最終話 鎮魂
レイラとニコラが死んでから数日がたった。ヴィネアの陽射しは依然として強く、真夏の様相を
「なんだか、終わってみるとあっけないね」
セーレはニコラが持っていた
「セーレ、それは玩具ではないのよ」
「わかってる。アリアも同じことを言っていたからね」
セーレがアリアの名前を出すとアリオは歩みを止める。セーレはアリオへ振り返りながら続けた。
「アリアは『
セーレは
「アリアも複雑な気持ちだと思うよ。アリオは本当にそれでいいの?」
セーレの口調はどこか寂しげで、魔銃ブルトガングをアリオへ渡した張本人とは思えない。アリオはセーレの質問に答えず、再び歩き始めた。
「無くさないように気をつけて。先を急ぎましょう」
アリオは右手に黒い日傘を持ち、左手には赤い薔薇の花束を持っている。赤い薔薇は13本であり、かつてネイトやニコラが買った高級花屋のラベルが貼ってあった。
「畏まりました。アリオお嬢さま」
セーレは礼儀正しい少年執事に戻っていた。
そこはレイラと一緒に遊んだ場所だった。アリオは静寂が支配する砂浜を見渡した。降りそそぐ陽射しに輝く海と黄色い砂。風景は以前とまったく同じで、振り返るとレイラが立っているように思えた。
「心からの敬意と友情をこめて。レイラ・モーガンに鎮魂を……」
アリオは薄い唇を動かすと花束を海へ投げ入れる。赤い薔薇の花束は波間に揺れながら遠くなり、やがて見えなくなるとアリオは振り向いて歩き始める。
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