■読書案内――賈充

賈充かじゅうと強烈な女性陣の話は『世説新語せせつしんご』で読むことができます。


世説新語せせつしんご』はもともと五世紀に生きた劉義慶りゅうぎけいという南朝のそう劉宋りゅうそう)の王族が、主宰していた文学サークルの仲間内で楽しむために編纂した書物でした。


身内で楽しむためのものだったので、人名は氏名(いみな)ではなく氏+官名表記(たとえれば「岸田文雄」ではなく「岸田総理大臣」)で、人物や状況など元ネタの説明もない、前提知識が大量にあることを求められる難解な書物でした。


ですが後世に膨大な注釈が施されたことで、「身内で楽しむ作品」から「当時の人々にその人物がどう思われていたのかわかる貴重な資料」に昇華されます。


世説新語せせつしんご』の翻訳は多数出版されています。筆者のおすすめをご紹介します。


●森三樹三郎、宇都宮清吉訳『中国古典文学大系第九巻 世説新語・顔氏家訓』(平凡社、一九六九年)


読みやすい日本語で訳された全訳です。はじめて『世説新語せせつしんご』を読む方におすすめの一冊です。


原文(漢文)や書き下し文などは載っていません。


人名索引もありますので、気になる人の話だけ読みたい、という読み方もできます。


●目加田誠訳『新釈漢文大系第七十六・七十七・七十八巻 世説新語 上・中・下』(明治書院、一九七五~七八年)


 こちらも全訳であり、通釈つうしゃく(≒訳文)、原文(漢文)、書き下し文、語釈ごしゃく(語ひとつひとつの解釈)に加え、元ネタを解説する膨大な劉孝標りゅうこうひょうによる注釈も載っています。


世説新語せせつしんご』を精読できる上中下の三巻本です。



賈充かじゅう西晋せいしんの土台をつくった司馬懿しばい司馬懿しばいの長男・司馬師しばし司馬師しばしの弟・司馬昭しばしょうに仕え、西晋せいしんが建国されたあとも司馬昭しばしょうの長男で初代皇帝となった司馬炎しばえんに仕えました。


仕えた期間は四代三〇年におよび、西晋せいしんの歴史に深く関わっています。


●福原啓郎『西晋の武帝司馬炎(中国歴史人物選第三巻)』(白帝社、一九九五)


その西晋せいしんの歴史を、開祖・司馬懿しばいから滅亡までたどるのがこの本です。


賈充かじゅう賈充かじゅうの娘・賈南風かなんぷう賈南風かなんぷうの甥・賈謐かひつの三代記としても楽しめます。


紙の本は絶版ですが、最近電子書籍版が発売されました。丸善が運営するオンライン書店Knowledge Worker(ナレッジワーカー)」から購入することができます(Amazonや楽天などからは買えないのでご注意ください)。

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