんだよ。もう片方の手を手当てするから見せろ」

 「は、はい」


フジニアを右手を見せると代行人は左手同様に包帯を巻いた。


 「これでよし!どうだ?きつくないか?」

 「きつくない..です..その...ありがとうございます」

 「礼は言わなくていい。怪我人を手当てするのは当たり前だからな。昔どっかの誰かさんが良く怪我をしたからな」

 「どっかの誰かさん...?」


代行人の言葉にフジニアは首を傾げた。


 「そう、そいつが良く暴れるから困るんだ。ガキなのは変わらないよ本当にー」


と代行人が言うと遠くから見ていた元師匠の代行人はとぼけ顔で言った。


 「えー誰だろうー」

 「さあー誰だろうな?」

 「知らないー」

 「いてこますぞお前...まあいい」


と代行人は言い合っていたが話しを変えてフジニアに向き合った。


 「フジニア、お前は先ほどの審議の結果、悪魔から死神に転生し、管理人は地獄の門番に転生する。ここまでいいか?」


 「はい..管理人から聞きました。俺は死神となって死者の魂を導くんですよね」

 「そうだ。お前はきさらぎが書いた小説の登場人物・車掌になり死者の魂を導いてもらう。何か質問はあるか?」


と聞かれたフジニアは代行人に聞いた。


 「あの...その審議って管理人も含まれてますよね?」

 「そうだ。管理人は地獄の門番となりお前の監視及び補助を行う。それが何か問題でも?」

 「その審議...取りやめてもらえませんか?」


と言うフジニアに代行人たちは反応した。元師匠の代行人はフジニアを睨み、フジニアのもとへ行こうとしたがそれを代行人が抑えた。代行人はフジニアの首元に鎌を当て問いた。フジニアの首に当てられた鎌の先が首に当たり血が流れた。


 「落ち着け代行人...フジニア、それは一体どういう意味だ。お前のその言葉次第では審議の結果を果たさずこの場で斬る。それを踏まえてもう一度問う。何か質問は?何か問題はあるか?」


と代行人に再度問われた。フジニアは元師匠の代行人の所に歩き出した。フジニアが元師匠の代行人に所に歩き出すと思わずフジニア以外全員が驚いた。元師匠の代行人も自分の元にフジニアが来ると思わず間抜け顔になり一歩下がった。


 「え...こっち?」


フジニアは元師匠の代行人の目の前に立つと両手を掴み頭を下げて謝罪した。元師匠の代行人はフジニアが謝罪すると思わず固まった。


 「代行人、本当にすみませんでした」

 「え...あ...はい...」

 「代行人がカタコトになってる」

 「珍しいこともあるもんだな」


とカタコトで話す元師匠の代行人に二人はツッコミを入れた。


 「俺がこんなことを言うのは管理人の行為を無下にして侮辱行為に当たることも分かっています...でも...管理人は管理人は...俺のせいで...俺のせいで...罪に問われることになった。きさらぎもそうだ...俺のせいで...俺が巻き込んだんだ。俺が居なかったら二人は死ななかったし、審議に問われることは無かったんだ...本当にごめんなさい...ごめんなさい...管理人も俺のせいでごめん...俺のせいでお前は...許してくれなんて言わない...」


