余話
翌日の朝食は…
鯛料理を作り終えた翌日───。
陽平は台所で朝食の支度をしていた。窓からは柔らかな日差しが台所に差しこんでいる。そこに和樹がスウェット姿で起きてきた。
「陽平さん、おはよー」
「はい、おはよ」
呑気に欠伸をし、寝癖だらけのぼさぼさ頭をかきながら和樹は鼻をひくつかせる。
「いい匂いするけど、今日は何?」
「今日は昨日の残り。鯛の雑炊。後は昨日残った昆布〆」
「うわぁー、朝から豪勢だねぇー」
「昨日残しておいた鯛茶の鯛を漬け汁ごと出し汁の鍋に入れたの。ほら、すぐできるから着替えてきな」
「はぁーい」
和樹が着替えに寝室に戻っていく。陽平は冷米を鍋の汁の中に入れ、ひと煮立ちさせてから溶き卵を上からゆっくりと回しかけていく。最後におろし生姜を少量加え、味見をしていると、和樹がまた台所にやってきた。
「着替えてきたよー」
「おぉ、今日は紺にしたのね」
紺のスーツに身を包んだ和樹は、先程のだらしない体たらくから別人のように変貌している。
「後ろ、まだ寝癖残ってるよ」
「えっ、どこどこー?」
和樹は慌てて洗面所に駆けこんでいく。朝から騒々しいヤツだな、と思いつつも、陽平は微笑しながら昆布〆をサッと炙っている。
「この匂いなにー?」
すぐ脇の洗面所から和樹の声が飛んでくる。
「昆布〆に醤油つけて、ほんの少し炙ってるの」
「美味そー」
「終わった?」
「上手くできないー。陽平さんやってー」
「しょうがないなぁー」
陽平が手を止め、洗面所に行く。ブラシを片手に、慣れた手つきで和樹の髪を直していく。自分より背が低い陽平のために、少し前かがみになってじっとしている和樹の姿もどこかいじらしい。
髪を整え終わって、二人は台所に戻ってきた。陽平が和樹に味見皿とスプーンを手渡す。それを和樹が受け取り、雑炊の味見をする。
「どう?」
「美味い!」
「じゃ、時間ないからさっさとご飯にしよっか」
「はーい」
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