七章 異世界の異変

七章_異世界の異変

1.

 「ねえ?なにしてるの?」

 「何もしていない。ただここにいるだけだ。ここで一人..湖に映る景色を見るのが好きなんだ。ただ...それだけだ。君は?」

 「道に迷っちゃって...あなたは?」

 「逃げ出してきたんだ。何もかも嫌になって...そんな時にここへ来るんだ」

 「そうなの?なら私に話して」

 「なんで初対面のお前に話せなくちゃならないんだ?」

 「ならこうしようよ!手を出して?」

 「手を?出したけど何をするんだ」

 「こうするの!」

 「??...なんで手を握ったんだ?」

 「知らないの!?まあ見てて...はい!これで私とあなたはお友達~ね!」

 「友達?なんだそれは?」

 「友達はねすごいんだよ。一緒に遊んだり話したりするのが友達なんだ。だから私とあなたはお友達!だから話してあなたのことを」

 「友達...分かったよ」


 それはたわいもない時間だった。時の流れを忘れて_いつの間にか朝日ではなく空は夕立が昇っていた。


 「まずいな夕日が登りあたりが暗くなる。もうこんなに遅い。近くまで送ってやるからついてこい」

 「送ってくれるの?ありがとう!」

 「なんか調子狂うな...」


戸惑いながら案内すること数分。村の近くに付き再び声を掛けた。


 「着いたぞ。ここまでくれば大丈夫だろう」

 「ありがとう!送ってくれて」

 「別にいい...この先に進めば村に着く。さあ行けよ。もう遅くなるぞ」


少女は頷くと村に向かって走り出した。少女の後姿を見ていると立ち止りこちらに向かって走ってきた。


 「どうした。帰るじゃなかったのか?」

 「思いだしたの。大切なことを聞くのを忘れてた!」

 「大切なこと?」

 「そうなの。」


少女はそう言うとこちらに向き合った。大切な事とは一体なんなのだろうか。少女の意図が分からず少女を見る。大切なことは何かと身構えていたがそれは以外なもので内心拍子抜けた。


 「ねえ?あなたの名前は?」

 「え、名前?」

 「そう。あなたの名前を教えて!」

 「.....」

 「何で黙るの!」

 「いや...名前なんて聞かれると思わなくて...俺の名前は****だ」

 「いい名前ね。私の名前は****だよ。また来るね約束だよ~****」

 「ああ気をつけて帰ろよ」

 

少女は嬉しそうに手を振ると村まで帰っていった。少女の後ろ姿が見えなくなるまで見続けた。


「また会おうなんて約束したの...初めてだ」


約束などしたことがなく不思議な気持ちに包まれながら****は森へ入っていった。



 「...車...車..掌...車掌...車掌!」

 「!!」


誰かに呼ばれている気がする。大声で名前を呼ばれて目が覚めた。


 「車掌...大丈夫?」

 「すみません。どうやらいつのまにか寝ていたようで...寝ていて話を聞いていませんでした」


私がそう言うとあなたは笑った。貴方は心配そうにしていたがいつものように軽く誤魔化した。これは誰にも知られてはいけない記憶。カーナ達乗組員ましてや貴方には絶対に...


 「大丈夫です。ただ少し...昔を思い出していただけですから」

 「そう?ならいいけど」


しかし...なぜ思い出す。もう封印したはずの忌まわしい古い記憶が。あなたを遠目から見ると魂が不安定になりどんどん壊れかけている。もう無理なのかもしれない。今回しかないだろう。壊れていく魂を見ると以前マジシャンに言われた言葉が頭の強く過った。


 「忠告だ!これ以上続けると遅かれ早かれ魂に異常をきたす。早く伝えて辞めるんだ。それに魂は薄っすらとだが記憶は覚えている。お前のことを拒絶してもおかしくないんだ。いい加減覚悟を決めろ」


マジシャンの言葉通りこのままでは...でも私には覚悟がない。今もこうしているうちに恐怖でどうにかなりそうだった。私はその気持ちを隠すように帽子を深く被り平然と歩きだした。


2.

 一方地獄ではある異変が起きていた。マジシャンと閻魔は地獄の処理に追われていた。地獄で発生した侵食と言われる毒素が地獄を蝕んでいたからだ。


 「まずいな...これはもしかしたら...此処も侵食してきている」


マジシャンは糸で侵食を切り落としため息をついた。この侵食と言われる毒素が地獄で発生するケースは珍しい。マジシャンは一度閻魔と連絡を取った。


 「閻魔聞こえるか?俺だ...この侵食普通じゃない。どうする?」

 「とりあえず今は抑えている状況だ。引き続き抑えるべきだろうな...原因は分かるか?」

 「分からない..今は調べているがこれほどの侵食だ。何かが起きそうな気がする。嫌なことが起きなきゃいいが」

 「...侵食が地獄に起こる時..さらなる厄災が降りかかるだろう..か。そうならないと良いが」

 「そうだな。今調べてはいる」

 「そうかなら良い。ワシは戻りこの侵食を止めておく。後はと頼むぞ」

 「ああ。了解した」


直ぐ閻魔によって侵食は抑えられマジシャンは一息ついた。侵食が起きたが言い伝えのように厄災が起こらず車掌たちが無事に前世を解明できれば良いが...