と涙を流しながらフジニアは謝った。


 「フジニア...私は」


と発言しようとした管理人に被さる様にフジニアは叫ぶと元師匠の代行人に土下座をした。


 「お願いです!俺はどうなってもいいから管理人の審議を取りやめてください!」

 「フジニア!何言ってるんですか、私は!」


と声を荒げた管理人は反論しようとしたが元師匠の代行人に発した一言で凍りついた。


 「おい...悪魔..フジニアって言ったか?お前その口を閉じろ。次に一言でも喋ったら殺すぞ」


と言うと塵を見るかのような冷酷な目でフジニアを見るとその胸倉を掴んだ。


 「いいかよく聞け...審議の結果はどんなに抗っても覆すことが出来ないんだよ。誰が大切な部下を審議で問うと思う?おれが望んで管理人を審議に掛けると思ってるのか?そんなわけないだろう!ふざけるのも大概にしろよ。俺は正直お前の事なんかどうでもよかった。俺はお前の死罪に肯定派だった。管理人が関わっているなら尚更な。しかし、管理人が考えなしに罪を犯すとは思えない。お前と人間を逃がすために重罪を背負った管理人の行為とそこにいる代行人の願いからお前を殺さず生かした。本当はこの場でくびり殺して足り居ないくらいお前に殺意がある。殺してその魂が消滅するまで殺してやりたいくらいだ。でも...代行人も管理人もそれを望まない。俺は正しく罪人をこの審議で裁くのが仕事だからだ。だから管理人がお前の審議の提案をした時受け入れることにした」

 「いいか?お前がやっていることは俺たち代行人だけでなく、罪を背負った管理人をも侮辱し貶している最低行為だ。それが分かったか?」

 「は...はい...すみませ..」

 「謝るな。謝るくらいなら最初からするな」


と言うとフジニアの胸倉を掴んだまま代行人の方へ向くと代行人に向けてフジニアを投げた。投げられたフジニアを代行人と管理人を焦りながら受け止めた。


 「「代行人!」」

 「代行人!フジニア、大丈夫?」

 「な、なんとかな...」

 「ちょっ、お前危ないだろ!落としたらどうすんだ!」

 「そんな投げてないし、落としても死なないだろ?悪魔なんだからな」

 「そう言う問題じゃねえ!」

 「......」

 「あ、おいこら!無視するな!」


フジニアを投げた元師匠の代行人はフジニアたちに背中を向けた。


 「代行人、早くその悪魔と管理人を連れて転生させろ」

 「急だな、おい!分かったよ!管理人、フジニアもこれからお前らを転生させる。もう、悪魔でも管理人でもなくなる。準備はいいか?」

 「はい!」

 「俺も...大丈夫です...その...」


と暗い顔をするフジニアに代行人は乱暴に頭を撫でた。


 「そんな暗い顔をするな。代行人にも言われただろ?管理人は望んで地獄の門番になった。お前たちを逃がしたのも管理人が自分に意志で行動したものだ。お前たちの守るためにした行為をお前は後悔しているかもしれないがそれをお前が無下にしてはいけない。後悔ならこれから先もするだろ?これまでの後悔は此処に全て置いておけ。これからは死神となって生まれ変わり死者の魂を導くんだ。ここにいる管理人と共にな。だから前を向け、フジニア」

 「前を向く...」


 と呟いたフジニアに管理人は話しかけた。


 「フジニア...代行人の言う通りです。過ぎてしまったことは後悔したことはやり直せない。だからこそ前を向いて生きていくしかないんです。それが例えどんなにつらい事でもあなたは一人じゃない。私が居ます。これから私は地獄の門番としてマジシャンとして魂を導き、あなたも死神として車掌として魂を導くんです」

 「...そうだな。俺は一人じゃないし管理人..いや、マジシャンがいるもんな!」

 「そうです。そうすればきっと彼女の..きさらぎさんの魂を導く日もきっと来ます。彼女のためにも共に頑張りましょう!」

 「ああ、俺が頑張るよ!でも...管理人がマジシャンってナイナイ!」


とフジニアが手を横に振って言うと管理人はむきになった。


 「いらっ!言ってくれましたね、絶対笑わせてやる!」


と言い合い代行人に二人は拳骨を貰い泣き目で頭を押さえて審議の間を後にすることになった。


 「代行人、フジニアと廊下で待っててくれませんか?最後に少し二人で話したくて」

 「分かった...いくぞ」

 「はい...じゃあ待ってるな」

 「うん」


と管理人はフジニアに手を振り審議の間には元師匠の代行人の二人となった。元師匠の代行人は何も言わず管理人に背を向けていた。管理人も最後に話さなければならないのに上手く言葉が出ない。先に話しかけたのは元師匠の代行人だった。相変わらず管理人には背を向けている。


