??章 ****駅_最後の終着駅

2_1(レコード:01出会い)

 異形たちが住んでいた森から立ち去った悪魔は襲われた傷口が開き大量の血が流れ死にかけていた。歩くことも辛くなり立つことも出来なくなった悪魔はその場で倒れてしまう。


 「体が...動かない...俺は...死ぬのか...」


激しい痛みと睡魔に襲われた悪魔は目を閉じて眠りについた。悪魔は夢の中で異形の親子の夢を見た。その親子は楽しそうに幸せそうに手を繋いでいた。顔は見えなかったが幸せそうで悪魔は羨ましいと思った。悪魔が寂しそうに見ていることに気が付いたのか子供の異形は悪魔に近づいた。顔を見た時、悪魔は驚いた。その異形の子供は自分自身だったからだ。


 「...夢か。俺に親なんて...家族なんていないのに...」


 目を覚ました悪魔は夢とは違う現実にため息をついた。


 「そんな...甘くないよな...」


悪魔はそう言うとゆっくり起き上がった。少し眠っていたせいか体が少し楽になった。悪魔はこれからどうしようかと考えていた時、誰かの悲鳴が聞こえた。その悲鳴が聞こえた悪魔は気が付いたら体が動いていた。駆けつけると罠に引っ掛かり暴れた異形が二体の異形に襲われていた。


 「誰か!助けて!」

 「おい!大人しくしろ」

 「大人しくしていれば楽に殺してやる」

 「嫌だ...誰か!助け...殺される」

 「!!」


その言葉を聞いた時、悪魔は自分が襲われ死にかけたことを思い出した。ここで助けなかったらこの異形は殺されると思った悪魔は二体の異形に声をかけた。


 「おい...何してる?」

 「なんだよ?邪魔すんな」

 「お前もこいつを食いたいのか?悪いが俺たちがこいつを食い殺すから..」

 「なあ...俺は何してるんだって聞いたんだ」

 「!!」

 「こ、こいつ...悪魔だ!」

 「なに?悪魔だと!」

 「え...悪魔...」

 「こいつに何をしてるんだってさっきから聞いてるんだ。殺すって言ったか...こいつを殺すって」

 「ひぃ!悪かった!許してくれ」

 「俺たち知らなかったなんだ!お前の食事だって!だから許して...」

 「失せろ...」

 「え?今なんて...」

 「失せろって言ったなんだ...俺たちの前から消えろ...こいつを食うことも殺すことも許さない。もし同じことをすれば俺が....殺す。分かったな?」

 「は、はい!」

 「すみませんでした!」


悪魔に睨まれた異形たちは謝って逃げていった。


 「...あの...助けてくれてあり..」

 「動くな...この罠をとく」

 「ありがとう...」

 「礼はいい。これでよし...どうだ?」

 「ありがとう!」


助けられた異形は感謝し自分の姿を悪魔に見せた。それは白き気高い翼にその異形の象徴であるわっかがあった。


 「驚いた...お前は...天使だったんだな」

 「助けてくれてありがとう...代わりにお礼をし...あれ...」

 「おい!しっかりしろ。あいつらにやられたのか」

 「うん。天使は悪魔や小悪魔たちとは犬猿の仲だから...天使を襲って食らう小悪魔たちが多くて...」

 「そうなのか?」

 「そう...だから君が来た時正直終わったって思ったよ。小悪魔は悪魔と違い力はそこまでじゃなくても悪知恵がすごくて...油断してたんだ」

 「そうだったのか...とにかくお前の傷を治さないと」

 「それをいうなら君の方が怪我がひどくて..」

 「いいから教えろ」

 「ここから少し歩くよ?怪我のせいでうまく飛べなくて」

 「翼も怪我してるな...なら...乗り心地は悪いが許してくれ...」

 「え...傷が、血だって出てるよ!」

 「そこに行けばお前は治るんだろ?おぶってやるから場所だけ教えろ」

 「...ありがとう」


天使をおぶった悪魔は場所を指示されながら歩き出した。道中、傷が開き血が流れて天使は気が気でなかった。血の匂いと天使に引き寄せられたが天使を抱えているのが悪魔だと気づきと異形たちは襲うことは出来なかった。悪魔には上下関係が存在し強い奴には逆らわないというルールがある。悪魔はそのルールを知らなかったがこちらの様子を伺うも襲ってこないので都合が良かった。


 「ここだよ...この聖なる泉につかれば...助か...」

 「どうした?天使?おい!しっかりしろ!」


 天使に案内され聖なる泉についたものの天使が小悪魔の罠で傷ついた傷は蝕まれていた。どうすればいいのか分からない悪魔は近くの異形たちに助けを求めたが小悪魔ばかりで天使の異形が他にいない。困ってしまった悪魔に聖なる泉は答えてくれた。


 『聞きなさい..悪魔よ...その天使をこの聖なる泉につかればこの天使は助かるでしょう...小悪魔たちはこの場所に近寄ることが出来ません...安心してください...しかし...あなたは悪魔...悪魔がこの聖なる泉に入れば苦しみ死んでしまうので...決して入っては..』

