第5話 ゴッド降臨!
スクリーンに白黒で映し出された写真。微妙な鼻の上げ下げの写真が拡大される。
・・・な、な、な、な、なんと!お誕生日ジョッキーの馬が1着!
そして2着には、これまた、な、な、な、な、なんと!4番人気の馬が!
どよめく場内。
「おい、おい、これスゴい配当つくで!」
「どえらい万馬券やで!」
あちらこちらから聞こえる声。震える手で持っている馬券を見た。表示されている着順の馬連を確かに500円買っていた。
“レース結果をお知らせ致します”
なんの感情も感じとれない無機質なアナウンスの後、配当金が表示された。
“馬連6万数千円”
「おおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
一際どよめく場内。
正確な配当金は思い出せないけれど、なんせとんでもない万馬券だった。
その瞬間。
「よっしゃーーー!パッション!!」
「きたでーー!パッション!!」
私、バイト君たちは口々に店の名前を絶叫していた。周りの人たちは「パッション?そんな馬居ったか?」と訝しげな顔をしていた。
なんという事でしょう・・先程までの死んだような表情の地獄からのgo to heaven・・
大改造ビフォーアフターみたいなナレーションで言いたくなるくらいの変わりよう。
「さすが!エレジーさん!」
「俺たち信じてました!」
こんなドラマチックな勝利、盛ってるんちゃうん?
いえいえ、この思い出は昨日の事のように鮮明に思い出せます。嘘偽りなし、正真正銘本当の話です。
にしても我ながら神がかっていたなぉと思う。正にゴッドギャンブラー・・ちと言い過ぎか。(笑)
早速、換金へ。
震える手で差し出した紙切れが、な、な、なんと!30数万円になって返ってきた。
あの2000円が・・たまにこんな事があるからギャンブルはやめられないのだろう。
ま、今は子供の学費が必要なのでしてませんけど。
「よっしゃ!また今日もパッション行くかっ!」
「行くぞーー!」
「やったーーー!」
バイト君たちも大喜び!
そりゃそうだ。
さっきまで使える金がない状態からの~30数万円なんだから。
そして、私には是非とも恩返しをしたい方がいた。同じ寮で生活していた先輩のMさん。
私はこの方のお陰で今の嫁さんと出会えた。たっかい高級クラブホステスだった嫁さん。その全部の飲み代をMさんには出してもらっていた。ま、嫁とMさんお気に入りのホステスさんが友達だったから、バーターとして行った私だけが付き合うという不義理満開開花宣言だったけれども。(笑)
私の信条・・・“刻石流水”
受けた恩は石に刻むように絶対に忘れるな。かけた情けは水に流せ。
早速、Mさんに連絡。
「Mさん!競馬でアホみたいに勝ちました!今からキャバクラ行くんすけど、今までMさんに奢ってもらってばっかりだったので、今日は僕の奢りで飲みに行かないっすかっ!」
元来、Mさんも遊びが好きな方。
「エレジー、エエんか?ホンマ大丈夫なんか?」
「モチロンですよ!今までMさんにはお世話になりっぱなしでしたから、せめてもの恩返しです!」
さぁ~今晩は楽しむぞ~!
昔から宵越しの金は持たない主義。この時点で有り金全て使い切るつもりだった。
私には娘がいるけれど、こんな男とは結婚して欲しくない。(笑)
皆で楽しい夜にするため、私にはあるアイデアが思い浮かんだ。
それは・・・
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