(4)小野寺舞
第22話 早朝にまたね
もう四時になっちゃったね。じゃあね。
私の声だけが聞こえた。そう思ったけど切る間際になって「うん、またね」と相手の声が聞こえた。
亜海は中学に進むときに神奈川に行っちゃった。新幹線を使っても何時間とかかる距離は今までの歩いて数分の距離とは全然違った。もちろん距離が違うのは当たり前でその違いはとてつもないものなんだけど、いわゆる心の距離が変わっていきそうになるのを私は感じた。だから――だからって言うのもなんなんだけど―—四月に入って私も中学に少しは馴染めて落ち着き始めたころに電話した。ライン電話。
私が通ってるのは自転車で一時間くらいの中学校。別に私立とかに行ってるわけじゃなくて、この辺は田舎だから統廃合が進んでるってこと。もともと小学校も人数が少なかったし、そういうのもあって家の近い亜海とは仲がよかった。他の子たちは小学校の向こう側に住んでいたから。だから亜海が神奈川に行っちゃったのはもしかしたらこんな田舎の中学には行きたくない――っていうかこんな田舎にいたくないってことだったのかもしれない。でも、それは親の考えかもしれないし、それだとしたら尚のこと話題にしづらい。
さ、どうしよっかな。今が四時過ぎ。家を出るのは七時でいいから数時間寝ようと思えば寝れるのか。うーん。でも寝なかったら絶対きついよね。でも今寝たら亜海と通話した気分が搔き消されちゃう。もっと余韻に浸ってたいみたいな。ためしに「寝る?」ってライン送ってみようか。それで「起きとく」とかが返ってきたら私も寝ないでなんかしよう。それ以外だったら寝よう。おそらく亜海も寝てるんだろうから。
寝る?
よし、送った。とりあえず学校の準備でもしようかな。それでその後にライン確認しよ。宿題は数学のワークと漢字スキルだったけ。うん、その二つだ。生活ノートにもそう書いてある。それで時間割は数国体英社学か。学活って何やるんだっけ。もう自己紹介は終わったし、あ、委員会決めの残りだっけ。たしか女子は保健委員と体育委員が決まってなかったんだっけ。たしか、そうだったはず。ていうか、お弁当必要じゃなかったっけ、たしか。小学校が創立記念日とかで休みでそれで給食センターもおやすみみたいな。そう思って生活ノートを見たら「おべんとう」って欄外に走り書きがあった。思い出してよかったけどどうしよう。
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