 「...どうした?俺と最後に話すんじゃなかったのか?」

 「そのつもりだったんですが、いざ最後となると何を話せばいいのか分からなくて...」

 「ふふふ...俺もだよ。いざお前を前にするとダメだな。師匠としてお前の上司としてしっかりしないといけないのに...」

 「そんなことないですよ。代行人はしっかりしてますし私の尊敬する異形です」

 「それは慰めか?」

 「違います。本音ですよ」

 「そうだな...お前は俺に嘘はつかない。たった一度も...今思えばお前に聞くべきだった。悪魔とあの人間のいる森に足を踏み入れた瞬間から...でも聞くことが出来なかった俺のミスだ。それをずっと後悔していた」

 「代行人...私もあなたに何も言わなかったから、その...」

 「ぷっ...ふふふふふふふふ」


急に笑い出した代行人に管理人は驚いた。


 「代行人?」

 「いやー笑った。悪い悪い」

 「何で笑うんですか!」

 「慌てて話す管理人を久しぶりに見たからな」

 「そっそんなことないですよ」

 「そうやって両手を振って言う所も懐かしいな」

 「ああーもう!」


管理人は両手で顔を隠してその場でしゃがみ込んだ。その言葉を聞いた代行人は振り返って管理人の頭を優しく撫でた。


 「悪かった管理人。ほらほらしゃがみ込まないで顔を隠してないで見せてくれ」

 「嫌です!」

 「ほらほら」

 「ちょっちょっと!」


元師匠の代行人は代行人の隠す手を退けて顔を覗いた。管理人の顔は林檎のように赤くなっていた。


 「顔、真っ赤だな」

 「うう...言わないでくださいよ。恥ずかしいんですから!」

 「悪い悪い。照れたら顔を隠す癖も相変わらずだな」

 「もう!代行人!」


と管理人は言う。二人は目が合い笑いあった。腹を抱えて笑った元師匠の代行人は顔を下に上げると小さな声で呟いた。


 「もうこんなに大きくなったのか...」

 「代行人?今なんて?」

 「いや、こっちに話だ。まったく代行人の俺が一人の死神と人間に嫉妬するとはな...恥ずかしい。ちゃんとした師匠なら...ちゃんとした親ならこういう時は責めるんじゃなく信じて背中を押すのが正しいことだよな」

 「代行人...」


管理人は呟く元師匠の代行人はの顔を見た。管理人の視線に目を向けると笑みを向けた。


 「過ぎたことは後悔したことはやり直せない。前を向いて今を生きていくしかない...か。その通りだな。皆前に進んでる。あの悪魔・フジニアも、代行人も、それから管理人お前も前に進んでるんだもんな。俺もいいかげん前に進まないとな。いつまでもお前に甘える訳にはいかないもんな。決めた...」


と言った元師匠の代行人は管理人に向き合った。


 「俺はお前の意思を尊重する。お前が管理人を辞め地獄の門番・マジシャンになるのなら俺は応援する。あの悪魔・フジニアのためとは癪だがそれを選んだのはお前だ。お前の選んだ道と人生だ。後悔のないように過ごせ。管理人から地獄の門番になればお前は俺の部下ではなくなりここにもう二度と立ち寄れなくなる。俺とお前はもう二度と会うことは無いだろう。だが俺とお前は師弟以前に家族だ。辛かったり苦しかったりしたらため込まず吐き出す事。何かあればこれで連絡しろ」


