経緯

今回試験的にセリフを排除し、語りのみでお届けします。



私たち最初期組が転生したのは今いる城よりもっともっと東の方で、転生者…まぁいわゆる不死たちの扱いはひどいものだったわ。


死なないのをいいことに危険地帯に突っ込まされたり、あるいは慰み者にされたり…あの頃は人権なんてものはなかったわね。


そんな生活が十数年ほど続いて、とある噂を耳にしたの。


いわく、『代替わりした西方のフラビア王は、私たち不死も平等に扱ってくれる』って感じで、まぁ胡散臭いことこの上なかったけれど、私たちはそれに飛びついた。


不死の乱…って言っても伝わらないか。まぁ今日転生してきたばっかりだもんね。でも、東の王国に数百人ほどいた不死たちが一斉に武器を手にして蜂起したものだから、当時は結構話題になったわ。


当然追手はきたのだけれど、まぁ全員叩き切られるか殴り潰されるか死に体で逃げ帰っていったわね。復讐心からみんなの意気も半端な物じゃなかったし、こっち側は殺されても殺されても絶対に数は減らないしで。


んで、追手を叩きのめした後はもう数ヶ月ひたすら旅の日々。この頃が一番転生してきた人たちが多かったわね。


旅路の間は何もなかったのかって?ええ。結構安全だったわよ。数百人の武装した不死の集団に襲い掛かる勇気は山賊には無かったみたいだし、あちこちの村や町では工事やらなんやらの手伝いなんかもしてたから、歓迎されることの方が多かったわ。


で、あちこち寄り道をして日銭を稼ぎながら、フラビア王国にたどり着いたの。



まず私たちが頼ったのはフラビア軍。不死たちの集団の噂は西の果てまでも響いていたようで、傭兵として協力する代わりに最低限の生活は保障してもらえることになったわ。


それから数年間、たくさんの戦場を生き死にしながら渡り歩いたところで、何の因果か私たちのリーダー…あ、団長のことね?とにかく、あのオッサンが爵位とこの城を貰って、国王陛下直属の騎士団を設立したのよ。これが、あの人が団長って呼ばれている理由ね。



でも、フラビア王国は滅ぼされた。七年前に。


えーと…あったあった。これが七年前で、これが今の地図。南のヴァンデッタ王国がフラビアを攻め滅ぼしちゃったのよ。


当然、フラビアに恩義のある私たちは怒ったし、フラビアと仲の良かった西のラテティア王国や、北のフリューテッド共和国も挙兵寸前。


でも、私たちは…兵を挙げられなかった。





______________________________________



大陸中西部の丘陵地帯を流れる大河、その分岐点の真ん中にある島の上に建てられた巨大な城。第四十代フラビア王によって作り上げられ、以来三代にわたって改修に次ぐ改修を重ねたのち、『不死卿』トウヤ率いる騎士団に彼の領地として下賜された。フラビア王国が滅びた後もこの城は断固として降伏せず、フラビア王国最後の砦として、ラテティア、フリューテッドの二か国の援助のもと、ヴァンデッタ王国との最前線に立ち続けている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る