十章 過去は厄災を写す

十章_過去は厄災を写す

1.

 あの後全ての乗客の前世を解明し列車はある駅に止まった。


 『え~映しみ~映しみ~列車が止まりま~す』


とアナウンスが流れる。


 「映しみ駅いよいよですね」

 「映しみ駅?映しみ駅って何かあるの?」

 「映しみ駅はね~この列車の最後の駅って言われてるのよ。全ての魂の記憶をこの映しみ駅で保存するの。それがこの駅なの!これでもうこの列車はおしまいね~」

 「無くなるの?」

 「そうではなくただ保存するだけですよ。ほら、何事にも休息は必要ですから。どうやら来たようですね。魂を保存する写真家が」

 「魂を保存する写真家...」


車掌がそう言った直後誰かが列車に乗車してくる。大人しそうな老人という印象だった。頭には角が入ってランプを持っていた。


 「これはこれは皆さまお揃いで..ご足労いただき誠にありがとうございます。皆さま、お疲れ様でした。次の役目までお寛ぎください」


写真家はそう言い全員に挨拶をした後車掌室へ向かった。


 「いいこと教えてあげる。あのランプで記録するんだって~でも僕らはその様子を見れないんだよ~!写真家もケチだよね」

 「それは仕事ですから。彼にも彼なりの仕事の仕方があるのですよ」

 「それもそうね~私はバーでお酒の確認をしたら休もうかしら」

 「なら、僕も下ごしらえしようかな~ネムいこう」

 「コクコク...」

 「なら、私は一杯やりますかね..その後様子を確認しますか」


グリンたちは料理長室に、車掌とカーナはバーに行く残った私は写真家が気になり急いで追いかけた。


  「ここか?入りまーす」


 一応ノックをした後ドアを開けた。中では巨大なフィルムから映像が映し出されていた。写真家はその映像を眺めていたが****が入ってきて焦りだした。


 「な、なぜここに?行けません!早く出てください」

 「気になってごめんなさい。どうして見ちゃダメなの?」 

 「それは...とにかく見ていいのは管理を任された私と車掌様や地獄を任されている閻魔様、マジシャン様なんです!とにかくこの部屋から出て」

 「つべこべ言わずに教えてあげればいいのに」

 「「!!」」

 「その声...堕天使?」


突然堕天使が車掌室に現れた。


 「な、お前なぜここに?」

 「堅いこと言う言わないでよー。教えてあげる。死者に記憶を見せると混乱してしまうんだ」

 「お前、どこに乗っている!早く降りなさい」


堕天使は写真家を嘲笑った。数分後に保存が終わったフィルムを取り出し、見せつけた。


 「それはお前が触れていいものではない!」

 「うるさいな~これで保存は終わったんだからいいでしょ?あんたの本来の仕事は終わった。そうだ!君にいいもの見せてやるよ。これな~んだ?」

 「それは君のフィルム」

 「え...私のフィルム...どうして...」

 「見たいだろう~君のフィルム。君がいかにして死んだのか...これを見たら分かるよ」

 「いけません!死者に勝手にフィルムを見せては!それに正しい向きに入れないと危険なんです!」


写真家が止めようとしたが聞く耳を持たない堕天使は裏向きでフィルムを入れ再生させた。


 「ほら~よく見て!見せてあげるよ、君のフィルムを...これが君の前世の真実だ!」

 「これが...真実...」

 「凄いよね~でも面白いのはここからだよ!」

 「...そうか...そう言う事だったんだ...」

 「いい加減にしなさい」

 「そう焦んないの~まだ終わってないんだから~」


 堕天使は****に近づくと耳元で囁いた。


 「見てて...ここだよ!ここ!こいつが君を殺した...これが君が死んだ理由で、君の前世だ!」

 「え...そんな...そうだったんだ。全て...嘘だったんだ」

 「どうやら、これで映像は終わったみたいだね~これで分かっただろ?全ての元凶が...」


 ****がフィルムを見終わった時止まっているはずの列車が動き出した。


 「あら?動き出したわ?」

 「どうして列車は動きはずがないのにどうして動き出したの?」

 「...?」

 「何か...嫌な予感がします。それに外が暗い...写真家も遅いですし...そう言えば****を見ていませんか?」

 「見てないけど?」

 「もしかして...まさか!!****!」


車掌は急いで車掌室に行きドアを開けた。中ではフィルムが回されENDの文字。こちらを嘲笑う堕天使、青ざめている写真家と顔を下げている****がいた。堕天使が気になるがまずは****が優先だ。****に声をかけ近づこうとしたが突き飛ばされた。


 「え...****どうのですか?」

 「嘘つき...」

 「え?」

 「あなただったんだ...全部!あなたが仕組んだことだったなんて!」

 「何を言ってるんですか?私が...仕組む?何を言って...」

 「私はあの映像を見た。あれは私のフィルムなんでしょ?殺した...あなたが私を殺した...そうなんでしょ...車掌!」


驚いている車掌に追い打ちをかけるようにフィルムは動き出し再生した。フィルムを見ると****を突き落として殺した人物が映っていた。振り返ったその人物は車掌だった。そして列車が止まった。


 『え~次は~きさらぎ~きさらぎ~列車が止まりま~す』


と、アナウンスが鳴り車掌の頭に流れた。


『十章 過去は厄災を写す』(終)NEXT→『??章 ****駅_最後の終着駅』

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