??章 ****駅_最後の終着駅
2_5(レコード:05堕天)
悪魔は生存者を探すが小悪魔たちは皆死んでいた。
「誰か!誰でもいい!生きているなら返事をしてくれ!」
「誰か!助け...」
「あっちの方から聞こえてくる!待ってろ!今行く」
声を荒げて悪魔は叫ぶと消えそうな声で助けを求める声が聞こえてきた。悪魔は声のする方へと走りまだ息のある小悪魔を見つけた。
「大丈夫か!」
「その...声は親分...」
「そうだ!来たぞ。もう大丈夫だ」
「ごめんなさい...俺達...こんなヘマを...」
「そんなことない!俺が今すぐ助けてやるから!」
「嬉しい...でも...俺のことはいいんです...俺はもう助からない...」
「何言ってるんだ!諦めるな!俺がお前を!」
「親分に...そう言ってもらえるだけども...俺は...幸せです...それに...もう...血を流しすぎたし...痺れてもう...感覚が無くって...」
「そんなこと...!!」
悪魔は小悪魔の容態をみて気づいてしまった。小悪魔は胸から大量の血を流し重傷だった。それだけではない小悪魔は...
「お前...体が!」
「はい...体の胸から下が無くて...どの道...出血が治まってもこの怪我じゃ...助かりません」
「そんな...俺が何とかする!そうだ!泉だ。聖なる泉に入れば傷も!きっと治る。だから」
「無駄ですよ...分かっているでしょう?俺は小悪魔です。小悪魔が聖なる泉に入ることはできません」
「でも...俺は...」
「親分が...特別なんです」
「でも分からないだろ!お前達だって変わったんだ!もしかしたらきっと!奇跡が起きれば!」
「あなたは本当に...やさしいんですね...そんなあなただから奇跡は起きたんですよ...俺じゃダメです」
「そんなことない!」
「親分...泣かないで..」
「泣いてない...」
「親分...お願いがあります。天使さんを助けて...ください」
「天使に何か起きたのか!」
「はい...全てを話します。ここで何が起きたのかを...」
小悪魔は悪魔に全てを話した。悪魔は小悪魔の話に耳を傾けた。
「親分...お願いです。この森を...天使さんを助けてください...きっと聖なる泉にいるはずです」
「聖なる泉に...分かった」
「親分...俺は俺たちは...親分の配下になってよかった...今までありがとうございました」
「何言ってるんだよ。それは俺の方こそ...」
悪魔はそう言いかけた時、小悪魔は目を閉じ悪魔に伸ばされた腕は力が抜け落ちた。悪魔は小悪魔の腕を掴み必死に声をかけたが反応は無かった。
「そんな...最後まで言わせてくれよ...」
悪魔は小悪魔の腕を掴み涙を流した。小悪魔たちが死んだ。その事実に心が押しつぶされそうだった。悪魔は小悪魔たちの亡骸を弔ってやりたかったが天使のことを託された。
「天使の安否が気になる...こいつらを弔う前に...聖なる泉に向わないと...せめてこれだけでも...」
悪魔は自身の羽を使って小悪魔たちに被せて聖なる泉のもとへ向かった。
「聖なる泉!天使!無事か!」
悪魔は走って聖なる泉のもとへと向かった。聖なる泉に向かう際に血の匂いがひどくなり、地面には大量の血がこびり付いていた。
「こんなところにも血が!急がないと...!!」
悪魔は地面に落ちている天使の羽を見て鳥肌が立った。
「天使の羽が...なんでここに...天使ー--!」
悪魔は死に物狂いで聖なる泉に向かうと聖なる泉は荒れ果てていた。美しく咲いていた花たちは枯れ果てていた。
「聖なる泉が...荒れ果てて...」
悪魔は歩きながら周りを見回すと聖なる泉の近くで蹲る天使を見つけた。天使に声を掛けようとしたが天使は聞こえておらず独り言を言っていた。
「な...きゃ...さなきゃ...」
「天使?どうしたんだ?」
「ころ...なきゃ...ころさ..きゃ...」
悪魔は心配になり天使の肩を掴んだ時、天使の言葉が聞こえる。
「どうしたんだ?天使!」
「殺さなきゃ...殺さなきゃ...」
「え...?殺すって...」
悪魔が驚いていた時、聖なる泉の声の焦った声が聞こえる。
『いけない...今すぐ彼から...天使から離れなさい...でないと取り返しがつかなくなります...彼は...』
「聖なる泉...何言って?」
『いいから早く逃げなさい...彼はもう堕ちて...』
聖なる泉の言うように天使の様子は可笑しく悪魔が立ち去ろうと下がった時に枯れ葉を踏み音が響く。その音に反応した天使はゆっくり悪魔に振り向いた。悪魔は嫌な予感がおそい、この場から逃げないといけないのに足がくすんで動けなかった。悪魔はこちらを振り返る天使を見る事しかできなかった。
「...僕がなんだって?」
『見てはいけません...逃げなさい...彼は...もうあなたの知っている天使ではない』
「ここにいたんだね?会いたかったよ。君に」
そう言い振り帰った天使の顔には大量の返り血がこびり付き口元から血が流れていた。天使が悪魔をみて笑うと口元から何かが落ちる。悪魔はその何かを見た時、感じたことのない恐怖と抑えられない吐き気に襲われその場で吐いた。
「どうしたの?いつもの君らしくないね~」
「う、うう...天使...お前...それは...」
「これ?いいよね~」
「!!」
天使が腕に持っているものを悪魔に見えると悪魔は再び吐いた。
「大丈夫?君はこれは初めてかな~」
「うう...やめろ...気持ち悪い...吐き気がする」
「そうかな~君も美味しいよ~食べる?」
「いるわけだろ!やめろよ」
「そうむきにならないでよ~なら僕た~べよう!」
「!!」
天使は腕に持っているものを見せつけて被りついた。天使がかぶりつくと血が飛び散り天使だけでなく地面を真っ赤な血で染めた。悪魔は天使がそれを食べ終えるまで黙ってみる事しかできなかった。天使が食べたそれは...人間の...