 「ちゃんと仕事をしろ車掌。でないとあの子はこのままだと...地獄に落ちるぞ」


マジシャンはそう呟いた時ある異変に気付いた。閻魔に連絡を取る前に異変が起きた場所へ向かう。そこは大罪を犯し地獄で罪を償うに値しない者が送られる墓場と言われている地獄の牢獄。そこを守る小悪魔たちが倒れていた。


 「おい、しっかりしろ!何があった」

 「やつが...危機に収容していたあいつが脱走しました」

 「それって...まさか!」


マジシャンは収容している牢獄の一つを確認すると拘束している手錠や足枷が破壊されていた。ここに収容していた大罪人は最も危険とされ厳重に収容されていたはずだった。先ほどの侵食による騒ぎに応じて逃げたのだ。マジシャンはすぐさま閻魔に連絡を入れ糸を使って足取りを追うとその行先は幽霊列車だった。


 「まずい。あいつが向かっているのは幽霊列車だ。急いでいかないと大変なことに...最悪殺される。あいつの狙いはおそらく...車掌だ」


マジシャンは地獄から幽霊列車に向かった。


3.

 同時刻_ある人物はは飛び遠くから幽霊列車を見つめていた。片手片足には引きちぎった手錠が付き手首からは少量の血が垂れている。双翼の翼は黒く染まりかつてあったはずの天使のわっかは無残にもない。外から様子を目的の人物を見つけ不敵に笑うと幽霊列車に向っていった。


 「見つけた...****」


車掌は廊下を歩いていたが誰かに呼ばれている気がして立ち止り辺りを見回した。誰もおらず気のせいだと思い車掌はまた歩きだした。数分後激しい風が吹き裏口のドアが開いた。音に気づいたグリンが駆けつけてドアを閉めた。


 「あれ?大きな音がしたような...もしかしてどこか開いてる?」

 「やっぱり開いてる。締めとこう~と!あれ?今なんかいたような...気のせいかな。料理長室にいこう~と」


窓が汚れていて汚れを落としグリンは料理長室へ戻るとその人物は姿を見せた。


 「危なかった...バレるかと思ったけどバレなくてよかった。さあて~ここが幽霊列車の中なんだね...という事はあいつもいるのかな?まああいいや。用があるのは****だから。さて...始めようか」


指を鳴らすと黒い霧が当たりを包みこんでいく。ここまで上手くいくなんて今日は付いている。地獄で発生した浸食のおかげで監獄を脱出できただけでなく幽霊列車に忍び込めるなんて。余韻に浸りながら列車内を歩いていると二人の人間がやってきた。前世を明らかにする乗客ともう一人。もう一人の姿を見て今日は本当に付いていると確信した。


 「****を探そうか。一体どこに...」

 「..ならここを探し..て..誰?」

 「お前は...あの時の...」


****を奪った最も嫌いな人間と再会するなんて思いもせず笑いが抑えられない。


 「僕はなんて...幸運何だろう。二度もお前に会えるなんて」

 「あの...なに..痛!」

 「黙れ!」


驚いた様子でこちらを見る。どうやら僕のことは覚えていないようだ。その事実にこいつに対する怒りが湧きあげてくる。気づけばこいつの首を掴んで首を絞めていた。抵抗して腕に爪が食い込だ。僕はむかついて腕を離す。掴み宙に浮いていたそいつを床に下すとせき込みこちらを睨んでいた。


 「ざまあないな~あの時と同じだな」


そいつの髪を掴んだが意識が飛びかけていてほとんど聞いていなかった。掴んだ髪を下すとそいつは意識を失った。一度踏みつけて嘲笑うと黒い霧が廊下を包み込み乗客は気を失った。霧に当てられたこいつは意識を失いながら震えていた。その様子を見て笑みがこぼれた時だった。突然後ろからドアが開き誰かが駆け寄ってきた。その人物は焦りこいつの名前を呼び僕を見て驚きが隠せなかった。僕は追い打ちをかけるように彼の名前を呼んで微笑んだ。


 「やあ~!こんにちは****。ああそうか!今は車掌なんだっけ~?久しぶりに会いに来たよ...親友」

 



 

 

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