と代行人に渡されたのは小型の時計だった。


 「これは...時計?」

 「そうだ。これは俺の能力で作った優れものだ。俺と直ぐに交信できる。何かあればそれで連絡しろ」

 「これ...代行人の大切な時計ですよね!こんな大切な物受け取れないです!」

 「だからだよ。お前に持っていて欲しいんだ。これはお前の物でもある。何せこれは”形見”だからな」

 「...え?」

 「形見って?」

 「なんでもない気にするな」

 「そうですか...時計ありがとうございます。大切にします」

 「ああ...管理人」

 「え?うわ!だ、代行人!」


突然抱き着いてきた元師匠の代行人に戸惑う管理人はどうすればいいのか分からなかった。恐る恐る代行人を抱きしめた管理人は代行人の肩が震えて鳴いていることに気づいた。


 「代行人...あの...」

 「しばらく、こうさせてくれ...」

 「はい...代行人俺もあなたに伝えたいことがあります」

 「なんだ...」

 「私...私もあなたの部下であなたが父親で本当に良かった。あの時あなたが私を見つけてくれなければ私は死んでいましたから。助けて頂いただけでなく守り育ててくれた...今の私があるのは全部あなたのおかげです。育ててくれた恩をこんな形で裏切ってしまいすみません。出来るの悪い部下で息子でごめんなさい」

 「まったくだよ。俺の部下は...俺の息子は俺に似てわんぱくだな」


 と言いながら管理人の頭を優しく撫でた。撫でられた管理人は照れながら代行人の肩に顔を隠した。


 「もう~代行人!」

 「そう言いながら管理人は撫でられるのが好きだろ?」

 「それは...そうですけど恥ずかしいんです!」

 「照れるなよ。こうしてお前の頭を撫でられるのも今日が最後なんだ。最後くらい甘えさせてくれ」

 「だ、代行人!」

 「今回だけ頼む...」

 「分かりました。いいですよ...私も代行人に頭を撫でられるの好きですから。最後くらいあなたに甘えてもいいですよね?」


と管理人が照れくさそうに言い元師匠の代行人は顔を見て固まった。


 「管理人、いいのか?」

 「聞かないでください。代行人だからいいんです」


と小さくなる声で言った。管理人の言葉を聞いた元師匠の代行人は笑うと思う存分管理人の頭を撫でて褒めた。


 「あの...代行人そろそろ...」

 「もう少しいいだろ?あと三分」

 「それ、さっきも言いましたよね?」

 「そうか?なら後五分だ」

 「増えてる!」

 「別に減るもんじゃないしいいだろー。このまま地獄の門番にならずにここにいるか?形は部下じゃないからそうだなーペットになるか?」

 「ペット!冗談ですよね?」

 「俺が冗談言うと思うか?」

 「それは...ってどこ触ってるんですか!」

 「親子の最後のスキンシップだ!」

 「どこに親子の最後のスキンシップで息子にセクハラをする父親がいるんですか!」

 「ここにいる」

 「そう言う問題じゃなくて...あっ!ちょっと!待って!」


代行人に管理人は逃げようとしたが腰を掴まれて逃げられなかった。


 代行人は逃げようとする管理人を見て興奮し管理人の服に手を入れようとした瞬間ドアが開いた。開いた瞬間人を殺しそうな勢いで代行人は駆けつけると二人を引き離した。引き離し管理人を庇うと代行人に拳骨を喰らわせた。


