同幕 かごめかごめ 肆
桜木大学付属学校全等舎共通
七不思議が一つ
伍番目
小間取とはかごめかごめの別名の一つであり、かごめかごめの遊び自体は古くから日本に馴染みのある童遊び。唄の歌詞自体は地域により多少変わりがあるが遊び方は変わらない作者不明の遊び。
まず理解してもらうために最初に説明すると
桜木大学というのがそれこそ昭和初期から存在する由緒正しき歴史ある大学で、付属小中高一貫校が出来たのは第二次世界大戦後の民間復興の為が理由。
今でこそお金持ち校となっているが、それは戦後の爪痕によってボロボロになった日本を数ある名家や資産家の子供達に引っ張ってもらいたい。新しい道へ引いて欲しい、と。
未来に希望を抱き勉学を取らせたがり財ある入学者が増えたから、と言われている。
だから、だからこそ昔と今での呼び方が変わっていき校舎と共に昔から存在する七不思議の名前が今の世間一般のソレとは違っている。
昔は小間取と言われていたがかごめかごめという名前が流行ってきてからは人間は其方に腰を下ろしたって訳だな。
────
この学校の七不思議の一つになっているかごめかごめの内容は一般的な遊びのソレと大差ない。大差ないが被害が出ている、だから七不思議になっている。
主な流れはこうだ。
放課後、そうだな、時間は子供が帰ろうと認識し始める時間帯だろうか?その時間でこの学校の何処かでかごめかごめをする、人数と回数は幾らでも構わない。
そしてかごめかごめをやめようとした時、とある事をしたら、その条件をクリアしてしまったら……
気付くと友達の一人がいなくなっているらしい、最初からそこに居なかったように。
靴の足跡すら何もなかった、まるで何者かにその存在についての記憶以外を掬われてしまったように。
そこにはポッカリ、何も無い。
「─────っていう奴」
「へぇ……んで?ソレとどうして今回のこの現場出動と関係が?
言い方はアレですけどこういう在り来りな物はホラーやミステリには定番でこすられ過ぎてネタとしてすら機能しませんよ?」
うん、そうだよね。分かってる、自分でもわかってるからそんな可哀想な奴を見るような目で見てこないで…?シンプルに傷付く。
「ほら知っているでしょう?最近多発している例の……。
幼児連続失踪事件、通称かごめ事件」
「……まぁ、この学校で初等部の子や中等部の子が次々に行方不明になっていったっていうやつだろう?
何でも年齢が上になればなるほどもし行方を晦ました子とつるんでいても行方不明にはならないって言うあの怪事件。
警察がそろそろ根をあげるって噂だよ」
「ところがどっこい!」
「ソイヤッサ!」
「「ハッ!!」」
「…………」
何もそんな目で見なくても、凄い目が冷たいじゃん。
別に桃瑚少女と突然巫山戯たり突然茶番したりするのは今に始まったことではないだろう?私達との仲じゃあないか。
百泣いちゃう!………だからごめんて、うん。
「あの坂上の弁当屋あるじゃないですか、行き付けの」
「あー…あの」
「そう、そこのおばちゃんから聞いたんですけどその事件、とうとう殺人事件が起きたらしいので!
私達がネタ探しついでに軽く調査でもしようかなーと。
それに私はこの事件の中心の学校の生徒だから当事者でもありますからねぇ、何が起こっているのか知る権利はあります」
不謹慎にも顎に手を当てて何故かニマニマと悪戯っ子のように笑う桃瑚少女、それを見て聡司君はそりゃそうだと肩を落とした。
聡司君は基本どんな時も冷静で合理的で、正しい情報を求める真っ直ぐな新聞記者だ。
だからこそなのか、正論に弱い所がある。
ようは正論でなくても正論のような何かに巻いた言葉をゴリ押ししてしまえばそれを承認してしまう、聡司君の美点であり汚点だな。
「………なんで殺人事件だけ証拠が出たんだろうね。今までは痕跡すら残さなかったのに」
先程までニマニマと笑っていた桃瑚少女、突然彼女はその可憐な顔から花を消してはその場にしゃがみ靴跡を指でなぞった。
ふむ、確かにそうなんだよな……突然殺人というその現象を表明する確固たる証拠になる。
犯人がどんな存在であれ、今まで記憶やそこに居た事実以外全てを消すという徹底的な証拠隠滅をしてきた犯人が、こんな行動をとるなんて…。
まるで行動原理が変わってしまったのか、はたまた犯人が変わってしまったのかと思えてくるような変化だ。
「にしたって改めて思うと奇妙だなぁ……今までに出会ってきた事件と同じくらいには奇妙、探りがいがある」
「事件の上をタップダンスする不謹慎やめません?」
「えー?やだなぁ聡司君、私がいつタップダンスなんてしたのさ!私はダンスはからっきしなんだよ」
「比喩表現です」
「分かってるよ」
「拳骨と喉、どちらが良いですか?」
「感情をコントロール出来る人こそ本物の強者だよ聡……ごめんなさい」
「阿呆でしょ、百先生」
「えっ酷い」
やっぱり桃瑚少女、段々私への尊敬の意が消えてってると思うんだ…。凄い冷めた目で見てくる。
にしたって本当に静かだな、これ程大騒ぎというかわーわー賑やかにやり取りしているというのに人っ子一人通りやしない。ここに来てから出会ったのはあの少年…梅影少年位だ。
他の生徒達は授業中、なのだろうけれどやはり拭い切れない違和感が確かにそこにある。
この感覚は初めてじゃない、むしろよくある。
真相がどうであれ怪異あるそこに首と足を突っ込めば一度は必ず味わう事となる現実と視覚と認識と脳内の相違。トリックアートでも見せられてる気分だ、実に不愉快。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます