喜びと慌ただしい髪

学校の髪



次の日


俺は制服に着替えて朝ごはんを食べる

今日もひまわりは一緒だ


「ひまちゃんもう高校の友達出来たの?」


雪乃がひまわりに聞くと


「うん!もうバッチリだよー!」


自信満々に答える


「えーーいいなー私も早く高校生になりたいなー」


「雪乃は来年だもんね!ふーまと同じ高校にするの?」


「うん、なんか色々決めるのめんどくさいからそこにする」


そんな適当でいいのか??


「じゃあふーママ!いってきまーす!」


「いってらっしゃい!

あれ風馬の声が」


「いってきます!!」


俺は母さんのいつもの言葉に食い気味で答える

てかひまわりがいつも最初に言うから俺も言うタイミングがわかんねーんだよ!

満員電車に押しつぶされ駅に着く


「あれ?」


ひまわりは遠くにいる見覚えのある後ろ姿を見つける


「あれってしずくちゃんじゃない!?」


「お、ほんとだな」


ひまわりは手島に向かって走る


「おっはよー!しずくちゃん!」


「うお!!」


ひまわりのタックル気味のハグに驚く手島


「お、おはよー

元気だねひまちゃんは」


手島はまた驚きを隠せないようだ

2日目にしてこの馴れ馴れしさもすごいしな


「遠くから見るとしずくちゃんちっちゃいね」


見た感じ150センチあるかないかくらいの身長だな


「よく言われるよ」


にしても手島の髪はハリコシがあるな

背中あたりまである髪は1本1本しっかりしてる

そしてこの香りはベルガモットの香りのシャンプーだな

俺は勝手に手島の髪を手ですくい匂いを嗅ぐ


「……!!」


【ガツーーン!!!】


俺は手島にげんこつを食らわせられる


「何してんのあんた!!人の髪を勝手に!!」


い、いてー!!なんか悪いことでもしたか!?


「ふーま?私とか雪乃だったらいいけど

女の子の髪を勝手に触ったりしちゃだめだよ?」


とひまわりに言われる

だ、だめなの??

他の女の子との接し方が分からん!!


「ったく!光井がそんなことするやつとは思わなかった!」


「ご、ごめんて」


「ごめんで済むなら警察はいらないの!!」


め、めっちゃ怒ってる……


「でもね、しずくちゃん、ふーまのご両親が髪の毛扱う仕事してるから

ふーまも髪の毛触るの好きになったみたいだよ」


とひまわりはフォローする


「……ふーん」


手島は納得したようだ


【ムカッ!!!】


「でもそれとこれとは話が別!!

気安く触っていいって誰も言ってない!!」


納得してないようだ


学校に着いて教室に行く


「てか雛ちゃんとは一緒じゃないの?」


ひまわりが手島に聞くと


「あーなんか寝坊だってさ

でもすぐ来るよ?」


と手島は答える

そして5分後


「お、おはよー!」


北谷と湯山が一緒に教室に入ってくる

今回は湯山は何もしてないようだ


「おはよー!」


みんなで挨拶を交わす


「いやー北谷が前に居たから声掛けたんだけど逃げられたから追いかけてってやってたら疲れちゃったよ」


「何してんのよ朝から」


昨日と同様手島と湯山の漫才を見たところで


しずく

「ねえー雛!聞いて!

さっき光井が気安く私の髪の毛触って匂い嗅いできたんだよ!」


風馬

「だ、だからそれはごめんて!

昔からそうしちゃう癖があんだよ!」


しずく

「そんな都合よく女の子の髪を触る癖なんて許さないから!」


風馬

「そ、そんなん言われても困るぞ!」


「えーーいいじゃん、光井、あたしの髪も触ってよ」


風馬

「……え」


触っていいと言われたら触りたくなるだろ……

湯山の髪は肩につかないくらいのボブ

少しセットしているのかくるくるとカールが付いているのも特徴だ


「ほれほれ」


「……」


湯山の髪を俺はすくい

匂いを嗅ぐ

こ、これは!!


「お、おい!湯山のシャンプーなんのシャンプー!?

もしかしてフェアリーのタントっていうシャンプーじゃないだろうな!?」


「え!なんで知ってんの!?」


「クソ有名なシャンプーだよ!!

お前いいの使ってんな!」


「まあねー」


フェアリーというシャンプーはあまり世間には知られていないが

知ってる人は知ってるちょー有名なシャンプーだ

湯山の髪にもこんなに馴染んでパサつかせないのはこのシャンプーのおかげとも言える


「このシャンプーはすげー!」


【くんかくんかくんか!】


【ガツーーン!!!】


「あんたはいつまで触ってんじゃー!!」


手島からまた一撃を食らう

い、いてー!!


「まあまあしずく、減るもんじゃないしいいじゃん

光井、いっそあたしの全身の匂いでも嗅ぐ?」


「それは遠慮しときます」


湯山の変な言葉は置いとこう


しばらくするとチャイムが鳴る

俺は後ろの席の水瀬さんに気づいていたけど少し緊張して結局こいつらと一緒に居てしまった

そして俺は自分の席に着く

ど、どうやって声を掛ければいいんだ……

と、戸惑いながら座る


すると


【トントンっ】


後ろから背中をトントンと軽く叩かれる

まさかと思い振り返ると


「おはよー」


【キューーーーン!!!】


水瀬さんが俺に向かって言ってきた

か、かわいい!!朝からなんてかわいさだ!!

