クロスボウ

城壁上の戦いは、言ってしまえば双方遠距離からのつつき合い程度のものだった。


バリスタ(攻城戦に使われる巨大な設置型ボウガン)の弦が空を切る音がそこかしこから聞こえ、カタパルトが唸りを上げて石の球を天高く打ち上げる、典型的な防衛戦だ。


「第一城壁、打ち方やめぇい!第二城壁、アルバレスト隊用意…放てぇ!」


指揮官らしき壮年の男の怒号とともに、僕が突っ立っている城壁の騎士たちは兵器から離れ、代わりに頭越しにぶっとい矢がビュウビュウ飛び始めた。


つられて上を見上げると、だんだんとこの城の構造が分かって来た


「あ、この城は山城なんだ」


ところどころに顔を見せる山肌や、段々になっている城壁から察すると、この城は小高い丘のような山をベースに作られているんだろう。そりゃ敵さんも落とせないわけだ。


「しかも崖下には川まで…いや結構デカいな川!?水堀かよ!?しかもしれっと帆船まで止まってるし!」


そして、この城は山であると同時に島でもあった。幅百メートルほどの大河が周りを取り囲んでいて、川岸は断崖絶壁。崖は十数メートルほどのため登れなくは無いが、落下してくる石やら火炎壺やらに晒されることを考えると、まず登って来やしないだろう。


更に背後三方向を小高い山に囲まれ、唯一開けた正面の平原に通じる道は、川沿いの崖と城門をつなぐ一本の石橋のみ。補給路は河川があるので、いくら橋を落とそうが防衛部隊には一切の支障がなし。いやぁ…


「難攻不落にも程があるでしょ。もう無敵だよこの城…」


つくづく防衛側に転がり込んでよかったと思った瞬間だった。




さて、その間も防衛戦は順調に進み、特段大量に死人が出ることもなく終わる…かに見えのだけれど


「三番塔が崩れたぞ!敵兵がなだれ込んできた!!」

「「「なんだって!?」」」


橋につながる城門、その左側を固める三番塔に、運悪く敵の石弾が直撃してしまい、城壁付近の防衛体制が崩壊してしまった。


「落ち着け野郎ども!四番塔隊はそのまま持ち場を固めろ!遊撃兵団、俺と来い!」


そして、運悪く指揮官らしき男の近くにいた僕は、遊撃兵団とやらと勘違いされ、三番塔の救援のため一路最激戦区へ走らされることになった。


「クロスボウ兵、ボルト装填!俺たち前衛のことは気にしないで良いぞ、ガンガン打て!」


不幸中の幸いか、クロスボウを担いでいた僕は援護役に回され、三番塔隊…ややこしいな、三番隊でいいか。ともかく、彼らが逃げる時間を稼ぐ役割を言い渡された。


隣の女性兵士の手つきを見よう見まねでなんとかボルトをつがえて準備は万端。くるなら来いとばかりに切り結びながら登ってくる味方の背中を見ていた。


この時僕はまだ知らなかった。


この手で人を手にかける、その行為の意味と恐ろしさを。




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主人公

名前:???

年齢:16歳

職業:学生

レベル:そんなもんはない

装備:

- フラビア騎士の大盾

- フラビア騎士の胴鎧、脚鎧、手甲

- フラビア兵の兜

- セミアイアン・クロスボウ NEW!

フラビア王国と隣接する、ラテティア王国の発明となる、木材をベースに要所要所の部品を金属で固めた使いやすくかつ堅牢なクロスボウ。技術力の限界まで細く作られたストックとボディは、これを作り上げた技師たちの技術を感じさせる。錆止めと潤滑油のこまめな塗布を怠らなければ、ラテティア独自の加工による金属パーツは驚くほどの間、その輝きを失わない。先端には踏み金具の代わりに槍の穂先が、ストックの後ろには邪魔にならないように石突が付いており、折り畳み式の弓を畳めば槍に早変わりする。

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