 「何するんだ。痛い!」

 「痛くしたんだよ。さっきから黙って聞いていたら何セクハラ視点だお前!」

 「セクハラじゃない。親子のスキンシップだ」

 「親子のスキンシップに息子の着ている服に手を入れる奴がどこにいるんだよ!」

 「ここにいるだろ」

 「開き直るな!」


と言い合っている代行人の会話を聞いた管理人は顔を赤くし声を叫んだ。


 「な、何で知ってるんですか!」


と聞くと代行人は眉間に皺を寄せて答えた。


 「だって俺はこいつと意識と視界を共有してるんだよ」

 「え?」

 「だから俺が見ている視界とこいつの視界は常に共有しているから思考と視界が嫌でもわかる。だから先ほどのことも俺に筒抜けだ」

 「え?それって...じゃあ今までのこと全部...」

 「そうだ」

 「.........」


代行人の話に恥ずかしさが頂点に達した管理人に


 「管理人、大丈夫か?俺さっきまで代行人と外で待ってたんだ。そしたら代行人が急にイラつきだして怖かったんだ。そしたら管理人のその..あっ!っていう声が聞こえてきて代行人が駆けつけたんだ。俺は代行人みたいに視覚とか共有してないから何が起きていたのか分からないから知らないけど大丈夫か?何かあったのか?」


と聞かれた管理人は先ほどのことを再び思いだし、叫んだ。心配し訳を聞いてくるフジニアの肩を掴み説得した。


 「大丈夫か管理人、何かあったのか?」

 「何もありません!」

 「でも、さっき叫んで何かあったのか?」

 「何もありません!」

 「でも、管理人が..」

 「何もありません!いいですよね?」

 「う、うん...そうか。ならいいんだ」

 「良かったです。ところで...この状況どうしましょうか?」

 「...カオスだな」


と二人は言いながら言い合っている代行人たちを見た。代行人の口喧嘩は二人が声を掛けるまで終わらなかった。


 審議の間で行われた審議から数時間が経った。二人を新たな異形に転生させる異形たちが様子を見に来たが言い合っている二人に睨まれ気絶した。気絶させたことに気づかずフジニアたちが声をかけてようやく気付いた二人は言い合いを止めた。


 「「あ、やばい/やべ」」

 「これ起きるかな?」

 「この異形たち大丈夫なのか?」

 「大丈夫だと思いたい所ではある。私たちもそろそろ行こう。転生してこれからやらないといけないことがたくさんあるし」

 「そうだな」


と顔を見合わせるとフジニアは拳を管理人に突き出した。


 「管理人、いやマジシャン。これからよろしくな」

 「よろしくお願いします、フジニア」


と言うと拳を合わせた。


 「そろそろ行きましょうか、フジニア」

 「ああ!」

 「代行人、私たちはそろそろ行きます」


と言うと代行人たちは二人を見ると手を振った。代行人たちは二人の傍に駆け寄った。


 「そうか、気をつけて行ってこいよ。お前ら!」

 「はい!」


と管理人が元気よく答えた。元師匠の代行人はフジニアの背後に立ち管理人に見えないように小さなナイフを突きつけて言った。


 「じゃあな。あく..フジニア、俺の息子を頼む」

 「え...あ、はい」

 「あと...息子に手を出したり何かやらかしたら今度こそ殺すからな」

 「は..い...」


ナイフを突きつけられたフジニアは冷汗をかきながら答えると満足して元師匠の代行人は離れ、視覚を共有している代行人はため息をついた。


 「それじゃあ、俺の力で送る。じゃあなお前ら」


と元師匠の代行人が言うと二人は一瞬で審議の間から転生の間に移動した。


 「「う、うわああ!」」

 「ここはどこだ?」

 「ここは転生の間です。異形を転生させる場所です」

 「じゃあ、あそこから一瞬で移動したのか...」

 「さすがと言う出来でしょうね」


と二人が感心していると気絶していた異形が目を醒ました。


 「「ここは転生の間...やっと仕事ができる」」


と言う異形の二人に思わずフジニアたちは心の中で謝った。


 ((何か...すみません))


