??章 ****駅_最後の終着駅
2.(レコード:00誕生)
車掌と****の記憶を辿るレコードが再生された。レコードは動き出し映像が徐々に映し出される。
_死神は人の願いによって生まれる異形である。死神の主な仕事は人の行いから善悪を見定め善を導き、悪の魂を裁くことだ。死神は自然に生まれ来る種族ではない。死神になるにはある条件が必要である。その条件とは;悪魔が過去に償いきれない罪・大罪を犯すこと;が条件である_
しかし...未だにその大罪を犯した者はいない...はずだった。
約???年前に一人の悪魔が誕生した。その悪魔は生まれながらに力が強く人も異形も上位の力を持つものでないと姿を目視できなかった。その悪魔は黒くゆがんで見えることや自身が悪魔のせいか誰も悪魔に近づこうとしなかった。悪魔はそのことに気づいていたが気づかないふりをし続けた。この悪魔の存在は多くの異形でも知られ噂されていた。
「いたわ...あの悪魔よ。不気味ね」
「本当だわ...」
「...」
「やだ、こっち見たわ!」
「行きましょう!」
「...此処にも俺の居場所はない...」
悪魔は呟くと悲しそうに歩き出した。悪魔に親はいない。単体で生まれてくるため仲間もいるわけでもない。そして悪魔は強力な力を持ち、人のみでなく異形の魂を捕食することが出来る。
「悪魔に魂を取られる」
と皆口々に言い子供の異形や大人の異形たちは悪魔のことを危険な異形であり醜い象徴だと教えた。そのせいだろう...ある日子ども異形は悪魔に時々石を投げたり燃やそうとする者もあらわれた。
「痛い!何するんだ」
「お前悪魔なんだろ?お前悪い奴なんだってな」
「俺たちが退治してやるよ」
「いっ痛い!」
子どもの異形は悪魔の尻尾を踏みつけ倒れた所を押さえ何度も痛めつけた。悪魔は痛みに耐えていた。
「う...うう...」
悪魔はもう動けず息をするのがやっとだった。恐る恐る見上げるた。
「うわ!きも!見ろよ~こいつまだ生きてるぞ」
「あんなに痛めつけたのに生きてるとか...化け物かよ」
「だって悪魔だろ?このくらいで死なないよ」
「どうする?」
「このまま生かしたってこいつ悪魔だもん。復讐されたらたまんないよ」
「なら...この悪魔殺す?」
「!!」
「そうだね!この悪魔を..]
「「「「殺そう」」」」
悪魔は殺されることが分かると暴れたが押さえつけられる。
「おいおい動くなって~」
「お前が動いたら俺たち殺せないだろ?」
「やめ...ろ...」
「なんで?お前悪魔だろう?悪魔なんだから悪い奴に決まってるだろ?悪い奴を退治して何が悪いんだよ」
「俺は...何も...悪いことなんて...してな...」
異形の子供の一人が悪魔の髪を掴んだ。
「何言ってんだよ?お前がいるから悪いんだろ?」
「母さんが言ってたぞ!お前、人だけじゃなくて異形の魂を食べれるんだろう?」
「こいつどうせたくさん異形の魂を食ってるんだ!」
「そうに決まってる!」
「待って...俺は...人も...異形の...魂なんて...食べたこと...なんか...」
「悪魔のことなんか信じられるかよ」
「「そうだそうだ!」」
「待って...俺は...うぐっ...ああああああああああああああ」
悪魔は片方の目をくり抜かれて焼かれた。血が大量に流れ全身に激痛が悪魔を襲った。悪魔は自分を殺そうとする異形の子供たちを見た。
_俺が悪魔だって...俺は人も異形も傷つけたことは無いし魂なんて食べたことなんかない...どうして俺がこんな目に合わなくちゃいけないんだ...俺が悪魔だからこんな目に合うのか...こいつらは本気で俺を殺そうとしている。このままじゃ俺はこいつらに...殺される。俺のことを悪魔というこいつらは平気で傷つける。こいつらの方が悪魔なんだ_
死にかけている悪魔は死にかけている自分を見て笑う異形の子供たちに恐怖を覚えた。
「めろ...」
「うん?こいつなんか言ってるぞ」
「やめろ...やめろ...」
「やめろだって~!」
「殺される...やめろ...やめろ!」
悪魔は自分が傷つけられたことを何度ども何度も思い出す。殺されるかもしれないという恐怖に襲われる。異形たちが近づいてきたことに気づいた悪魔は殺される思い片腕で薙ぎ払った。悪魔はその後意識を失った。
「う...ううん?あれ...俺...生きて...いっっ...」
悪魔は目を覚ますと激しい痛みに襲われた。痛めつけられた傷が痛むのだ。痛みに耐えている時悪魔は自分が襲われたことを思い出した。
「そうだ...あいつらに襲われて...あれからどうな..え?森が...」
悪魔は周りを見渡すと自分がいた森自体が無くなっていた。
「嘘だ...なんで...俺はあの森にいたはずなのに...どうして森が無くなってるんだ...」
悪魔が驚いていた時、異形たちがやってきて悪魔を取り囲んだ。
「いたぞ!悪魔め」
「森を吹っ飛ばしよって」
