八章 恋は人を狂わせる
4.
乗客の前世について調べるためにロビーに向かった。前世と肝心の乗客を探すことにしたのだが...
「なんじゃこりゃ!なんでロビーがこんなに散らかってるんだ?」
見知らぬ物がロビーに大量に置いてありよく見るとそれは人形だった。
「人形?どうしてここに...」
ロビーに合ったものは全て人形だった。これは乗客の物なのだろうかと考えていた時に奥の方でコソコソと音が聞こえてきた。近づいてみると一つの人形が動いていて思わず叫んだ。
「人、人形が動いてる!」
「凄いでしょう?」
「しゃ、喋った!!」
突然人形がこちらを向いたかと思えば喋り出した。あまりの衝撃に固まり動けずにいると人形が笑い出し後ろから人が出てきた。
「すみません...あなたのリアクションが面白くて少しからかってしまいました」
「もう驚かせないでくださいよ!本当に人形が喋ったのかと思いました」
「それは申し訳ないですね」
「ところでどうしてここに?」
「それが私もよく分からなくて...ロビーに来てみれば大量の人形があったので面白可笑しく動かしてみたくなったのです」
「成程...それでここにいたんですね」
「はい。私は前世というものは分かりませんが出来ることなら協力させてください」
「助かります」
彼は優しい好印象のイメージの男性で、服装は人形師のようだった。そのせいかどこか人形に詳しそうな雰囲気を醸し出していたが****は気づきことが出来なかった。この乗客の異常性に..この乗客は生きた人間を人形にする人形師であることに..
「服装や大量な人形からして私は人形師でしょうか?」
「何とも言えませんがその格好からしてそうなんじゃないかと思います」
人形を眺めていた時にカーナたちもロビーにやってきた。乗客は人形師の可能性があることや人形のことをカーナたちに説明した。カーナたちはよほど人形を気に入ったのか人形をもっと見て見たいと駄々をこねた。人形はもうないと思っていたが乗客の部屋にもあるらしくカーナたちとともに乗客の部屋へ向かった。部屋の中にはロビーと同じように人形がどこもかしこも置かれていた。
「人形なんて凄いわね~これ、見てもいいかしら?」
「いいんですか?ぜひ、どうぞ」
「凄い!これかっこいい」
「キラキラ...」
ネムとグリンは目を輝かせながら人形を見ており、カーナもアンティーク人形を見て感心している。
「凄いわね~こんなに人形があるなんてやっぱりあなたは凄いわね~」
「いえいえ、それほどでもないですよ」
「でも一つ一つの人形が良くできてるし完成度が高い。しかもよく見るとまるで本物みたいだ。なんて言うか...人形が生きているみたいに見える」
「もしかして~本当に生きている人形だったりして~」
「こら、グリン。先ほどからすみません...生きている人形なんて言ってしまって」
「いえいえ..それほどまでに素晴らしい人形ということでしょう!気にしないでください。誉め言葉ですから...ですがこの人形を見てください」
乗客は人形を見せるが人形は身動き一つ立てなかった。
「そんなことないですよ。誉め言葉ですが動かない人形が動くには恐ろしい事ですよ。見てください...ほら、動かないでしょう」
「よく考えれば動いたら怖いもんね~」
「そうね~他にはどんな人形があるのかしら?」
「それはですね!」
「...!」
「ネム?どうしたの」
ネムは乗客が見せた人形を見ていたが何かに気づいたろう。乗客の腕を突然掴んだ。
「ガシ!コクコク...」
「ネム?」
ネムに掴まれた乗客は何事かと思い指を指された所へ振り向いた。そこには血文字でkeepoutと書かれていた。
「あの...これは何ですか?」
「これは血文字かしら?赤く書かれて...」
カーナがその場所に触ろうとした時突然乗客が叫んだ。
「それに触るな!」
「「「「!!!!」」」」
「すみません...急に大きい声を出してしまって...えっとそれに触れないでもらえませんか?」
「ご、ごめんなさい」
「いえ...」
「あそこには一体何があるんだろう」
様子が急変した乗客に動揺したが直ぐに優しい雰囲気に戻った。触るなと言ったあの場所が気になったがその場所は結局調べることが出来なかった。乗客と共に別の場所を探す事になり全員で部屋を出た。ドアが閉まる時にドア越しに血文字【HELP!heisdevil!】が刻まれていたが誰もそれに気づかなかった。それを見た乗客は一瞬笑みがこぼれた。
「他の場所を探してみたほうがいいのかもしれない」
「それがいいですね」
「それなんだけど、ごめんね」
「ごめんなさい。私とグリンは一度仕事に戻るわ。仕込みを終えたらまた手伝うから」
「そうなんですかご苦労様です」
「何かあればネムがいてくれるから三人でお願いね」
「コクコク...」
「それじゃあいったんロビーに戻りますか」
「そうですね。何か変わっているかもしれませんし」
カーナとグリンは仕事に戻り三人はロビーにやってきたが何も変化はなかった。
「探すとしても何を探しますか?」
「ロビーに来てみたけど変化なしか...」
「そのようですね」
「...サッ!コクコク...」
