大剣
その時は、案外すぐにやって来た。
「団長!来てくれたんですね!」
「おうともよ!戦況はどうだ?」
兵団の前衛たちが、三番隊の騎士たちと協力して攻め込んでくる敵兵たちを捌いている間に、三番隊の隊長と、我らが指揮官殿が簡単な報告を交わす。
「正直かなりしんどいですね。三番塔はほぼ制圧されちまいました。ですが、運の良いことに突っ込んできたのは軽装の雑兵たちでさぁ。狭っ苦しい塔ならともかく、城壁上なら勝機はありますぜ」
報告を聞いた指揮官は、陣形の大幅な変更を僕らに命令し、僕たちクロスボウ隊も前衛部隊に加わる事になった。
「槍騎士隊、防御陣形!それ以外は盾を構えて槍ぶすまの間に入って敵を待て!」
ボルトを外したクロスボウを背中に回し、盾を構えて剣を抜く。槍衾の間に入って緊張しながら攻撃命令を待っているところに、後ろから声が掛かった。
「おいそこの若いの、新入りか?」
「え、僕ですか?」
「ああ、そうだ。周りを見てみろ。若いのなんてお前しかおらん。とにかく、そんな短い剣じゃその盾は活かせんぞ?」
言われてみればその通り。今僕が命を預けている盾は胸の少し下までをカバーできる巨大な物。本来は槍兵が持つもので、片手剣の兵が持つようなものじゃない。
「確かにそれはそうなんですけど、これのほかに使えるような武器がなくて…」
衛兵詰め所(仮)には片手剣以外にも何本か武器があるにはあったが、モーニングスターや巨大釘バット、はたまた誰が使えるんだと言いたくなるような巨大な石鎚に特大剣など、やたらバイオレンスな武器が多く、結局まともな武器が片手剣だけだったという事情がある。
「ったく、しょうがないな。ほれ、これを使え」
「わ、わっ…うわぁ…」
ひょいと放り投げられたのは小ぶりな大剣。サーベルやレイピアというには刃が太く、かといって大剣とひとくくりにするには刀身が短い。
軽く振ってみると見た目のわりにそこまで重くはない。刃先の方に傾いた鍔と、蒼い宝石がはめ込まれた柄が目を引く一振りだった。
「いいんですか?僕がこんなもの使って…」
「構わんよ。どうせこんなもん武器庫に腐るほど眠ってるしな。それによく見てみろ、刃がこぼれてないだろ?俺の本分は槍兵だからな。あまり使う機会もなかったんだ」
せっかくだし、存分に使ってくれという彼の好意を受け、僕は片手剣をしまい、新しい剣を盾の右側から出すように構えた。
「来るぞ!構えろ!」
その時は突然にやってきた
「ウオォォォォォォォォ!!」
「ヴァンデッタ王国に栄光あれェェェ!!」
「突撃ィィィィィ!!!」
雄たけびと共に上ってきた敵兵が、真っ直ぐこっちに突っ込んでくる。剣を握る左手に力が籠るのを感じた。
「慌てず応戦しろ!槍兵は陣形を崩すな!ほかの連中は適宜応戦!刺し漏らしを狩れ!」
数メートルほど前方にある槍の穂先に固いものがぶつかる音がした。それと同時にこっちに突っ込んでくる敵兵が…ってえぇ!?
「すまん、逃した!若いの、自分で何とかしてくれ!」
そして、とにかくなんとかせねばと無我夢中で前に突き出した剣が、
「ごは…っ」
「…あ、あぁ」
空を切ることなく、真っ直ぐ敵兵の喉を貫いた。
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主人公
名前:???
年齢:16歳
職業:学生
レベル:そんなもんはない
装備:
- フラビア騎士の大盾
- フラビア騎士の胴鎧、脚鎧、手甲
- フラビア兵の兜
- セミアイアン・クロスボウ
- クレイモア NEW!
ラテティア王国の発明となる、幅広短めの大剣。普通の大剣よりやや軽い重量と、それに見合わない威力、すなわち打撃力と貫通力を併せ持つ。突きと薙ぎ払い両方に対応しており、ラテティア独自の鍛冶技術により鍛え上げられた刀身は、鋼鉄の鎧に対しても一定の打撃力を持っている。しかし、これほどまでの性能を持ちながら、この剣を見かける機会は驚くほど少ない。中でも、蒼色の宝玉がはめ込まれたものは、王家お抱えの鍛冶師による特注であり、王国近衛兵団以外の手に渡ることは万に一つもないだろう。
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