??章 ****駅_最後の終着駅
2_2(レコード:02人間)
悪魔が天使と出会い森に住み始めてから数年の時が経った。悪魔は不器用ながら打ち解けて小悪魔たちや聖なる泉にも心を開いていった。
「おはよう!今日もいい天気だね」
「相変わらず早いな...」
「違いますよ親分!天使さんさんが規則正しいんです。親分が不規則なんですよ~」
「な!そんなことない..」
『いいえ...そんなことありますよ...あなたは少したるみすぎです』
「聖なる泉までそういうのか...分かったよ...気を付ける」
「なんて~僕も小悪魔たちもさっき起きたんだけどね~!」
「皆だって変わらないじゃないか...」
「ごめんごめん!冗談だって」
「そう膨れるなよ~」
顔を膨らました悪魔の頬を天使は突っつき小悪魔たちも触ろうとしたが悪魔に腕を掴まれ真顔で見つめられた。
「いや...あの...親分...」
「うん?なんだ?その手は?」
「俺たちも親分に触れ...たいな...って」
「何がしたいって?」
「...あの...」
「なんだ?」
「えっと...」
悪魔にじーと顔を見られた小悪魔たちは固まり冷汗が止まらなかった。小悪魔は動けず小動物のように小さくなり天使が助け舟を出した。
「もう、君の冗談は小悪魔たちには通じないんだからね」
「え?冗談だったんですか!」
「そうだけど...」
「え...え!冗談だったんですか!」
「さっきのお返しだ」
「酷いっすよ!親分」
「さてー今日もこの森を見守るとするか」
「そうだね。行こう!」
「え...親分、無視ですか?」
「......」
「親分ー無視しないで!」
悪魔は天使を連れて先に森の奥へ行こうとして小悪魔たちは腕を掴んで引き留めた。悪魔は掴んだ小悪魔ごと引きずって森の中へ入っていった。
『彼はますます悪魔らしくなってきたな...』
と、様子を見ていた聖なる泉はそう呟いた。
森の見回りの仕事は天使が一人で行っていたが、今では悪魔と小悪魔と分散して行っている。今日も森の見回りをした悪魔たちは森の入り口へ向かう。
「そう言えば見回りをする前に聖なる泉に何か言われてたよね?なんて言われたの?」
「詳しくはよくわからない..俺が聖なる泉に言われたのはこの森に人間が来るということだけだ」
「人間がこの森に来る?」
「それは本当ですか親分。ここ何百年も人間なんて一人も来なかったのに?」
「そうなんだ..聖なる泉も驚いていたみたいなんだ...人間の気配を感知したらしくて...」
「それで親分に確かめてほしいってことですか」
「そうみたいだね!」
「親分なら適任ですね。親分強いし見た目怖いから!」
「なんか言ったか?」
「何でもありません!」
「君たち仲いいね」
「本当ですか!俺たちはそう見えます?」
「あー見える見える」
「酷いっすよ!その反応思ってないでしょ!親分!」
「思ってるぞ...お前らは頼りになる子分たちだからな」
「親分...照れますって~」
悪魔に言われたことが相当嬉しかったのか悪魔たちは喜んでいた。その姿を見た悪魔は思わず天使にしか聞こえない声で言う。
「なあ?あいつら俺の子分になったとはいえ変わりすぎないか...前はもっと殺意があって殺すぞと言わんばかりの目をしてなのに...」
「そうだね。今は何と言うか...小型犬が大型犬に尻尾を振っているようにしか見えない」
二人は喜ぶ小悪魔たちを見つめた。天使は小悪魔たちの頭を撫でた。
「子犬というより子猫だな...」
悪魔はそう呟いた。悪魔がそう呟いた時、後ろから足跡が聞こえ天使たちに合図する。天使たちも入り口を見ると人間がやってきた。
「さて、そろそろか...来たぞ」
「本当にきた!人間が」
「聖なる泉の言った通りだ」
「それにしても想像してたのと違う。もっと..」
「もっといかつい人間でも想像していましたか?」
「え!なんで分かるんですか!親分この人凄い人ですよ!」
「少し落ち着け...」
「元気がいいんですね。異形の皆さんは人間と聞くと乱暴なイメージをもつ方も多いんですよ」
「すみません。俺たち...」
「いえ、いいんですよ」
「あんたが人間...」
「おや?あなたは人間は初めてですか?」
「ああ...初めて見た。これが...人間」
「あなたは悪魔ですか?」
「確かに俺は悪魔だが...人間ってそういうの分かるのか?」
「全員が分かるわけではないんです。人間にも分かる者と分からない者もいます。しかし大前提として見えない者のほうが遥かに多いでしょう」
「そうなんですね!凄いですよ!親分!」
「そうだな...なあ?その手に持っているものはなんだ?」
「これは本です。気になりますか?」
「ああ...」
「見て見ますか?」
「いいのか...?」
「はい。どうぞ」
人間は悪魔に本を手渡そうとしたが天使が間に入り止めた。小悪魔たちも悪魔も天使が止めると思わず驚いた。
「え?どうしたんですか天使さん!」
「......」
「なんで止めるんだよ...天使?」
「...ダメだよ。人間なんて信用できない。天使は人間の愚かさや醜さを知ってる。人間ほど醜くて信用できない生き物はいないよ。それに僕は...彼を信用できない。ねえ?聞くけど君は何でここに来たの?その目的は?僕らのことをどこまで知ってるの?君は一体何者なの?」
天使は敵意を向け人間を睨んだ。睨まれた人間は怯むことなく、二人は見つめ合い、人間の方が手を挙げた。