俺は緊張しまくりだったがかろうじて


「お、おはよー」


目も合わせられないくらい緊張した!!

たったこれだけの会話でこんなにも体力を使うとは!!


ひまわり

「…………」チラッ


先生が来ると号令をする


【バン!!!】


奥村先生は教卓を強く叩く


「さて、HRを始めるぞ」


なんであんなに強く叩いたんだ?

相変わらずちょっと変わってる先生だ


「さて、今日のHRは月曜日に授業が始まるに向けての大事なHRだ

明日、明後日は土日だろう。仲良くなった友達と早速楽しむのもいい

しかし、学生は学生だ

この人数でクラスをまとめるのは私だけの力じゃ無理だ

だから、今日はこのクラスからクラス委員を決めようと思う」


うわ、マジでそういうのめんどくさいのあんだな

俺は一瞬嫌な顔をする


【バシュ!!】


「………!?」


俺の机に果物ナイフが刺さる


「お前の言いたいことはわかるぞ光井

だが、貴様が思うほどクラス委員というのは大事な役割だ

クラスの中心、つまり、リーダーシップがどれだけ取れるかが大事になってくるんだ

めんどくさいであやふやにしていたら将来リーダーシップを、そしてそのリーダーを決める責任をもあやふやにする人間になってしまうことを肝に銘じとけ」


「は……はい」


なんかいい事言ってるような言ってないような……

しかもなんで俺の思ってることがわかったんだ!?


「じゃあまず立候補してくれる人を優先して決めていく

男女1名ずつだ

クラス委員をやってくれる人は居るか?」


こういうのって絶対最初は手を上げないんだから先生も諦めたらいいのにな


「お、戸塚、本当にいいのか?」


「へ??」


俺は先生の送る視線の方を見てみる

高く手を挙げているのはひまわりだった

えーー!!!何してんだあいつー!!


「本当にやってくれるのか?」


「うん!やってみたいなー」


し、正気かあいつは!!


「ひゅ〜さすがひまわり〜

クラスの輪を繋げる向日葵みたいな存在だねー」


と、湯山がガヤを入れる


「では、男子、やってくれる人はいるか?」


「はい!!俺が!」


「いや!俺がやる!!」


「俺だってやりたい!!」


「戸塚は俺のもんだ!!」


な、なんか男たちが一斉に手を上げだしたけど

なんか違う言葉が聞こえてきた気がする!


「貴様らは却下だ」


「え!?」


一斉に手を上げた男たちは何故か悲しそうな顔をする


「貴様らがクラス委員という大事な役割を任せる器ではないと言っているんだ」


ついにキッパリと言ったな!!

それを聞いた男子は泣いているようにも見えた


「仕方ない、こうなったらくじで決めよう」


と先生はみんなに背中を見せるように後ろを向く


「せ、先生?くじ引きなんてそんな時間はないです!

一人一人紙に名前を書いて箱に入れてなんてやってたらHRの時間も終わってしまいますよ!?」


と入学式の時に机に果物ナイフを刺された友田が抵抗するように先生に訴える

こいつもクラス委員に立候補してたやつの1人だ


「安心しろ、その必要は無い」


先生は後ろを向いたまま


【シュンッ!!!】


【クルクルクルクルクル!!!】


先生はまた果物ナイフを投げるとそれが教室中を飛び回り


【フワンッ!フワンッ!フワンッ!】


ナイフが高く舞い上がり


【シュパーーン!!!!】


「ひ、ひぃー!!!!」


北谷の机に突き刺さる


「………北谷に決まりだ」


ななな、なんちゅう決め方だあー!!!

北谷は気絶しているのか泡を吹いている


「よろしく頼むぞ」


「……はい」


気絶しながらも北谷は返事をする

あいつすげえよ

気絶してるのに返事してんだもんな

その後はクラス委員だけではなく色んな委員も決めていた

俺と手島は何も委員にならなかったが


「じゃあ次、図書委員」


「じゃあ、あたしなろうかなー」


と湯山が手を上げていた


「わかったよろしく頼むぞ」


「はーい」


あいつああ見えて読書好きなのか?

そういや水瀬も何も委員になってないな

そうか…なってないのか


HRが終わる


「じゃあ月曜日から授業が始まるから

みんな、教科書やノートを忘れずに持っていくこと

以上。じゃあクラス委員、号令を」


「きりーつ!」


ひまわりが号令を掛ける


「気をつけー!礼!」


【さようなら!】


「それでは貴様らさようなら」


さて、帰るか

水瀬は……カバンを持って帰ろうとしている


「み、水瀬!」


俺は思わず水瀬を呼び止める


「………?」


無言で振り返る水瀬

そうだ、こういう時に声を掛けないといけないんだ


「ま、また月曜日な」


「……うん」


水瀬は少し微笑む

あぁ心が浄化されていく


「光井君、これあげる」


水瀬が渡してきたのは


「なんだこれ?」


花だった

白い花?なんだろこれ?


「白いダリアの花言葉は感謝っていうの

私からの気持ち」


感謝……こんなの本当に貰っていいのか?

俺はドキドキしながらも受け取る


「あ、ありがと!」


「うん、じゃあまた月曜日」


「うん」


「ーーーーぁぁあーー!!!」


「ぶわっ!!」


【ドーン!!】

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