「お前...それは...人間の...」
「そう...おいしいよ!これは人間の生首」
「!!」
天使は悪魔の顔の側に人間の生首を見せる。
「なんで...こんなことを...」
「うん?首が嫌なら腕でもいいけど?」
「そうじゃない!なんで人間を食べてるんだ!可笑しいだろ!だって天使は人間を!」
「守るって?違うよ~僕らはそんな善人じゃない。天使は本来人間を導きけど僕に与えられたのはこの森を守ることだった。その際、掟として決して人間を傷つけたり殺したりしてはならない決まりがあったけど」
「なら...なんで殺した!お前はこんなことをするような奴じゃない!死にかけた小悪魔から全部聞いた。この森に何が起きたのかも全部!」
「聞いたなら分かるだろう?この森に人間たちがやってきた。君を殺すためにね...初めから僕たちは嵌められていたんだ。利籐に...彼に言われてはっきりしたよ。君を殺すのは人間じゃない...僕だって...」
「天使が...そんなわけないだろう!」
「僕もそう思ってた。でも君を殺そうととした人間たちを殺した時、その人間の悪意に触れたんだ。僕は思ってしまったんだ...君を殺したいって...」
「何言ってるんだ...冗談だろ?」
「僕がいつ君に冗談を言ったことがある?」
「君を殺したくないのに殺したい。君と過ごす内に君が欲しくてたまらなくなっていったんだ。そんなことはあってはいけないのに...」
天使は悪魔に少しずつ近づき悪魔は対称に後ろに下がる。次第に天使の白い羽は黒く染まり天使のわっかも破壊され形がギザギザした黒きわっかに変化した。
「天使!」
「羽が...わっかも...あがっ...ああああああああ 」
天使は羽やわっかが変化したことで激痛に襲われその場で蹲る。心配した悪魔が声をかけたが反応はない。
「天使!天使!」
「う、うううう...」
『もう彼は天使ではありません。彼は決して犯してはいけない禁忌を犯しました...禁忌を犯した彼は堕ちます』
「堕ちたらどうするんだ」
「堕ちた者を天使の言葉で堕天といいます...彼のような天使のことをこういいます...堕天使...と』
「堕天使...」
天使が罪や禁忌を犯すとその天使が堕ちることを堕天という。堕ちた天使は堕天使と呼ばれる。天使が堕天使になる際に本来あるべき翼と白いわっかが失われる。その激痛に襲われほとんどの天使はその痛みで死に至る。だが稀にその痛みに耐えて堕天使になる者がいる。堕天使はとても凶暴で自分の欲に誠実な異形である。もしも堕天使に出会ったらその異形や人間は死ぬ。天使が堕天使になる前に堕ちた天使がいたのならその天使を殺さなくてはならない。自分のためにも...その天使のためにもだ。
『あなたにお願いがあります...彼を...殺してください...彼が完全な堕天使になる前に...』
「俺が...殺す...」
悪魔は痛みに耐える天使を見た。天使は体から血を流し頭を押さえていた。
「あがっ...ああああああああああ!痛い!痛い」
「無理だ...俺は...天使を...殺せない...」
「お願い...俺を...殺...て」
胸を押さえながら泣いて助けを求める姿を見た悪魔は首を横に振る。体が震えて悪魔は涙が止まらない。
「お願い...俺を...殺して...助けて...」
堕天しかけた天使は悪魔を押し倒すと泣きながら言った。
「おそらくあなたは彼を殺せない。あなたは優しいから天使を助けようとするでしょう...あなたは堕天しかけた天使に殺される」
「奇跡は起きない...あなたは一体どうする?」
利籐は本を開き結末を確認した。堕天しかけた天使に殺されると書かれている。この事実が変わることは無い。持っている時計を確認するとその時計は止まった。
「終わったのか...これで僕の仕事は終わった」
利籐は起き上がると悪魔たちのいる場所へ向かう。悪魔の死を確認するまでが利籐の仕事なのだ。利籐はため息をつく。
「彼の死を確認しないと..でも分かっていても誰かが死ぬのは気分が悪い..」
爆発の起きた場所までいくと利籐は驚いた。小悪魔たちの死体がなくその死体は聖なる泉に集められていた。
「おかしい...小悪魔たちはなぜここに...!!」
利籐は聖なる泉に誰かがいることに気づく。堕天した天使だと思っていた利籐はその人物を見て衝撃を受けた。
「時計が...まさか!!なぜあなたが生きているのですか...悪魔」
「利籐...」
聖なる泉にいたのは死んだはずの悪魔がだった。悪魔は小悪魔の骸を持ち立っていた。利籐の持っている時計が再び動き出し時を刻みだす。驚きで声もでない利籐に悪魔は悲しく微笑みかけた。
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