「降参です。あなたの言う通りです。人間は醜い生き物です。あなた方異形から見たらそうでしょう。名前も名乗らず大変申し訳ございませんでした。申し遅れました。僕の名前は利籐と言います。よろしくお願いします」
人間は悪魔たちに向って手を差し出したが天使がその手を振り払った。
「俺は悪魔だ」
「俺たちは小悪魔です」
「天使だ...人間の手なんか握る必要はない」
「なあ?さっきからどうしたんだよ...」
「彼は人間だよ!」
「そうだけど...さっきからその態度は良くないんじゃないか?利籐は何も悪いことはしてないだろ?」
「それは今だけだよ。人間なんて碌なもんじゃない。後から後悔するよ。きっと...僕は君たちに傷ついて欲しくないんだ。異形と違って人間は本当に醜いんだ。僕は一度聖なる泉に人間が来たと伝えてくるよ」
「分かりました!気を付けてくださいね。天使さん!」
「うん。じゃあ行ってくる。利籐とか言ったけ?後で話がある。行っておくけどこの森で悪さしたり彼らに悪さをしたら許さないからね」
「はい。肝に銘じておきます」
天使は人間を人睨みすると聖なる泉のもとへ向かった。悪魔は天使のことを謝ると利籐は笑って言った。
「いえいえ。彼の反応が正しい反応ですから。あなたは初めてなんですよね」
「そうなんだ..天使から人間のことを聞いていたんだがあんたは悪い奴じゃやなさそうだな」
「利籐でいいですよ」
「じゃあ利籐って呼ぶな...森の中を案内するよ...」
「いいんですか?ありがとうございます」
「俺たちも教えますよ!ついてきてください利籐さん!」
「ありがとうございます」
悪魔と小悪魔は人間・利籐と連れて森の中へ入り案内した。
悪魔たちが案内をしている時、天使は聖なる泉と人間について話していた。
『落ち着かないのですか...天使よ...』
「...あの人間は信用できない。悪魔たちは人間の愚かさ醜さを知らない。だから...」
『そうですね...長い年月の間...人間たちを見てきましたがあれほど醜い生き物はいません...それは事実です』
「だったらなぜこの森に人間を入れたんですか!人間は厄災しか起こしません!あの人間は僕たちに不幸をもたらします」
『そうかも知れません...ただ...悪い異形もいるように良い人間もいるのは事実...』
「なら見定めろってことですか?人間は嫌い...あいつらは血も涙もない...醜い生き物なんだ!あいつのせいで...あいつらのせいで..あいつらは仲間を殺した...」
『あの人間は正直私でも分かりません...しかし聖なる泉が揺れているのです...これから何かが起きようとしている...天使よ。彼の傍にいてあげなさい...さきほどあなたが来る前に聖なる泉に彼が映りました」
「それって!」
『彼はもうじき死ぬ...』
聖なる泉が揺れた時に人間か異形が映ると映った生き物は死ぬ。聖なる泉に悪魔の姿が映ったのだ。それを知った天使は悪魔のもとへ駆けつけ人間を追い出したかったが出来なかった。悪魔たちが聖なる泉に人間・利籐を案内してここまで来てしまったからだ。聖なる泉に言われ悪魔たちは席をはずした。天使も利籐の目的を知りたいが悪魔のことが心配で天使のその場から離れた。天使が居なくなったことを確認した利籐は聖なる泉と話し始めた。
「僕の名は利籐と申します。名無しという村で書生をやっている者です」
『書生ですか...聞いたことがあります...それで書生のあなたがなぜこの森に来たのですか...?』
「見届けるためですよ」
『見届けるとは...?』
「僕たち書生の仕事はこれから起こる真実を見届けることが仕事です」
『そうですか...何を見届けるのです?』
「この森には悪魔がいますよね?」
『いますが...』
「僕の仕事は彼がこの森で人間たちによって殺されるところを見届けることです。聖なる泉にも映ったでしょう?」
『気づいていたのですか...』
「はい。彼の死は決定事項です。それを止めることはできません。僕は彼の死を見届けたらこの森を去りましょう。安心してください!あなたも天使も小悪魔たちも誰一人傷つき死ぬことはありません。彼が死ねばいいのです」
『...やはり人間は醜い生き物ですね』
「ええ...それが仕事ですから。彼は...あの悪魔は死ぬ」
利籐はそう言うと笑った。聖なる泉は何も言うことなく利籐は悪魔たちの所へ向かった。聖なる泉と人間の会話を小さな二匹の小悪魔が聞いてしまい急いで悪魔の元へ向かった。
「たいへんだ!パパが死んじゃうよ」
「パパが死んじゃう!急いで伝えないと!」
「それは無理だよ...」
「え?」
「人間!」
「本当はこんなことしたくないけど僕の仕事を邪魔されたくないんだ。だから...ごめんね」
二匹の後ろには人間の利籐が立っていた。まだ幼い二匹の小悪魔は利籐を怖がりその場から動くことが出来なかった。利籐は謝ると持っている本を掲げた。すると本が一瞬光って二匹の小悪魔は消えてしまった。
「ごめんね。君たちを殺すのは決定事項なんだ。恨むなら自分の人生を恨んでね。さて...後24時間後だ。あと24時間後に彼は死ぬ。僕もそろそろ動こうかな...」
利籐はそう言うと本をしまい森の中を歩き出した。悪魔が死ぬまで後...24時間
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