「待ってくれ...俺は!」
「この子達から聞いたよ!あんたが森で悪さをしてたんだって!」
「俺は何もしてない!」
「嘘つけ!うちの子が嘘をついたって言うの!」
「俺はこいつらに襲われたんだ!何も悪い事なんかしてないのに」
「黙れ!悪魔のいう事など信じられるか」
「そうだ!」
「子どもが傷つけられたんだ」
「俺達だって黙っていられるか!」
「子どもたちの敵だ!」
「殺せ!」
誰かがそう言うと皆、狂ったように叫んだ。
「そうよ!殺せ」
「殺して!」
「殺せ!」
殺せと叫ぶ声が延々と聞こえてくる。悪魔はもうどうすることが出来なかった。それに追い打ちをかけるように異形の子供が大人たちに言う。
「こいつは酷いんだ...自分が悪いのに...俺たちのせいにして...暴れて...そのせいで俺は頭を怪我したし、他の皆だって怪我をしたんだよ...殺して...この悪魔を殺してよ...」
「な...俺は...そんなこと...!!」
異形の子供は母親の後ろに隠れると悪魔を見てにやけた。自分のしたことに嘘をつき全て悪魔のせいにして、大人が悪魔を殺すのを今は今かと待っていた。そのことに気づいた悪魔はもうどうすることも出来ず殺されるのを待つことにした。
_俺はただ自分の居場所が欲しかっただけなのに...もういいや...早く..殺してくれ_
生きることをあきらめた悪魔は自分に振り上げられた釜を呆然と見上げた。振り上げられた釜は悪魔に届くことは無く頭に触れる寸前で止められた。悪魔は不振に異形たちを見ると彼らは驚いていた。異形の老人が振り上げた鎌を掴み止めたからだ。
「何で止めるんですか!」
「そうですよ。こいつは悪魔ですよ」
「今殺しておかないと皆こいつに殺されます」
異形の老人は異形たちを見ると深いため息をつき悪魔のに触れ怪我の手当てをした。
「なんで手当てを!」
「こいつの触れたら!」
「お前たち...黙らんかい!先ほどからなんじゃお前たちは悪魔悪魔と騒々しい!」
「しかし...」
「彼を見て分からぬ馬鹿者!悪魔だからと決めつけて傷つける。それはいじめや差別と何ら変わらんではないか!彼を見よ!深手を負い傷ついているが子供らを見て見よ。彼に襲われているのならその程度の怪我ではすまぬ。その証拠に彼の腕には子供らを襲った形跡はない。襲ったのなら怪我など彼が追うことなどない。彼は子供らを襲わず無抵抗だったのだ」
「ならなぜ我らの森がこのようなことになってしまったのですか?現に子供達だって」
「子供らの傷は森を吹き飛ばした際に怪我をしたので自業自得だ。わしには分かる。彼は襲われ死にかけて抵抗したのだ。わしだって襲われ死にかけたら抵抗する。それと同じことだ」
異形の老人は大人の異形たちに向かって言うと悪魔に頭を下げた。
「よいか!お前たちがしたことは決して許されることではない!それを肝に銘じよ。悪魔だからと決めつけて傷つけるなど愚か者のすることだ」
「本当に申し訳ない!この森に住むわしら異形たちが君にしたことは決して許されないことだ。謝っても謝り切れない...だが、謝らせてくれ...本当に申し訳ありませんでした」
「なんで...あなたは...なにも...悪くな..」
「いいや、この森に住む異形をまとめる上でこの森の異形たちがしたことはわしの責任だ。こんなことが二度と起こらぬように異形たちに話し合う。わしは君の怪我癒す力はない。だから簡易的な手当てしかできない。今までの非礼をこれで許してほしい」
異形の老人は悪魔の怪我を手当てをした後に悪魔を抱きしめた。
「本当に済まない...傷ついた君にこんなことを言うのは酷な事は分かっている...君にお願いがある。ここら立ち去ってくれないか?君がここにおればこの森の異形たちに傷つけられ、今は助かったが殺されるこもしれない。森に住む異形たちはまだ納得していない者も多い。わしは傷つけられる君と君を傷つける異形たちを見たくない。君は優しい子だ。子どもとはいえ傷つけられて死にかけたのに誰一人傷つけることなかった。この森のことは気に無くていい...わしに出来ることはこのくらいだ」
「無事でよかった...」
傷つけられた悪魔は抱きしめられ初めて言われた言葉に涙が止まらなかった。異形の老人は声を押し殺して泣いた悪魔の背中を優しく撫でた。悪魔が泣き止むまで異形たちは黙って見ていた。もう誰も悪魔のことを責める異形はこの森にいなかった。悪魔のことを傷つけた異形の子供たちと殺そうとした異形たちは自分がしてしまったことに気づいた。しかし...悪魔に声をかけることが出来ず悪魔は異形の老人にお辞儀をした後、森から立ち去った。
「化け物なんかじゃなかった..悪魔は俺たちの方だったんだ」
と、森に住む異形たちが言った言葉は悪魔には聞こえなかった。
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