 「なら、天使がつかれば助かるんだな」

 『ですが...待ちなさい...自殺行為です...やめなさい』

 「つべこべ言ってる場合じゃないんだろ?このままだとこの天使は死ぬ。ならこれしかない!」


聖なる泉は止めたが悪魔は死を顧みず天使を抱えて聖なる泉に飛び込んだ。聖なる泉は悲鳴をあげ周りにいた小悪魔たちも驚きの声を上げた。


 「あいつ...正気か!」

 「悪魔が聖なる泉に飛び込んだ」

 「自殺行為だ」

 「死んじまうぞ!」

 『何という事を...』


悪魔は天使と共に深い泉の底へ落ちていく。悪魔は天使の傷が癒されいく様子を見て安心した。


 「これで...天使は...大丈夫だ...」


悪魔が気を失った後、完全に傷が癒えた天使は意識を取り戻すと自分の傷が癒えている事と悪魔が自分を抱えて気を失っている事を理解し悪魔を抱きしめた。


 「死なせない!助けてもらった命...今度は僕が君を助ける!」


天使はそう言うと翼を広げて地上を目指し飛んだ。一方、聖なる泉も小悪魔たちも悪魔が死んでしまったと思い悲しんでいた。突然、聖なる泉から悪魔を抱きしめた天使が飛び出してきたときは皆驚いた。


 「な、なんだ!」

 「天使が泉から飛び出してきたー!」


天使は聖なる泉に助けを求めた。


 「聖なる泉よ。聞いてください!彼は僕を助けてくれたんです!彼を助けてください!」

 『確かに彼は他の悪魔や小悪魔とは違い優しい悪魔です。しかし...私では悪しき心を持たない異形や天使を癒すことは出来ても悪魔は癒すことはできません』

 「そんな...ならどうしたら!彼はこんなに怪我して死にかけているのに!」

 『そうですね...こんなに怪我を...天使よ...私たちは夢を見ているのでしょうか...彼の傷が治っています』

 「え...本当だ」

 『こんな...奇跡があるのですね...彼は悪魔ですが悪しき心を持たず心が綺麗なのでしょう...でなければ泉に落ちた時点で死んでしまうでしょうし傷の治ることはありません...彼に感謝をしなければなりませんね』

 「はい!ありがとう...」


気を失った悪魔を天使は抱きしめてそう礼を言った。


 目を覚ました悪魔に気づいた天使は喜び話しかけた。


 「う...ううん...あれ...俺は...」

 「目が覚めたみたいだね!よかった!君は気を失ってから全然目を覚まさないから死んじゃったと思ったよ」

 「俺は生きてるのか?泉に飛び込んで死んだんじゃ...」

 『それについては私が説明しましょう...あなたはこの天使を命を救いました...それだけではなく危険を顧みず泉に飛び込みました...本来ならば死んでしまうでしょう...しかし悪しき心を持たない者や心が綺麗な者は別です...あなたは心が綺麗なのでしょう...聖なる泉の力が効き傷が癒えることが出来たんです』

 「そうだったのか...でも奇跡だ...あの時死んだかと思った」

 「僕も...命の恩人を殺したかと思ったよ」

 「それは悪いことをしたな」

 「全然!礼と言ったらなんだけど助けてくれたお礼がしたいんだ」

 「お礼?別に俺は見返りが欲しくて助けたわけじゃない」

 「分かってるよ!でも僕がしたいんだ」


悪魔は言うのを躊躇ったがもし叶うならと思い恐る恐る言うと天使は一瞬驚いた。悪魔はまずいことを言ってしまったのかと思い焦っていたが天使

の一言で気が抜けた。


 「なら...居場所が欲しい...俺には家族も帰る家もない...俺は悪魔だから...その...」

 「ならこの森に住みなよ!」

 「ふぇ!いいのか...」

 「ふぇって...あはははははは」

 「わ、笑うな!」

 「ごめんごめん...ってきり魂をよこせって言われたらどうしようって思って!」

 「魂って...俺..人も異形の魂も食ったことないんだけど」

 「そ、そうなの!でも安心した...君が優しいやつで...聖なる泉が癒すわけだよ」

 「そうか?」

 「そう!それと...後ろを見て」


後ろを見ると小悪魔たちが集結しこちらを見ていた。


 「後ろ?小悪魔たちか?」

 「そう。彼らはね、君の危険を顧みず僕を助ける姿を見て感化されたんだって」

 「だから?」

 「もう悪さはしないから自分たちを君の配下に加えてほしいんだって」

 「配下...え?冗談だろ」

 『もともと悪魔や小悪魔には強さの上下関係があります...強い者に従う異形ですがあなたの天使を助ける姿を見て彼らも強さだけでなく心から忠誠を誓ったのですよ...』


聖なる泉にそう言われたがさっきまで天使を襲おって殺そうとしていた異形たちが急に配下に加えてくれて言われ悪魔は混乱した。


 「そんなこと急に言われたって...お前たちも困るよな?」

 「俺たちあんたに一生ついていきます!」

 「俺たちを配下に加えてください!」

 「え...」


悪魔は反応に困ったが小悪魔たちが悪魔をキラキラする目で見つめられ折れて配下に加えることにした。配下に加えた小悪魔たちに天使はむやみに襲わないことを約束させた。


 「いいのか?小悪魔たちに傷つけられただろ?」

 「あの後...二体の小悪魔が首が取れるぐらい謝りにきたんだ。自分がしたことに反省してたし二度としないって自分から言ってたから許してあげたんだけど二体の小悪魔が...切腹しますって言いだして死のうとするから止めるのに苦労したよ。死ぬんじゃなく君のために命をかけてくれって言ったら納得したんだ」

 「そんなことが...俺が気を失っている間に大変だったんだな」

 「うんうん!大丈夫。むしろ面白かったから」

 「面白かったて...お前」

 「冗談だよ!」

 「お前が言うと冗談に聞こえない」


天使と悪魔はそう言い合い笑う。天使が悪魔に手を差し出した。


 「これからよろしくね!」

 「これからよろしくな...」


と悪魔は言って手を掴んだ。孤独で居場所がない悪魔は一人の天使と出会った..そして..多くの小悪魔たちを配下にし...聖なる泉と天使とともにこの森に住みことになった。この日...初めて悪魔の居場所が出来た。

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