と二人が心の中で謝ると異形の二人は心が読めるようで苦笑いした。


 「分かってくれるんですか!俺たちに優しく声を掛けてくれたのはあなたちが初めてですよ」

 「優しい異形の方もいるみたいで感動しました」

 「「あなた達、転生しても大丈夫です!僕たちが保証します」」


と二人の手を掴むと目から涙を流しながら言った。異形の二人の勢いに戸惑いながら二人は転生の間の中心部に立った。フジニアは少し心細く少し体が震えていた。


 「大丈夫ですよ。死ぬわけではありません。私も一緒ですから」

 「そ、そうだよな...でもまだ少し怖いんだ」

 「なら、私の手を握っていてください。目をつぶっても良いですよ。転生は一瞬ですから。目が覚めたらここではない場所にあなたは立っています。あなたは狭間の世界に私は地獄に居ます。少し地獄でやらなければいけないことがあるのであなたの傍を離れます。ですが直ぐに頭のもとを駆けつけます。不安ならきさらぎさんの書いた小説の他に私のこの本を渡しておきます」

 「これは管理人の..」

 「そうです。これに私と会えなくても通信できるようにしておきました。不安な時この本を開いてください。そうすれば困っている時や相談したい時に交信できます」

 「これを俺に...いいのか?」


と不安そうに聞くフジニアに頷いた。


 「...ありがとう。管理人」


とフジニアが礼を言うと転生の間が光り出した。転生する準備が整ったようだ。異形の二人はフジニアに声をかけ二人は頷いた。すると激しい光が輝き転生の間を包んだ。フジニアは管理人に声を掛けると目をつぶり手を握り、管理人も握り返した。光が消えると二人の姿はなかった。


 「ふうー無事転生完了です」

 「今回も上手くいって良かった」


と転生していった二人の立っていた場所を見つめる。


 「あの子達良い異形だった」

 「そうだね。あの子達が転生先でも上手くやっていけるといいね」

 「そうだな。これで休めるよー」

 「でも...これで良かったのかな?だって管理人って代行人の大切な..」

 「しーそれはタブーだ。代行人が転生を許したのなら俺たちはそれに従うだけだろ?」

 「でも...まあそうなんだけど...」

 「あまり深く考えるなよ。明日も死んだ異形たちを転生させるんだから」

 「分かってるよ。ただ...転生した彼らの未来を祈って...」


と異形が言うと転生の間を後にした。


 フジニアたちが無事に転生ししたことを確認した代行人たちは審議の間に立っていた。


 「行ったか...」

 「そうだな。でもこれで良かったのか?お前は管理人のことを手放す気はなかったんだろ?」

 「それはそうだがあいつはあいつだろ?あいつがあのフジニアとか言う悪魔を選んだのならそれを尊重するのが親ってもんだろ」

 「その割には中々渋った気がするが?」

 「ほっとけ...」


と言い近くの椅子に腰かけた元師匠の代行人は片方の頬に手を着きため息を吐いた。


 「そうため息つくなよ。俺たちの仕事は終わった。後はあいつらがやるだろ?俺たちはあいつらを信じて職務を全うするだけだ」

 「そうだな...はあ。息子が転生した直後に仕事か」

 「それが俺らの仕事だからな」

 「なら、転生するか?」


と言われた代行人は両手を上げて答えた。


 「そんなこと決まってるだろ、しない。そもそも俺たち代行人は転生することが出来ない。知ってるだろ?」

 「そうだな。俺たちの過去と比べたらフジニアの行った罪は可愛いもんだ」

 「あの大量虐殺の事だろ?」

 「そうだ。その件も合って俺たちはあの悪魔の罪を責めることはできないのも事実だろ?」

 「嫌なこと言うんだな」

 「まあ、事実だからな。過去は消えない..それは俺たちもあの二人も同じだろ?」

 「......」

 「だから見届けようぜ。あいつらの生き着く先に」

 「...分かった。それがお前との契約だからな」

 「そうだ...ってことで仕事しろ」

 「はいはい」


代行人はそう言うと顔を伏せながら片手で手を振った。呆れた代行人がため息を吐いた後に審議の間につけられたベルが鳴り響いた。


 「お、新しい仕事だ。やるぞ」

 「ええーもう仕事か。仕方ない、やるか」


と二人は言うと仕事に取り掛かった。


 



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