其の陸 鯛の料理帖
最後に、本作に登場した鯛料理の作り方を。
【十一膳目 鯛の昆布〆】
・鯛(刺身用)
・昆布
◎塩
①鯛の柵を刺身にし、昆布は固く絞った布巾で表面を拭いておく。
②昆布の上に塩を振り、その上に鯛を重ならないように並べて塩を振り、上からまた昆布をかぶせる。
③乾燥しないように冷蔵庫にて一時間~四時間程置く。
※補足※
鯛は柵になった状態で売られているもの、刺身になった状態のものでも可能。置く時間はお好みで。
【十二膳目 鯛皮の湯引きポン酢】
・鯛の皮
◎塩
◎酒
◎ポン酢
①鯛の皮に塩と酒を振り、それを熱湯に入れ三十秒程で引き上げる。
②氷水にて充分に冷やし、ぬめりや残った鱗などを洗い流してから食べよい大きさの細切りにする。ポン酢をかけて供する。
※補足※
必ず一度完全に冷まさないと皮がボロボロになるので注意。お好みで葱など薬味を加えても美味。
【十三膳目 鯛の松皮造り】
・鯛の柵(皮つきのもの)
◎塩
①皮目にのみ塩を振り、その面を表にしてまな板の上におく。
②鯛の上にキッチンペーパーをかけ、流しなどに斜めに立てかける。
③キッチンペーパーの上からやかんで熱湯を回しかけ、鯛の身が少し反り返ったらすぐに氷水に取る。(ここまでの一連の作業を「霜降り」という)
④充分の冷ましたら氷水からあげ、皮の真ん中に切りこみを作って刺身にしていく。(詳細は本編を参照)
⚠️注意⚠️
鯛に必要以上に火が通らないように注意する。キッチンペーパーの代わりにガーゼやサラシがあれはそちらを使った方が上手くできる。
【十四膳目 鯛のあら煮】
・鯛の頭
・牛蒡
・生姜
◎酒
◎砂糖
◎味醂
◎醤油
①鯛の頭を霜降りにする。ザルに入れた鯛の頭に湯を回しかけ、表面が白くなったら流水で血合いや鱗を丁寧に洗い流していく。牛蒡は皮をむき、食べよい大きさに切りそろえておく。生姜も皮をむいて千切りにしておく。
②鍋に酒と水を入れ、①の頭と牛蒡を入れて冷たい状態から火にかけていく。
③生姜の千切りを半量加え、浮いてきたアクは丁寧にすくい取る。砂糖と味醂を加え、そのままアルミホイルで落しブタをして十分程煮ていく。
④醤油を加えて更に煮詰めていき、最後に少量の味醂で照りを出す。なるべく身を崩さぬように、鍋自体をゆすって煮汁を絡めると綺麗に仕上げる。最後に残しておいた半量の生姜を天盛りする。
※補足※
あらだけでパックになって売っていることも多いので、そちらを使うと便利。霜降りさえしっかりしていれば、味つけは好みで自由に。ただし、味醂は魚の身を固くする作用があるので注意。
【十五膳目 鯛の幽庵焼き風】
・鯛の切り身(可能なら皮つきのもの)
・レモン
◎塩
◎酒
◎醤油
◎味醂
①切り身の両面に塩をあてて二十分程置き、水で洗ってキッチンペーパーで水気を拭き取っておく。
②酒、味醂、醤油を合わせ、レモンの輪切りを入れた漬け汁(幽庵地)に①の切り身を三十分程漬ける。
③漬けた②の切り身をグリルで焼いていく。焦げないように注意しながら、身の表面を乾かすような感覚で。表面が乾いたら地を塗り重ね、これを両面とも何回か繰り返しながら焼き上げる。
※補足※
レモンは市販のレモン汁でも代用可。
【十六膳目 鯛の天ぷら】
・鯛の切り身
・小麦粉
・卵
◎マヨネーズ
①ボールに冷水を入れ、小麦粉と卵を合わせて天ぷらの衣を作っておく。最後に少量マヨネーズを加えて混ぜ合わせる。
②鯛の切り身に小麦粉で打ち粉をし、①の衣をまとわせて油で揚げる。
【十七膳目 肝と真子の含め煮】
・鯛の真子
・肝(肝臓、胃、腸など)
◎出し汁
◎塩
◎酒
◎醤油
◎味醂
①真子は串などで表面にある血管を掃除しておく。腸と胃は中を掃除して切り分けておく。肝臓も適当な大きさに切り分ける。
②真子は筋に沿って縦に開き、適当な大きさに切り分けて表面の皮を裏側にひっくり返しておく。①の腸と胃は熱湯でサッと湯がいて臭みを抜いておく。
③真子をボールに張ったぬるま湯に入れ、途中湯を変えながら表面が少し白くなるまで火を通す。
④鍋に出し汁、酒、醤油、味醂、砂糖を加えて混ぜ合わせ、その中に下ごしらえした真子や肝類を全て入れる。
⑤鍋が冷たい状態から火にかけて炊いていき、十分程度で手早く仕上げる。
※補足※
とにかく手間がかかるので、臭み抜きだけしっかりして後はお好みで調理されても。
【十八膳目 鯛の潮汁】
・鯛の切り身
・三つ葉
・柚子皮
◎出し汁
◎酒
◎醤油
◎塩
◎味醂
①三つ葉はざく切りにしておく。出し汁を鍋に取り、切り身を入れて汁が冷たい状態から火にかける。
②酒を①に加え、沸騰してきたら丁寧にアクをすくい取る。醤油、塩、味醂で味を整え、仕上げに三つ葉と柚子皮を加える。
※補足※
作中では鯛の骨の出しを使ったが、昆布やカツオなどの粉末状のだしの素などを用いても可。柚子皮はフリーズドライのものを使用。あれば生の柚子皮でも。
【十九膳目 鯛の蓬蒸し】
・鯛の切り身(皮つきのもの)
・蓬
◎塩
◎酒
◎出し汁
◎砂糖
◎醤油
◎味醂
①鯛の切り身に塩をして置き、水で洗って臭みを取っておく。蓬は水で洗っておく。
②フライパンに①の鯛を並べ、その間に蓬を敷き詰める。上から塩と酒を振り、フタをして蒸していく。
③小鍋に出し汁をいれ、酒、塩、砂糖、味醂、醤油を順々に加えて煮立たせ、少し甘めの汁に仕立てる。
④蒸し上がった鯛の身に③の汁を回しかける。
※補足※
この場合蓬は香りづけに用い、食用にはしない。作中では鯛茶漬けの用の汁を使ったが、これもまたお好み次第で市販品等にて代用可。
【二十膳目 鯛茶漬け】
・鯛の刺身
・大葉
・おろし山葵
・白飯
◎醤油
◎酒
◎味醂
◎砂糖
◎すり胡麻
①漬けダレを仕込んでおく。醤油に酒、味醂、砂糖を加えてひと煮立ちさせ、すり胡麻をたっぷりと混ぜたものを充分冷ましておく。大葉は細かく刻んでおく。
②鯛の刺身を①のタレに漬け、十分から十五分程置く。だし茶漬け用に、出し汁を鍋に入れ、酒、塩、味醂、醤油で飲みやすい濃さに味を整えておく。
③温かい白飯をどんぶりに盛り、その上にタレに漬けた鯛を放射状に盛りつけていく。最後に刻んだ大葉、おろし山葵を中心に盛り、温め直した出し汁を添えて供する。
※補足※
添える薬味はお好みに合わせて他のものでも。こちらも出し汁はもちろん市販品等で代用可。パック売りの刺身等を使えば案外簡単に作れる品。
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