第24話 これがいつも通り
さ、学校行かなくちゃね。トイレに行って顔も洗って、リビングに行く。お母さんは案の定起きてきてなくて寝室のドアをノックする。おはよ、そうやって声を掛けると言葉だか呻きだか分かんない音が聞こえてきた。死んでないみたいだしそれならいい。
朝ごはんなんて呼べるものじゃないけど六枚切りの食パンを一枚取り出して食べる。トーストするでもないしお皿に置いたりするわけでもない。ただイスに座って食パンをそのまま口に入れるだけ。あごを動かして歯で食パンを噛む。それだけ。味とかどうでもいいのだけれど強いて言うならパンの味がする。
そういえば亜海におはようってライン送ってないや。っていうかスマホ充電しっぱなしじゃない? ちょっと大きい一口くらいの残りを口に運びながら自室に向かって歩く。小学校低学年のころは、歩きながら食べるんじゃないよとか言われてたけど、今やそんなことは言われない。別に私がお行儀よくなったわけじゃないけど。昔みたいに小言を言ってほしくてわざとこんな行儀の悪いことしてんのかなって考えだしちゃったけど、違う。自分しか席についていないテーブルにごちそうさまでしたと言って自室に戻る。あ、水筒入れとけばよかったか。でも廊下の半分くらいまで来たし引き返すのももったいない気がする。
ガチャ
生活ノートと照らし合わせながら教科書やらノーとやらをバッグに詰める。別に学校が嫌とかいうわけではないけど、この時間がわっくわくっていうわけでもない。ただ必要なものを持っていくだけ。ただ授業を受けて先生の話を聞くだけ。他のみんなもそんなものなんだろうか。分かんないや。今日だれかに訊いてみようか。学校好き? って。
いけないいけない。準備の終わったバッグをぼうっと見つめてしまっていた。やっぱり寝不足で疲れてるのかな。今から自転車漕がないといけないってのに。もう出ようか。別に早く行くぶんには何の問題もない。のそっとクローゼットの方に向かってパジャマを脱いで制服に着替える。スカートちょっと緩くなったかなとか思ったりするけど、こんなことを言う相手はいない。ま、気を取り直してがんばろ。最後にもう一度ノックする。返事は無いけど寝息がかすかに聞こえるからこれでオッケー。
ドアを開けると、こんな感じで微妙に沈んだ気持ちに合わない青空。でもちらほらある雲が底抜けの快晴を妨げていて安心感を与えてくれる。あ。自転車の鍵をガチャガチャしていると思い出した。お弁当もだけど飲み物ないや。水筒入れ忘れちゃった。でも戻るのも嫌だし。あそこの自販機で買えばいっか。どうせ自販機で買うなら値段がちょっと高くても欲しいものがあったら買おう。自転車を出すのもめんどくさいし学校とは逆方向だから私はそこまで走り出した。
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