青の章
第11話 青いワンピース
日曜日の早朝、ズドンドンッ‼
チタンの部屋のドアが鈍く激しく叩かれる。
「チタン‼ 起きろ‼ 起きろ愚鈍なるチタンよ‼」
「………うどん?」
寝ぼけて目を覚ましたチタン。
「愚鈍だ、愚かで鈍いということだ、つまりチタン、オマエのことだ」
「おい…ドアに穴が開いているんだが…」
「うむ、コレで叩いたからだ、ズドンと思い切りな」
クロコがスイッと見せた手にはバールが握られている。
「オマエ、ノックとかマナー知らねぇの?」
「知っている、だが私の手は、このとおり、柔らか素材なのだ、致しかたなしだ」
「仕方なくねぇ…オマエ、壁とか抜けれねぇの? 仮にも悪魔だろ」
「もちろんできる容易なことだ、私を誰だと思っている? チタン、ワタシは次元の壁すら超える存在だぞ、こんな安くて薄い壁など在って無きに等しい」
「じゃあ、ドアに穴を空けんじゃねぇ‼」
「一応、気を使ったつもりだったんだが…その…ほらっ、オマエがシルクのショーツでとか? なっ、そういうタイミングで人は入ってくるもんだしな、できる悪魔だからなワタシは」
「もう魔界へ帰れよ…」
「それはできんな‼」
食い気味でクロコが否定してきた。
「で?」
もうドアの穴などどうでもよくなったチタンがクロコに聞いた。
簡潔に一言で何しに入ってきたのか?ということを。
「ん?」
真顔で聞き返すクロコ。
「ドアの穴以上に何が大変なんだよ?」
「はっ!?……そうだ、シルクが‼すぐ来いチタン」
クロコが隣のシルクの部屋へ走っていく。
「なんなんだよ…朝っぱらから」
文句を言いつつ嬉しそうに姉の部屋のドアを開けるチタン。
「姉ちゃん、入るよ…って…どうしたんだ?」
2mはあろうかという鏡に映るシルクの姿。
「なっ? シルクが変だろ?」
「グフフ…変じゃない…アタシは似合っていると思う」
鏡に話しかけているようなシルク。
「姉ちゃん…ソレ青色だぞ…」
「青…色…」
「オマエかー‼ オマエが姉ちゃんから色を奪ったのかー‼」
チタンがクロコの胸ぐらを掴んでガシガシ揺らす。
「落ち着け、単細胞のチタンよ…ワタシが何のためにシルクを色盲にするのだ?」
「じゃあ、どうして姉ちゃんが青いワンピースなんか着ているんだー‼」
「サマースタイル…グフフッ」
鏡を見つめたままニタニタと笑うシルク。
「だそうだ…シルクの御隣で質素に暮らすチタンよ」
「姉弟だ‼ 部屋が隣でなぜ悪い‼」
「ポテトが辛くてなぜ美味い? グフフッ」
「カラムーチョンの話か? ワタシもアレは好きだぞチタンよ ストック必至のポテトスナックだな」
「カラームーチョンの話じゃねぇんだよ‼ 姉ちゃんが普通の恰好していることが問題なんだよ‼」
「問題なの?」
シルクが首を傾げる。
「問題ないのではないか? ベッドの下に秘密の書物を隠すチタンよ」
「要確認? グフフ」
よく考えれば、何の問題はないことに気づいたチタン。
(じゃあ…なぜ俺は呼ばれたんだ?)
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