乗客たちは気づかなかったがネムは床に何かのメモが落ちていることに気が付いた。そのメモには血文字で重要なことが書かれていたが一部を見ることが出来なかった。あの人形師に何かあると感じたネムはこっそり観察することにした。
【やつに関わるな!関わればその場で殺される。やつは人を*****人形師だ!】
と、メモに書かれていた。
「...何やら厄介に人が来たものですね。人形師ですか...どうやらこの列車に来る乗客何やら怪しい人など碌な人がいないですね。そうは思いませんか?」
「怪しいもそうだろ。どうするんだ?早くしないともまずいのはお前だぞ?」
「そうですね..でも証拠がないと動けないのが痛い所ですよ」
「まあ仕方ないか~!」
「そのキャラ久しぶりに見ました..マジシャン」
「だろ~!またやってやろうか~?」
「イラっ...帰れ!」
「やだ~帰らない~!」
「イラっ..全く!」
「それに~酷いな~急病人の見舞いに来てあげてるっていうのに~!」
「余計に悪くなるわ!帰れ!だいだい...急病人のベットを占領して寝てるやつに言われたくない!」
「へへへ~いいだろう!」
「イラっ...元気になったら覚えとけよ...」
「そりゃ~恐ろしいね。まあそれはおいといて...ねえ悪魔って知ってる?」
「...そういうのはお前がよく知ってるだろう」
「まあそうなんだけどさ~たまにいるんだよね~。本物のあくまではないけど潜んでいる悪魔がさ~」
「本当悪魔はその人に住む心じゃないか?」
「へー珍しくいい事言うね!」
「イラっ...黙ってろ!」
そう悪魔は案外身近にいるものだ。例えばこんな風に..
「なんであの串刺しにされた女性もそうだけど乗客の死んだ時の再現する遺体が出てこないのが不思議だ。それにあの乗客について何も出てこない。人形師であること以外何も知らない。本当にただの人形師なのかな..」
探しながらずっと気になっていた。ネムと一緒に探しているのに何も無く何も見つからなかった。こんなこと初めてで困りどうしようかと思った時ある一つの物が頭を過る。あそこを調べれば何かが出てくるかもしれないが止められてしまったし、現に彼はここにいる。もしも大事な物なら後で謝り、前世が分かるならいいのではないかと思いトイレに行くふりをして調べることにした。
「何もありませんね...」
「そうですね。あの...トイレに行ってきてもいいですか?」
「どうぞ!私たちは大方調べたのでカーナさんのバーへ向かいます」
「はい、ありがとうございます」
お辞儀をした後何食わぬ顔で部屋を出てから一目散に乗客の部屋まで向かった。
「...まずいな」
何かを感じ取ったマジシャンは暗い顔をした。
「どうしたんだ?」
「ねえ?車掌、この世で人間が堕ちやすいものって何だと思う」
「それはなんだ?欲望とか、金とか、性欲とかの話か?」
「ぷ、あははははは!」
「おい笑うな!俺は何もおかしなこと言ってないぞ!」
「だって...君が性欲って面白いし興奮する...あははははは」
「イラっ...答えは何だよ。合ってるのか?」
「違う違うそれはね~好奇心だよ!だってこういうでしょ?好奇心は人を殺すってさ」
「それってどういう意味だ?」
「知らなくていいよ~車掌はお子ちゃまだから~」
「イラっ...おい!俺のどこがお子ちゃまだ!」
「そこだよ~全く****の前だと大人しいのにね~」
だからね...決してしてはいけないよ。例えどんなに気になったとしても他人にやめろと言われたらそれを振り切って他人の秘密を知ってはいけない。なぜなら待っているのは破滅だけだから...
乗客の部屋にやってきた****は中に入りそれを見て鳥肌が立った。
「よし開けるぞ」
「な、なにこれ...!!」
****が驚いていた時、キィイイイ...と扉がゆっくり開いた。
「え、ドアが開いて..」
恐る恐る後ろを振り向いた。立っていたのは...
カランと音がして扉が開きカーナは顔を上げるとネムがバーに入ってきた。
「あら?ネム一人、珍しいわね」
「!!フルフル..」
ネムは首を振るがバーにいるのはネムだけで乗客はいなかった。ネムに乗客について聞かれたが乗客はバーには来ていない。共にバーに向かったはずが気づけばいなくなってしまったのだ。カーナに訳を話したが首を振られた。
「なるほどね~でもここにいるのはあなただけよ。乗客なんて来てないわ」
「!!」
ネムは事の重大さに気づき急いで車掌室に向かった。
「え、ドアが開いて..」
恐る恐る後ろを振り向いた。立っていたのは...乗客だった。
「ああ~だから見るなって言ったのに...見ちゃったね~その中身...僕が剝製にした人形なんだ。トイレで遅いと思って来てみたらこんなことをしてくれてさ~気づいていなかったでしょう?僕が証拠を全て回収してたってこと」
そういいながら目の前で証拠を次々に落とされる。
「さて~まだ確証はなかったんだけど...証拠を見て分かったよ。僕は人を生きたまま 人形にする人形師だってね!」
と、言った彼は不気味に微笑んだ。
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